最高裁判所 第二小法廷 裁判官様
原審では、本件処分の根拠法令として「府国旗国歌条例」及び「府職員基本条例」を挙げているが、その違憲性審査は十分尽くされていないばかりか、この2つの府条例の自由権規約適合性については全く検討されていない。
わが国が批准している自由権規約には自動執行力があり、憲法と同等の裁判規範性がある。そして批准した条約の遵守義務は、国、地方を問わず、すべての公的機関及び公務員に課せられている。
私たちは、東京都の公立学校における国旗国歌起立斉唱の強制が、自由権規約違反の人権侵害に当たる、と規約委員会に申し立てたNGOグループである。
先頃、自由権規約委員会は、第7回日本政府報告審査に向けた"List of Issues(課題のリスト)"を採択・発表した(2017年11月24日付)。その30項目の中に、「国旗国歌起立斉唱強制問題」に関わる2つの質問があり(パラグラフ23,26※別添資料.1参照)、東京都教育委員会が発した「10・23通達」の自由権規約適合性が課題として取り上げられた。
この課題に、日本政府は1年以内に回答しなければならない。
「10・23通達」(2003年)とは、本件「府教育長通達」(2012年)と同じく、卒入学式における国旗国歌起立斉唱行為を、教職員に対し制裁を背景に強制するものである。このような強制が、思想・良心・宗教の自由の侵害に当たらないか、自由権規約18条3項(※別添資料.2)に照らして判断することを日本政府は求められることになった。
大阪府の場合は、東京都のような行政の通達ではなく、「条例」という議会の立法により起立斉唱行為を強制しているのであるから、規約違反性はより高度であると言わなければならない。
また、これまでの最高裁判例が、減給・停職以上の機械的累積加重処分は裁量権の逸脱濫用としているところ、「免職」を盛り込んだ府条例の人権制約該当性の程度がより強度であることは明らかである。
敬意の表明の要素を含む行為命令への不服従に対して「免職」という苛酷な制裁まで明文化して予定するこの「条例」が、自由権規約18条3項の人権制約を許容する「限定的な条件」に該当するとは到底考えられない。
大阪府は、締約国の一行政機関として、府民に対して国際人権諸条約が規定する人権を保障する責務を負っている。
最高裁判所はわが国の司法の最高機関として、将来この判決の国際人権適合性が問われることは必定であるところ、個人の基本的自由の保障には国際基準に照らした厳格な審査を行うという締約国の国際社会の一員として当然の責務を、いまこの判決において果たされんことを要請する。
【別添資料.1】
「自由権規約第7回日本定期報告に対する事前優先課題リスト」(2017年11月11日)から
List of Issues Prior to submission of the seventh periodic report of Japan (11 December 2017)
思想、良心および宗教的信念の自由、および表現の自由(規約第2、18、19、および25条)
パラ23 前回の総括所見(パラ22)に関連して、「公共の福祉」というあいまいで無制限な概念を明確化し、自由権規約18条および19条それぞれの第3項が許容する限定的な制約を超えて、思想、良心、および宗教の自由、または表現の自由への権利を制約することがない事を確保するために講じられた対策について、ご報告願いたい。
パラ26 2003年に東京都教育委員会によって発出された10.23通達を教員や生徒に対して実施するためにとられた措置の自由権規約との適合性に関して、儀式において生徒を起立させるために物理的な力が用いられており、また教員に対しては経済的制裁が加えられているという申し立てを含めて、ご説明願いたい。
(東京・教育の自由裁判をすすめる会、国際人権プロジェクトチームによる仮訳。下線は引用者。)
【別添資料.2】
自由権規約第18条 (思想・良心・宗教の自由)
1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。
2 何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
4 この規約の締結国は、父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
(下線はいずれも引用者。)
◎ 国際人権標準に則った判決を求める要請
~本件の争点である大阪府の2つの条例は、
国際自由権規約適合性についても審査されなければならない
~本件の争点である大阪府の2つの条例は、
国際自由権規約適合性についても審査されなければならない
2018年1月31日
東京・教育の自由裁判をすすめる会 国際人権プロジェクトチーム
