アメリカ合衆国は、国連設立時の原加盟国(51カ国)です。
国連が1945年6月26日にサンフランシスコで作成した国連憲章の第9章第55条C項には、人種、性、言語または宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守することが定められてます。
さらに、第56条には、すべての加盟国は、第55条に掲げる目的を達成するために、この機構と協力して、共同及び個別の行動をとることを誓約することとなっています。
そして、アメリカ合衆国は1992年6月2日、世界人権宣言を敷衍化し法律化した国際人権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)・市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約))のうち、自由権規約を批准しています。
トランプ大統領による一連の人種差別発言は、国連憲章違反であるとともに、自由権規約第20条第2項に明確に違反しています。
日本の外務省国内広報課が20年前1998年12月に作成したパンフレット 「世界人権宣言と国際人権規約ー世界人権宣言50周年に当たってー」の11ページ
(3) 戦争宣伝の禁止及び国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道の禁止
第二十条は、「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する」「差別、敵意又は暴力の煽勤となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」と規定しています。
「戦争宣伝の禁止」について、わが国にはこれを実施するための国内法はありません。
そもそも表現の自由がこの規定により不当に害されてはならないことは当然であり、実際に立法するかどうかは表現の自由を考慮した各締約国の裁量に委ねられているとも考えられます。
ひるがえって、わが国は憲法第九条で戦争を放棄しており、「戦争宣伝」という抽象的なものを法律で罰する必要はありません。
「国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道の禁止」については、わが国では刑法を始め教育、労働その他各般の分野で差別、敵意、暴力の排除に資する立法措置がとられています。
今後こうした現行法制でも規制し得ない行為により具体的な弊害が生じた場合には、表現の自由を確保するという要請をも十分に考慮して立法措置が検討されることとなりましょう。