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サンゴは、漁場をダメにしている磯焼けの象徴だ。サンゴが生えてしまったらもうそこの漁場は終わったも同然。招かれざるお客さんですよね。
日本の沿岸がサンゴに?
場所によっては、海藻が無くなった後、サンゴの分布の拡大すらも変化の速さに追いつけず、海藻もサンゴもなく生態系が崩壊する海域が拡大するおそれがある。
場所によっては、海藻が無くなった後、サンゴの分布の拡大すらも変化の速さに追いつけず、海藻もサンゴもなく生態系が崩壊する海域が拡大するおそれがある。
逃げ場のない生き物たち
顕在化する日本の生態系の異変。これは決して、海だけに限った話ではない。北海道の大雪山系では、主に山の中腹より下に生えていた「チシマザサ」と呼ばれるササが、近年、標高の高い場所まで分布域を広げている。
ことし10月、国立環境研究所の小熊宏之さんに連れられて雪化粧が始まった現地を訪れてみると、確かに、一面ササだらけだった。
2000メートル級の山々が連なり、「エゾノハクサンイチゲ」や「チシマノキンバイソウ」といった希少な高山植物の生息地として知られる大雪山系。
ところがいま、深刻な影響が懸念されている。
北海道大学の工藤岳准教授によると、この30年で、大雪山系の標高の高い場所の平均気温はおよそ1度上昇。雪解けが12日あまり早まって湿地の乾燥が進み、高山植物が育ちにくくなる。ここにササが進出する。さらに、ササの葉が光を遮ってしまうことで、高山植物の生育を脅かす悪循環に陥る。
国立環境研究所の小熊さんがシミュレーションした結果、最悪の場合、今から80年後には高山植物の生育に適した場所はすべて消えてしまう可能性があるという。
国立環境研究所の小熊さんがシミュレーションした結果、最悪の場合、今から80年後には高山植物の生育に適した場所はすべて消えてしまう可能性があるという。
高山に生息する動植物は、それ以上高い場所がないため温暖化による変化が生じても逃げ場がない。何をどう守るのか、綿密な観測と予測を行って検討を急ぐ必要がある。
想像以上の速さで進む生態系の変化に、人間社会はついて行けるのか。国立環境研究所は、ある取り組みを始めている。農業や漁業、観光業など、生態系の急変に直面するさまざまな立場の人たちに話を聞き、今後の対応策の参考にしようというのだ。
海藻からサンゴへの置き換わりが進みつつある愛媛県の宇和海沿岸での調査に同行したが、現場から聞かれたのは変化を受け止めきれず、戸惑う声だった。
「生態系の変化への対応」と口で言うのは簡単でも、現実には決して容易ではない。しかも、生態系の変化の影響は農作物の生育不良や感染症の拡大など多岐にわたる。
「緩和」から「適応」へ
国立環境研究所の山野博哉さんは、社会全体で気候変動対策についての考え方を変える必要性が高まっていると指摘する。
漁業の場合、漁獲する魚の種類を変えたり、サンゴが増えると観光面はおそらくプラスもあると思うので、観光業にシフトしたりすることも考えられる。温室効果ガスの排出を減らすなど温暖化の『緩和』はもちろん大事だが、『緩和』だけではいま起こっている変化に対応できない。変化に対して人間が『適応』していかないといけない。
「地球規模の環境の変化が目の前の景色や生活を変えるのは、何世代も後か、SF映画の世界の話」私もかつて、そう考えていた1人だ。
しかしさまざまな現場を歩くと、もはや後戻り出来ない変化が私の想像をはるかに超えるスピードで進んでいた。
「緩和」から「適応」へと発想の転換が迫られる段階まで至ってしまった気候変動。この先に何が起きるのか。人間社会は、生態系の変化に適応出来るのか。それは、社会のあらゆることが今までどおりにいかなくなるという自然からの警告なのかも知れない。