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“アスベストで肺がん” 昨年度の労災認定など1000人余
2018年12月19日 15時01分NHK
職場で吸い込んだアスベストで肺がんなどになったとして、昨年度に労災と認定されたり、遺族が補償を受けたりした人は、1000人余りに上りました。
厚生労働省によりますと、職場で吸い込んだアスベストが原因で肺がんや中皮腫などになったとして、昨年度新たに労災と認定されたり遺族が補償を受けたりした人は1054人となりました。
業種別では、アスベストが含まれる断熱材などを扱っていた影響で、建設業が最も多く554人、アスベストの製造工場を含む製造業が405人などとなっています。
健康被害が広く知られるようになった平成17年度以降、毎年1000人前後が労災と認定されていて、昨年度までで合わせて1万6700人を超えました。
アスベストによる健康被害は、30年から40年もの潜伏期間を経て現れるため、厚生労働省では労災認定された人が働いていた全国の事業所、延べ1万3000か所余りの名前や住所をホームページで公表して、不安のある人は医療機関や労働基準監督署に相談するよう呼びかけています。
アスベストの健康被害さまざまな業種に
アスベストによる健康被害で労災認定を受けた人は、建設業や製造業に限らず、さまざまな業種に広がっています。
おととし、がんの一種の胸膜中皮腫で死亡した元劇団員の加藤大善さん(当時70)もその1人で、ことし労災と認定されました。
加藤さんは昭和49年からおよそ6年間、東京の劇団に所属し、公演先の学校の体育館などで照明や舞台の設置作業にあたっていました。このとき、天井に吹きつけられたアスベストを吸い込んだとみられています。
劇団を辞めてからは、長年、別の仕事をして生活していましたが、平成26年に胸膜中皮腫を発症しました。労働基準監督署は遺族の請求を認め、40年以上前の劇団員だったときの作業が原因だと認定しました。
妻のみはるさん(68)は「劇団の仕事が関係しているとは当初は考えてもいなかったし、こんなことで命が奪われるのは悔しい。アスベストの問題は誰にでも起きることだと多くの人に知ってほしい」と話していました。
労災の申請に協力した元所属先の劇団は「当時は私たちもアスベストがどういうものか分からなかった。今も学校などでアスベストは使われているので、新たな被害が出ないように国は対策を図るとともに、埋もれている被害者を掘り起こして救済してほしい」とコメントしています。
被害者を支援している団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」では、「まさか自分がという人が中皮腫を発症している。長い潜伏期間を経てから発症するため、当時の記憶もあいまいになりがちだが、ささいなことでも相談してほしい」と呼びかけています。
団体では、20日と21日にアスベストの健康被害に関する全国一斉の電話相談を行うことにしています。
午前10時から午後7時までで、電話番号は0120-117-554です。