〒102-0071 千代田区富士見1-7-8 第五日東ビル501号室
東京・教育の自由裁判をすすめる会 国際人権プロジェクトチーム
〒102-0071 千代田区富士見1-7-8 第五日東ビル501号室
原審では、本件処分の根拠法令として「府国旗国歌条例」及び「府職員基本条例」を挙げているが、その違憲性審査は十分尽くされていないばかりか、この2つの府条例の自由権規約適合性については全く検討されていない。
わが国が批准している自由権規約には自動執行力があり、憲法と同等の裁判規範性がある。そして批准した条約の遵守義務は、国、地方を問わず、すべての公的機関及び公務員に課せられている。
私たちは、東京都の公立学校における国旗国歌起立斉唱の強制が、自由権規約違反の人権侵害に当たる、と規約委員会に申し立てたNGOグループである。
先頃、自由権規約委員会は、第7回日本政府報告審査に向けた"List of Issues(課題のリスト)"を採択・発表した(2017年11月24日付)。その30項目の中に、「国旗国歌起立斉唱強制問題」に関わる2つの質問があり(パラグラフ23,26※別添資料.1参照)、東京都教育委員会が発した「10・23通達」の自由権規約適合性が課題として取り上げられた。
この課題に、日本政府は1年以内に回答しなければならない。
「10・23通達」(2003年)とは、本件「府教育長通達」(2012年)と同じく、卒入学式における国旗国歌起立斉唱行為を、教職員に対し制裁を背景に強制するものである。このような強制が、思想・良心・宗教の自由の侵害に当たらないか、自由権規約18条3項(※別添資料.2)に照らして判断することを日本政府は求められることになった。
大阪府の場合は、東京都のような行政の通達ではなく、「条例」という議会の立法により起立斉唱行為を強制しているのであるから、規約違反性はより高度であると言わなければならない。
また、これまでの最高裁判例が、減給・停職以上の機械的累積加重処分は裁量権の逸脱濫用としているところ、「免職」を盛り込んだ府条例の人権制約該当性の程度がより強度であることは明らかである。
敬意の表明の要素を含む行為命令への不服従に対して「免職」という苛酷な制裁まで明文化して予定するこの「条例」が、自由権規約18条3項の人権制約を許容する「限定的な条件」に該当するとは到底考えられない。
大阪府は、締約国の一行政機関として、府民に対して国際人権諸条約が規定する人権を保障する責務を負っている。
最高裁判所はわが国の司法の最高機関として、将来この判決の国際人権適合性が問われることは必定であるところ、個人の基本的自由の保障には国際基準に照らした厳格な審査を行うという締約国の国際社会の一員として当然の責務を、いまこの判決において果たされんことを要請する。
【別添資料.1】
「自由権規約第7回日本定期報告に対する事前優先課題リスト」(2017年11月11日)から
List of Issues Prior to submission of the seventh periodic report of Japan (11 December 2017)
思想、良心および宗教的信念の自由、および表現の自由(規約第2、18、19、および25条)
パラ23 前回の総括所見(パラ22)に関連して、「公共の福祉」というあいまいで無制限な概念を明確化し、自由権規約18条および19条それぞれの第3項が許容する限定的な制約を超えて、思想、良心、および宗教の自由、または表現の自由への権利を制約することがない事を確保するために講じられた対策について、ご報告願いたい。
パラ26 2003年に東京都教育委員会によって発出された10.23通達を教員や生徒に対して実施するためにとられた措置の自由権規約との適合性に関して、儀式において生徒を起立させるために物理的な力が用いられており、また教員に対しては経済的制裁が加えられているという申し立てを含めて、ご説明願いたい。
(東京・教育の自由裁判をすすめる会、国際人権プロジェクトチームによる仮訳。下線は引用者。)
【別添資料.2】
自由権規約第18条 (思想・良心・宗教の自由)
1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。
2 何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
4 この規約の締結国は、父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
(下線はいずれも引用者。)
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