制御失い揺れながら急降下

ドライブレコーダー捉える

 雲間に現れた機体は突然バランスを崩し、大きく揺れながら急降下した--。佐賀県神埼市の住宅街の上空で5日、陸上自衛隊のヘリコプターが制御を失い墜落する様子を、自動車学校の車のドライブレコーダーが捉えていた。
 ドライブレコーダーは、佐賀城北自動車学校(佐賀市)の送迎車のフロントガラスに搭載。現場の南約1キロの路上で、生徒を乗せるために待機中、墜落の様子を写していた。
 目撃した男性運転手(62)は取材に「ヘリの部品が落ちるのも見え、大変なことが起きたと思った」と振り返った。(共同)



2/6(火)報道によると、
 小野寺五典防衛相は6日の衆院予算委員会で、
自衛隊ヘリ墜落での不明者とみられる1人を発見したことを明らかにした。
身元の確認を急いでいるという。


<陸自ヘリ墜落>11歳女児、父親「無事でよかった」泣く娘に声掛け抱きしめ 
  避難間一髪
2/6(火) 9:40配信 西日本新聞

 大きな爆発音とともに、ヘリコプターが真っ逆さまに住宅へと突っ込み炎上した。佐賀県神埼市の住宅街に5日、陸上自衛隊のAH64Dヘリが墜落した。当時、直撃した住宅には11歳の女児がいたが、避難して間一髪で助かった。残骸が飛び散った周囲には小学校や認定こども園があり、一歩間違えば大惨事になった恐れも。「自分のところに落ちてくると思った」。事故を目撃した住民たちは恐怖で声を震わせた。

 自衛隊ヘリコプターが墜落した神埼市千代田町の住宅は、会社員川口貴士さん(35)の一家4人が暮らしていた。

 川口さんの話によると、事故当時、自宅には千代田中部小5年の長女、來愛(くれあ)さん(11)がいた。來愛さんが学校から帰宅後、1階リビングで宿題をしようとしていたところ、突然、大きな音がした。來愛さんはすぐに自宅外に飛び出した。ヘリは、リビングとは反対側の2階屋根に衝突する形で墜落した。

 勤務先から急いで自宅に戻った川口さん。現場で対面した來愛さんは泣いており、ショックですぐに言葉が出ない状態だった。「無事でよかったね」。川口さんがそう声を掛けて抱きしめると、來愛さんは少しほっとした表情をみせたという。ヘリの破片が背中に当たったのか、來愛さんは腰痛を訴え、近くの病院で治療を受けた。

 長男(13)は当時、中学校にいて、煙を見て慌てて帰宅したという。川口さんは勤務先から帰宅した妻(36)、長男、隣に住む両親と一緒に近くの知人宅に避難。黒煙が上がる自宅を映すテレビのニュース画面を食い入るように見詰めた。

 自宅上空を自衛隊ヘリが行き交うのは日常の光景だった。「まさかうちに落ちるなんて夢にも思っていなかった。とにかく家族が無事でよかった」。取材に対し、そう気持ちを落ち着かせるように話した。

■オスプレイ配備影響か

 佐賀県神埼市の住宅街に自衛隊ヘリコプターが墜落した事故は、防衛省が進める佐賀空港への陸自オスプレイ配備計画の行方にも影響を与えそうだ。

 山口祥義知事は5日、県庁で記者団の取材に対し、「現場が住宅地で、近くには小学校や認定こども園がある。極めて憂慮すべき状況だ」と述べた。配備計画への影響については「そこにまだ考えが至らない」と答えるにとどめた。

 山口知事は昨年7月、計画受け入れに前向きな姿勢を示した後、米軍オスプレイの相次ぐ事故を受けて「安全の問題は重要。それがはっきりするまで進むとは考えられない」とし、判断を先送りしている。

 計画では空港西側に2019年度以降、陸自オスプレイ17機や墜落した機体が所属する陸自目達原(めたばる)駐屯地のヘリ50機を配備する。

 「佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会」の古賀初次会長は「ついに佐賀でも墜落事故が起きた。反対運動を強める」。計画推進を求める佐賀県議会の自民党県議は「計画への影響は避けられない」と話した。




陸自ヘリ墜落
翼部品、整備不良か 機長の遺体発見

毎日新聞2018年2月6日 20時09分(最終更新 2月6日 21時47分)

