《小川勝の直言タックル》( 東京新聞【話題の発掘】)
 ◆ 米「白人至上主義」衝突
   声上げるアスリート


 米国のバージニア州で起こった白人至上主義者らと反対派の衝突について、ドナルド・トランプ大統領が「双方に責任がある」との見解を示したことで、スポーツ界からも大統領に批判の声が上がっている。

 米国プロバスケットボールNBAで優勝したウォリアーズのケビン・デュラント選手は、恒例のホワイトハウス表敬訪問には出席しないと表明した。デュラント選手はNBAファイナル(優勝決定戦)でMVPになった選手だけに、大きなニュースになっている。
 スポーツ専門の放送局ESPNの取材に対して、この国の子供たちのために、アスリートが声を上げることは素晴らしいことだと語っている。


 そして昨年のNBA優勝チーム、キャバリアーズのスター、レブロン・ジェームズ選手はツイッターで、八月十二日に事件が起こった時から「シャーロッツビルで起こっていることは悲しい。これがこの国の向かっている方向なのかな?再び、アメリカを偉大にするの?」と書き込んでいた。
 ジェームズ選手のツイッターには三千七百万人以上のフォロワーがいるため影響力は大きい。

 またサッカー女子米国代表のGK、ホープ・ソロ選手もツイッターで意見を表明している。二〇一一年と一五年のワールドカップ、日本との決勝で米国のゴールを守っていた選手だ。
 彼女は、トランプ大統領を名指しこそしていないものの「歴史から学んでいないのかしら?私たちはヘイトに対して立ち上がらなければいけない。私たちの国が、恥ずべき道へと導かれてしまう前に」と書き込んでいる。
 ソロ選手にも百万人以上のフォロワーがいるから、やはり社会的な影響力は大きい。
 こういった意見表明は、トランプ大統領の支持者からは攻撃されるはずだが、本人たちはそれも覚悟の上なのだろう。

 米国の歴史上、人種問題に関してスポーツ選手が果たしてきた役割は大きかった。
 黒人初の六リーガーとなったジヤッキー・ロビンソン選手、そしてボクシングのモハメド・アリ選手。人種を超え、年齢の枠も超えて注目される存在として、彼らの振る舞いは社会に影響を与えた。

 いまでこそ彼らの社会的貢献は偉大な貢献として認められているものの、現役当時は中傷や批判もあった
 いま声を上げている選手たちが、人種間題の鎮静化にどのように貢献できるのか、注目したい。
 (スポーツライター)

『東京新聞』(2017年8月21日【話題の発掘】)


パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2