障害者220人を解雇
岡山・倉敷 経営悪化で事業所閉鎖
しんぶん赤旗 2017年8月1日(火)
岡山県倉敷市の障害者の就労継続支援A型事業所5カ所が7月31日、一斉に閉鎖され、障害者約220人が解雇されました。全国的にも前例のない規模で、就労希望者195人のうち18人しか再就職先が決まっていません。
(写真)解雇予告通知書を手にする女性=7月28日、岡山県倉敷市
大量解雇があったのは、一般社団法人「あじさいの輪」が運営する4カ所と株式会社「あじさいの友」運営の1カ所。いずれも同じ男性が代表を務めています。パンの販売やダイレクトメールの封入など、さまざまな軽作業をしてきましたが、経営状況の悪化を理由に事業所を閉鎖しました。
解雇された精神障害3級の男性(50代)は「6月下旬のある日に出勤すると、職員から1枚の紙切れ(解雇予告通知書)を手渡されました。次から次へと事業を拡大させていることに不安を感じていましたが、閉鎖の話は唐突でした」と語ります。
今回の経営悪化は、事業所とは別に設けたウナギ養殖場への投資が一因とみられています。
「あじさいの輪」「あじさいの友」のグループ会社で、就労継続支援A型事業所の開業サポート事業を展開する会社は、ウェブサイトで「新たなビジネスモデル」と宣伝しています。教育訓練給付金や特定求職者雇用開発助成金(障害者1人当たり3年間で最大240万円)などの公的支援があることを強調したものです。
「また社会から捨てられた」と目に涙を浮かべる精神障害2級の女性(30代)は、派遣社員として自動車関連会社で働いていた2009年1月に雇い止めされた経験があります。
女性は岡山県の最低賃金と同額の時給757円で働き、生活保護を利用しながら生計を立てていました。職を失い、「ビジネスとして事業所を運営するのは、あまりにも障害者の人権を軽視している。だまされた気持ちになり、むなしさと失望感がある。責任の所在をあいまいにする市の対応にも無責任さを感じる」と憤ります。
厚生労働省と岡山県、倉敷市は、7月27日に事業所への立ち入り調査を実施。市はハローワークと連携して再就職の相談に応じる説明会を開きましたが、1回目は68人、2回目は40人しか参加していません。「説明会の案内はなかった」と証言する障害者もおり、十分案内がされなかったとみられます。
日本共産党岡山県議団と倉敷市議団は7月20日に、伊原木隆太知事に就労支援などの対応を要請。同月28日には厚生労働省で担当者からA型事業所の運営について聞き取りました。
田辺昭夫倉敷市議は「解雇された人が路頭に迷うことがないよう、徹底した原因究明と、事業者に社会的責任を果たさせるよう求めていく」と述べています。
就労の障害者220人に解雇予告 倉敷の支援5事業所が月末閉鎖
http://static.sanyonews.jp/image/detail/7cb0ecb0bdcf3aaa3ed6f2d65441e0cd.jpg
倉敷市内にある障害者の就労継続支援A型事業所5カ所が今月末で閉鎖され、働いている障害者約220人が解雇予告を受けていることが20日、分かった。障害者の一斉解雇としては全国的にも異例の規模。同市などは同日、再就職に向けた説明会を市内で開いた。解雇される障害者の再就職に向けて倉敷市などが開いた説明会
市などによると、閉鎖されるのは市内の一般社団法人が運営する4カ所と、同法人の代表理事が経営する株式会社運営の1カ所。2014年1月から17年1月にかけ、市からA型事業所の指定を受けた。食品包装材加工などの軽作業を行い、7月10日時点では1事業所当たり14~88人が利用していた。
同法人などが6月下旬に利用者と市に7月末での閉鎖を通知。市には「過剰な設備投資で経営が悪化したため」と説明したという。
同法人の代表理事は取材に対し、事業所を閉鎖する理由について「最低賃金が上がり、支払う固定費が増えるなどし、経営が悪化した」と答えたが、詳しい経緯は明かさなかった。
厚生労働省障害者雇用対策課は「1度に3桁の障害者を解雇するというのは、ここ数年では聞いたことがない」としている。
大勢の障害者が就労の場を失う可能性があるため、倉敷市とハローワーク倉敷中央は20日、解雇予定者と市内外のA型事業所など42施設のマッチングを図る説明会を市内で開催。障害者68人が参加し、各事業所のブースを回って話を聞いた。
市障がい福祉課は「一日も早く次の職場が決まるよう、相談に乗るなどサポートしていきたい」としている。
◇「ショック」「ビジネス優先か」障害者に戸惑い、憤り
突然、どうして―。障害者の大量解雇予告を受け、再就職を支援するため倉敷市などが市内で開いた20日の説明会。会場では障害者から戸惑いや憤りの声が上がった。
「解雇の宣告を受け、足元が崩れ落ちていくようなショックを受けた。不安で眠れなくなった」と統合失調症を患う40代男性。体に障害のある50代女性は「仕事は生きがいそのもの。次が見つからなかったらどうしよう」と沈痛な面持ちで語った。
説明会には閉鎖する就労継続支援A型事業所の経営者の姿は見られなかったという。交通事故で障害を負った60代男性は「立ち会うべきではないか。無責任だ」と指摘した。
知的障害のある30代女性の付き添いで訪れた社会福祉法人の男性職員(46)は「ビジネスを優先し、障害者を大切にしていないから、こういう結果になった」と語気を強めた。