佐賀県神埼(かんざき)市の民家に陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが墜落した事故で、同機がメインローター(主回転翼)の接合部を初めて交換した後の点検飛行で墜落したことが防衛省関係者への取材で明らかになった。周辺では約550メートルにわたり部品が散乱していたほか、落下時に主回転翼が外れていたという目撃情報もあり、整備不良が事故原因だった可能性がある。陸自の事故調査委員会は6日、佐賀県警と現場検証を行い、機体からフライトレコーダー(飛行記録装置)を回収。今後、解析を進める。

<陸自ヘリ>制御失い揺れながら急降下(動画付き) 
【写真】墜落現場付近に残る陸自ヘリのものと見られる部品
 陸自と県警は6日、現場で新たに1人の遺体を発見し、機長の斉藤謙一2等陸佐(43)と確認した。県警によると、5日に死亡が確認された。副操縦士の高山啓希1等陸曹(26)の死因は外傷性ショックだった。

 防衛省関係者によると、墜落したヘリは1月18日~2月4日、部隊で50時間の飛行ごとに実施される定期点検を受けた。この際、主回転翼の4枚の翼と回転軸をつなぐ「メインローターヘッド」を交換した。この部品は1750時間の飛行を目安に交換することが陸自の整備規定で定められている。2006年3月に配備された同機の飛行時間は1733時間で、今回が初めての交換だったという。

 ヘリは5日、まず陸自目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)で回転翼を回す試験をしたが異常は確認されず、午後4時36分に点検試験のため駐屯地を離陸した。周辺を旋回しながら上昇した後の同38分に南西の佐賀市上空に向かうと管制官に伝え、ヘリは実際に西に向かったが、同43分に突然、機首から落下し、周辺の住宅など3棟が燃えた。

 現場周辺では主回転翼が外れた状態で落下する様子が目撃されている。部品も南北約550メートル、東西約300メートルにわたって散乱し、中にはローターの翼部分とみられるものもあった。上空で機体が破損し、突然落下した可能性がある。

 小野寺五典防衛相は6日の衆院予算委で改めて事故を陳謝した上で、「徹底した原因究明と再発防止に全力を挙げる。負傷されたお子様や火災に遭われた皆様の補償についても適切に対応したい」と述べた。

【前谷宏、秋山信一】




周辺7棟も被害 200m内、屋根貫通も
毎日新聞2018年2月11日 

 佐賀県神埼(かんざき)市の民家に陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが墜落した事故で、陸自は11日、墜落した民家とは別に周辺の住宅や農作業用の小屋など7棟で部品が屋根を貫通するなどの被害があったことを明らかにした。5日の事故から1週間となるのを前に11日、小野寺五典防衛相が山口祥義(よしのり)知事と面談して被害状況を伝えるとともに、謝罪した。

【石井尚、松尾雅也、池田美欧】


防衛相、知事に謝罪

 周辺の被害は、ヘリが墜落した川口貴士さん(35)方から約200メートルの範囲で確認され、7棟のうち2棟が住宅だった。川口さん方の南東約60メートルの住宅では部品が屋根を貫通して天井に穴が開き、この家の隣の住宅でも雨どいが損傷した。この他、周辺の小屋や倉庫、ビニールハウスでも屋根や壁などに穴や亀裂などが入り、北西約200メートルの大立寺幼稚園では遊具などにヘリの油が付着していた。

 佐賀県庁を訪れた小野寺氏は「大変ご迷惑をかけおわび申し上げる」と山口知事に謝罪した。知事は「最近、部隊関係の事故が増えている」とし、原因究明と再発防止、周辺住民への丁寧な対応の3項目を求めた。

 これに対し、小野寺氏は事故調査に「第三者的な学識経験者に入ってもらう」と述べた。陸自で事故調査に外部有識者を加えるのは異例で、透明性を確保する姿勢を強調した。また、同行した陸自トップの山崎幸二陸上幕僚長が、住民らへの補償などに対応するため専属の窓口を設置することを明らかにした。

 事故を巡っては、ヘリのメインローター(主回転翼)の4本の羽根のうち2本が、現場から約300~約500メートル離れた用水路で別々に見つかっている。部品が広範囲に落下し、住宅などへの被害も複数確認されたことで、佐賀空港(佐賀市)に陸自が導入を目指す垂直離着陸輸送機オスプレイ配備への反発が高まるのは必至だ。ただ、約10分で終わった面談で配備計画への言及はなかった。
小野寺氏は面談後、計画への影響について記者団に「現時点では申し上げる状況にない」と語った