静岡 伊東市の前市長を収賄容疑で捜査 
土地の買い取りめぐり
2018年6月14日 5時04分

静岡県伊東市の前の市長が、地元の建設会社が所有するホテルの跡地を市で買い取る約束をした見返りに建設会社の役員から現金1000万円を受け取った疑いがあるとして、警視庁が収賄の疑いで本格的に捜査を進めていることが捜査関係者への取材でわかりました。

捜査関係者によりますと、収賄の疑いが持たれているのは、静岡県伊東市の佃弘巳前市長(71)で、市長在任中の平成27年、地元の建設会社が所有する市内にあるおよそ4000平方メートルのホテルの跡地を市で買い取る約束をした見返りに建設会社の役員から現金1000万円を受け取った疑いが持たれています。

ホテルの跡地は、平成26年に地元の建設会社がおよそ4800万円で購入し、翌平成27年、市に2億円余りで売却されています。

市の議事録などによりますと、この契約は前市長みずからが指示して進めたもので、市は生涯学習施設を建設するために土地を購入したと説明していましたが、土地は現在もさら地のままになっています。

警視庁は、前市長が土地を市で購入する見返りに建設会社の役員から現金を受け取った疑いがあるとして、本格的に捜査を進めています。



<前伊東市長>1000万円収賄疑い 
  ホテル跡地買い取りで

6/14(木) 5:00配信 毎日新聞

伊東市が市内の建設会社から買い取った問題の土地。現在は図書館などの臨時駐車場として使われている=伊東市桜木町2で2018年2月、五十嵐朋子撮影

 静岡県伊東市が2015年に買い上げたホテル跡地を巡り、売り主の建設会社から現金約1000万円を受け取った疑いが強まったとして、警視庁捜査2課が収賄容疑で佃弘巳・前市長(71)の逮捕状を請求する方針を固めたことが13日、捜査関係者への取材で明らかになった。

【伊東市の土地売却を巡る贈収賄疑惑の構図】

 問題になっているのは、同市桜木町の「伊東マンダリン岡本ホテル」の跡地(約4000平方メートル)。伊東市は佃前市長が現職だった15年7月、市内の建設会社から2億500万円で買い取った。議会には「生涯学習施設を建設する」と説明していたが、計画は進んでおらず、現在は市の臨時駐車場として利用されている。

 捜査関係者によると、佃前市長は同年8月ごろ、建設会社の役員の男性(47)から、知人を通じて、現金約1000万円を受け取った疑いが持たれている。捜査2課は市が土地を買い上げた見返りとみており、佃前市長から3回にわたって収賄容疑で任意の事情聴取を進めていた。役員の男性についても、贈賄容疑で調べている。

 佃前市長は市議を3期、静岡県議を3期務めて05年の市長選で初当選。3期にわたり在任した。昨年6月には、後継の小野達也市長の相談に応じて助言や提言をする「市特別顧問」に就任。今年3月に任期が満了した。

 佃前市長は13日、毎日新聞などの取材に対し「10年くらい前、知人に2000万円ほどを貸した。3年前に1000万円を返してもらっただけ」と疑惑を否定した。【五十嵐朋子、佐久間一輝、梁川淑広】

 ◇巨額詐欺事件の舞台

 ホテルの跡地は「いわく付きの土地」として知られていた。

 伊東市中心部に位置するこの土地には、老舗旅館が建っていた。しかしバブル崩壊後、宿泊客が減少。何度か所有者を代えた後、2009年には東京の不動産会社所有となり、建物は「伊東マンダリン岡本ホテル」という名称で営業を始めた。

 この会社の実質的なオーナーらが、後に「岡本ホテル事件」として知られる巨額詐欺事件を起こす。オーナーは元暴力団組員で「会員になれば系列ホテルに無料で泊まれる」とうたって200億円以上を集め、11年に警視庁に逮捕された。伊東マンダリンは「詐欺の道具」にされた格好で、事件後に閉館した。

 「暴力団が絡んでいる」とうわさの立った土地は地元では敬遠されていたという。しかし14年10月に強制競売に出されると、市内の建設会社が落札。更地とされた後の翌15年7月には、伊東市が買い上げた。地元市議は「落札額は5000万円ほどだと聞いた。解体費用を差し引いても、建設会社は数千万円の利益を得たのではないか」と話している。