《「君が代」不起立解雇撤回裁判》
 ◆ 怒 上告棄却を許さない!
(元)高槻市立小学校教員 山田肇

 本年2月5日、最高第三小法廷は、菅平和、野村尚、山田肇3人の「君が代」不起立を唯一の理由とした再任用合格取消の撤回を求める上告を「棄却する」という一片の通知を三行半のごとく送りつけてきました。
 「絶望の裁判所」「暗黒の最高裁」に、腸(はらわた)が煮えくりかえっています。怒!怒!怒!

 ◆ 「君が代」の踏み絵を踏まない者はクビ!を、最高裁は是認した
 私たちは裁判で、『今後、卒業式や入学式等における国歌斉唱時の起立斉唱の職務命令を含む上司の職務命令には従います』という府教委の「意向確認書」に署名捺印した者だけを、つまり「君が代」の踏み絵を踏んだ者だけを再任用する府教委のやり口は、憲法19条「思想・良心の自由」に反すると主張してきました。


 しかし、昨年3月28日、大阪高裁・稲葉判決は、府教委の言う「意向確認書」、つまり「君が代」の踏み絵には「必要性、合理性がある」として、「君が代」の踏み絵を踏まない者は「問題」であり、それに「重きを置いて勤務実績を判断」して再任用の採否を決めることは当然だとしました。
 そして、最高裁は、「君が代」の踏み絵は「思想調査にあたり、憲法19条『思想・良心の自由』に反する」という私たちの「上告理由書」等の主張を取り上げず、また、昨年度の再任用選考から、大阪府教委は意向確認の文言を「職務命令に従います」と変更している実態をも省みず、1回の弁論も開かず、「上告棄却」という形で、「君が代」の踏み絵を是認しました。
 「君が代」の踏み絵を踏まない者を再任用しない=クビにすることは、「個人の歴史観ないし世界観」に対する直接の侵害であり、「思想及び良心の核心の表出」(宮川光治裁判官の「意見」)に対する直接的制約ではないか!
 江戸時代のキリシタン弾圧で使われた踏み絵と同じ「君が代」の踏み絵を、最高裁が是認するとは何たることだ!
 もはや、この国には「思想・良心の自由」は存在しないと最高裁が宣言したということです。

 ◆ 「君が代」不起立者だけを「異なる基準」で再任用を決めていい、と最高裁は是認した

 また、私たちはこの裁判で、飲酒運転で「停職3ヵ月」の者も体罰事例で「停職6ヵ月」の者も再任用されているのに、「君が代」不起立者は「戒告」でも「君が代」の踏み絵を踏まないと再任用されないのは、平等原則、公平原則に反し、憲法14条「法の下の平等」に反すると主張してきました。

 しかし、大阪高裁・稲葉判決は、「君が代」不起立は飲酒運転や体罰事例とは「過去の非違行為に対する評価」が違う。「君が代」の踏み絵を踏まない者は「自らの主義主張を優先」し、法令や職務命令「遵守」が「期待できず」、「違反行為のおそれが高い」から「学校の規律や秩序の保持の観点から問題がある」。「君が代」不起立者だけを「異なる基準」で、つまり、「君が代」の踏み絵で再任用を決めても平等原則違反ではないとしました。
 何と恐るべき判決か!天皇をたたえる「君が代」は歌えないとする私たちを、まるで国家に反逆する「非国民」のごとく敵視して「異なる基準」で再任用を決めて“良し”とするとは!
 しかし、最高裁もまた、この不公平・不平等に目をつむり、憲法14条「法の下の平等」も存在しないと宣言したということです。

 ◆ 「処分」が取り消されても、「君が代」の踏み絵を踏まないとクビ!を、最高裁は是認した

 私の「戒告処分」は、2014年3月24日、人事委員会の裁決で「高槻市教委の違法な内申により」取り消されています。そして、岡田正則(早稲田大学)先生の高裁での「鑑定意見書」は、私の戒告処分は存在しないがゆえに、再任用合格取消は「重要な事実の基礎を欠く」「平等原則違反」「適正比例の原則に違反」しているから「裁量権の逸脱・濫用であって、違法である」としました。

 しかし、大阪高裁・稲葉判決は、処分が取り消されても、職務命令違反は消えない!「実体上」の処分は存在しないが、「君が代」の「踏み絵」を踏まないから、再任用取消=クビは当然としました。
 そして、最高裁も「上告棄却」という形で、処分が取り消されても「君が代」の踏み絵を踏まないとクビだという、この理不尽を是認しました。

 ◆ 教師の「良心」を亡ぼして、教育がたちゆくか

 「君が代」の職務命令は、日本の侵略戦争を進めた天皇をたたえろ、とする命令です。この命令に従うことは「教え子を戦場に送る」道をくり返すことにつながり、また、子どもたちに何が正しいか、自分で考えて行動するようにと言ってきた教師としての「良心」に反します。
 昨年、問題となった日大アメフト部の内田監督の「悪質タックル」の命令と同じく「良心」を踏みにじる命令です。

 だから、私は2012年3月の卒業式で、職務命令を出されても「君が代」は歌えませんと静かに座りました。
 しかし、大阪高裁・稲葉重子裁判長は、ことの是非、善悪は判断するな、思考を停止して、教師は命令に従うアイヒマンたれと、「判決」で表明したということになります。
 そして、最高裁もまた、「上告棄却」という形で、教師は命令に従うアイヒマンの道を行けと宣言したということになります。

 しかし、命令で教育は成り立ちません!教師の「良心」を亡ぼして、教育は立ちゆきません。
 ともに「正義が直ちに通じる国」(韓国・文在寅大統領のことば)をめざして闘いましよう。

『「日の丸・君が代」強制反対、不起立処分を撤回させる大阪ネットワークニュース』(2019年4月21日)