大阪「君が代」裁判 ひのきみ首都圏ネット 最高裁要請文(1) 

平成29年(オ)第16365号
平成29年(受)2024号
2018年1月31日

 ◎ 要  請  書

最高裁第一小法廷 裁判官殿
要請団体 「許すな!『日の丸・君が代』強制 止めよう!
安倍政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク」首都圏ネット
連絡先 永井栄俊

 今、日本社会はこれまでに経験をしたことのない高齢化社会を迎えている。この社会状況はその反面で少子化と深刻な労働者不足の状況にもなってきている。
 このために、政府は定年制の年齢を延長するとともに、「一億総活躍社会」を主要な政治政策として掲げている。高齢者になっても労働力とみなされ、働くことが求められている。すでに社会の構造が定年後の生活で「働くこと」が伴う社会となってきている。


 民間だけでなく公務員においても定年後の再雇用が不可欠となってきており、再雇用の不採用は定年後の老生活を不安定なものへと追いやり、人権問題にまでなろうとしている。そこまで社会の構造が高齢化社会へと大きく転換してきているのである。
 本件訴訟は、「日の丸・君が代」の強制に従わなかったという一事によって再雇用の機会を奪われるという大きな社会問題なのである。

 2016年1月16日の最高裁判決は、「日の丸・君が代」の同種事件に対して「間接的制約」とするとともに、戒告以上の処分に対して裁量権の逸脱濫用にあたると判示している。この判決が示すように、再雇用拒否により定年後の生活を奪うことは、明らかな裁量権の濫用といえる。
 上記小法廷においては、社会の趨勢を直視し、社会通念上においても合理的で公正な判断を行うよう強く要請します。
以  上



大阪「君が代」裁判 ひのきみ首都圏ネット 最高裁要請文(2)  
2018年1月31日
平成29年(行ツ)第410号 
平成29年(行ヒ)第476号

 ◎ 公平・公正な審議を求める要請書

最高裁判所第二小法廷 裁判官様
要請団体 「許すな!『日の丸・君が代』強制 止めよう!
安倍政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク」首都圏ネット
連絡先 根津公子

 学校教育が子どもたちに「日の丸・君が代」の意味や歴史を教えず隠し、「国旗に正対し、国歌を起立斉唱」させることは、国家・政権の価値観を刷り込むことであって、戦後教育の出発点において否定されたはずのことです。
 「日の丸・君が代」が国旗・国歌と法制化されたといえども、「日の丸・君が代」については未だ世論は二分されているのですから、「国旗・国歌を尊重する態度」という一方の価値観を教え込み、その価値観に沿った起立斉唱行為を強制することには慎重でなければなりません。


 しかし、大阪に先んじ、2004年から教職員に対して「君が代」不起立処分をしている東京都では、数年前から「児童・生徒が一人残らず起立するまでは式を始めてはならない、起立しない児童・生徒に対しては起立を促す」と都教委が指示するまでに至りました。教職員だけではなく、子どもたちの思想・良心の自由、表現の自由が奪われる事態となっています。
 子どもたちには、事実や真実、思想・良心の自由や表現の自由等を学ぶ権利・教育を受ける権利があり、それを保障するのが、学校教育すなわち、教職員の使命です。
 当会は、団体名称が示すように、子どもたち一人ひとりの人格形成に資するべき学校教育が、国家の価値観の刷り込みになっている現状に異議申し立てをし、あるべき姿にさせようと行動する団体です。

 さて、志水博子さんの本件上告審が始まるに当たり、原審判決(以下、「判決」という)の誤りについて指摘します。

 1.原審判決は、志水さんの不起立行為は「意図的かつ積極的に行われた」のであって、「国歌斉唱をすることを求められた事案とは明らかに事案を異にする」と判示しました。しかし、出発点となる校長の職務命令が他の教職員と異なっていた事態について、判決が言及していないことに、そもそもの問題があります。
 卒業式に出席したいと考えたのは志水さんだけではありません。間違いなく、卒業する生徒たちは、授業を担当してくれた先生皆が出席してくれるものと思っています。
 志水さんの席をつくらせず、教え子の卒業式に出席させようとしなかった校長の行為(職務命令)が異常なのです。「学校の規律と秩序」を害する行為です。会場外の仕事分担を終え、式に間に合うように椅子を持ち込んだ志水さんを非難することではありません。
 ですから、椅子の持ち込みを「意図的かつ積極的」妨害行為と認定し、2012年1月16日最高裁判決の「学校の規律と秩序の保持等の必要性と処分による非利益の内容との権衡の観点から」戒告を超える重い処分を選択することの相当性を基礎づける「具体的事情」に適用させてはなりません

 2.原審判決は、本件「減給処分は地公法29条1項1号及び5号に基づき行ったもので、府職員基本条例29号2の適用ではない」と判示します。
 しかし、同一の職務命令違反2回の段階で「同一の職務命令違反3回で免職」を予告する「警告書」を発することは、府職員基本条例29号2の適用にほかなりません。

 3.「同一の職務命令違反3回で分限免職」を警告することは、強度な心理的圧力を加えられることであって、間接的制約をはるかに超えた制約となります。
 また、このことを論じた西原鑑定意見書に対し、根拠を明らかにして批判することもせずに、「にわかに採用できない」と断じることは、裁判を受ける権利を奪うことに通底します。

 以上の点について、公平・公正に審理を尽くしてくださいますよう、要請します。
以上