対ポーランド
EU、制裁着手へ「法の支配に違反」
毎日新聞 2017年12月20日 【ブリュッセル八田浩輔、ウィーン三木幸治】
欧州連合(EU)の欧州委員会は20日、東欧ポーランドの政権与党が進める司法改革が政府の司法介入を可能とし、EUが重視する「法の支配」に違反するとして、EU基本条約に基づく制裁に向けた手続きに着手すると発表した。
ハンガリーの反対で制裁が実現する可能性は低いが、一連の手続きは1993年のEU発足から前例のない事態。英国の離脱で加盟国の結束が試される中、欧州内の東西の分断の先鋭化は避けられない。
EU条約7条は、加盟国が人権や法の支配などEUの基本的な価値に「重大な違反」の危険があると欧州委などが判断した場合、加盟国に諮り5分の4以上の賛成があれば違反を認定。その後も改善がみられず、加盟国が全会一致で違反が継続していると認定すれば議決権の停止に至る。7条が定める一連のプロセスは発動されたことがないが、メルケル独首相とマクロン仏大統領は支持する考えを示していた。
ポーランドの右派政党「法と正義」は2015年の総選挙で政権を奪取。政府が公共放送トップの罷免権を握る法改正をしたり、憲法裁判所の違憲判決の基準を厳しくしたりするなど司法やメディア統制を強め、欧州委は昨年7月からポーランド側に勧告を繰り返し、改善を促してきた経緯がある。
ポーランドのモラウィエツキ首相は20日、「必要な改革」だと正当性を強調する一方、来年1月にユンケル欧州委員長と会談し、対話に応じる意向を示した。EUは3カ月の猶予を与え、改善が見られれば手続き取り下げも検討する。