8.教育,余暇及び文化的活動(第28条~31条)
(1)教育についての権利(含む職業訓練及び指導)(28条)
120.学校におけるいじめ問題については,教育上の配慮等の観点から,一義的に は教育現場における対応を尊重しつつも,犯罪行為がある場合には,,被害少年や保護者等の意向や学校における対応状況等を踏まえながら,警察として必要な対応 をとっている。 また,被害少年の精神的被害を回復するために特に必要と認められる場合には,保護者の同意を得た上で,少年サポートセンターを中心として,少年補導職員等によ り,カウンセリング等の継続的な支援を行うなどしている。
121.奨学金について,第3回政府報告パラ391参照。
122.教員の確保については,これまで累次の定数改善計画により教職員定数の改 善を図り,必要な定数の確保に努めてきたところである。教職員定数改善計画後の2006年以降についても,2015年度までの10年間で合計12,790人の公立義務諸 学校の教職員定数が改善された。
123.(最終見解パラグラフ70,71)高等学校における入学者選抜は,生徒の個性 に応じた学校が選べるよう,選抜方法が多様化されている。例えば,中学校のときに不登校を経験するなど,能力を十分に発揮できなかった生徒を受け入れる高等学校 等も設置されてきているところである。大学入学者選抜については,各大学の教育理 念・教育内容に基づき,入学希望者の知識・技能だけではなく能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価するとともに,多様な背景を持った学生の受入れについて配 慮することや高等学校教育を乱すことのないよう配慮することを基本として実施する よう,各大学に対して促してきたところである。また,高大接続システム改革会議「最終報告」において,多様な背景を持つ受検者一人一人の能力や経験を多面的・総合的に評価する入学者選抜へと転換することが提言されているところであり,本報告も 踏まえ,現在,大学,高等学校関係者等による協議の場において,新たな枠組みに ついて検討している。その状況も踏まえつつ,各大学における多面的・総合的な評価による入学者選抜改革を推進することとしている。
なお,仮に今次報告に対して貴委員会が「過度の競争に関する苦情が増加し続け ていることに懸念をもって留意する。委員会はまた,高度に競争的な学校環境が,就学年齢にある児童の間で,いじめ,精神障害,不登校,中途退学,自殺を助長してい る可能性がある」との認識を持ち続けるのであれば,その客観的な根拠について明ら かにされたい。
124.(最終見解パラグラフ70,71)いじめの問題について,各学校においては,い じめはどの学校も,どの児童にも起こり得るとの基本的認識に立って,「いじめは絶対に許されない」という認識を徹底させる指導を行うとともに,家庭や地域社会との連携 を推進するなどの取組を進めてきた。文部科学省においては,学校及び教育委員会 によるいじめの問題への取組の総点検を実施することや,いじめへの取組について更なる徹底を図ることなどを通知等で求めている。また,いじめの問題への取組の基 本である早期発見,早期対応の前提条件となるいじめの実態把握については,各学 校は,「アンケート調査」の実施など,定期的に児童生徒から直接状況を聞く機会を確実に設けるよう指導している。 2013年6月には,社会総がかりでいじめの問題に対峙するため,基本的な理念 や体制を定めた「いじめ防止対策推進法」が成立し,9月に施行された。文部科学省では,同年10月に,「いじめ防止基本方針」を策定した。 同法や基本方針に基づく対応が徹底されるよう,①学校や教育委員会等に対する 指導,②教育委員会の生徒指導担当者や校長などの管理職に対する研修会の実施,③スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーの配置等による教育相談体制 の充実,④学校や教育委員会等における実施状況の調査,⑤文部科学省における 「いじめ防止対策協議会」の設置などの取組を進めている。
125.(最終見解パラグラフ72,73) 外国人学校のうち各種学校として認可を受け たもの等について,税制面等での優遇措置のほか,それぞれの地方の実情に応じ,各地方自治体から助成が行われている。そのため,我が国においては,各種学校や 準学校法人の認可基準の緩和について,認可を行う都道府県に働きかけているとこ ろ。また,法令に規定された外国人学校に通う高校生は高等学校等就学支援金制度の対象となり,授業料に対する支援を受けうる。
126.(最終見解パラグラフ72,73) 我が国の大学の入学資格は,我が国の国籍 の有無にかかわらず,我が国の高等学校等の卒業者又はこれと同等以上の学力があると認められた者に認められる。外国人学校に関する大学入学資格については, ①我が国において外国の高等学校相当として指定した外国人学校,②国際的な評価 団体(WASC,CIS,ACSI)の認定を受けた外国人学校については,日本の高等学 27 校を卒業したものと同等に大学への入学資格があり,①及び②の指定や認定を受け ていない外国人学校の生徒に関しても,各大学において個別の入学資格審査により認められた者については大学への入学資格があり,大学入学試験のアクセスは差別 的なものとはなっていない。
127.(最終見解パラグラフ73)ユネスコの教育における差別待遇の防止に関する 条約については,現時点で締結する具体的な予定はない。なお,教育における差別防止について,我が国においては,既に教育基本法において,全ての国民は教育上 差別されないとして教育の機会均等を定めており,これを基本原則として,我が国は 教育施策を進めているところである。我が国に居住する外国人についても,希望する者については義務教育の機会の保障等日本人と同等の取扱いを行っている。
128.(最終見解パラグラフ74,75) 我が国で小・中・高等学校等の教科書につい て採用されている教科書検定制度は,国が特定の歴史認識,歴史事実を確定するという立場に立って行うものではなく民間が著作・編集した図書の具体の記述について, 政府外の有識者をメンバーとする教科用図書検定調査審議会が,検定の時点にお ける客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして,明らかな誤りや著しくバランスを欠いた記述などの欠点を指摘することにより実施されている。その際,他国を尊重 し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことを目標に掲げる教育基本法や, 近隣のアジア諸国との国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること等を内容とする教科用図書検定基準等に基づいて審査が行われている。そのため, 「日本の歴史教科書が,歴史的事件に関して日本の解釈のみを反映しているため, 地域の他国の児童との相互理解を強化していない」との懸念は当たらない。日本政府としては,歴史教育の適切な実施等を通じて,児童生徒が我が国及び世 界に対する理解を深めるよう努力するとともに,近隣諸国をはじめ諸外国との相互理 解,相互信頼の促進に努めている。
129.各省庁の取組につき別添2参照。 (2)教育の目的(29条)
130.2006年12月に教育基本法を改正した。同法第1条において教育の目的を, 第2条において教育の目標を定めている。これらは,条約第29条第1項に掲げる方向性と合致。(別添1参照)
131.第3回政府報告パラ419参照。2008年3月に「人権教育の指導方法等の在 り方について(第三次とりまとめ)」をとりまとめたところである。
(3)人権教育,市民教育
132.別添2の広報・啓発活動を参照。
(4)休息,遊び,余暇,レクリエーション,文化的及び芸術的活動(31条) (最終見 解パラグラフ76)
133.地域住民等の参画を得て,放課後や土曜日等に学校施設等を活用して,様々 な学習,自然・文化・芸術・スポーツ活動等の体験活動,地域住民との交流活動などの機会を提供している。
134.芸術鑑賞機会につき,第3回政府報告パラ430参照。
135. 2012年3月にスポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るた め「スポーツ基本計画」を策定。詳細は別添2参照。
136.文化施設につき,第3回政府報告パラ433,434,別添3参照。
137.児童厚生施設につき,第3回政府報告パラグラフ435参照。
9.特別な保護措置(第22条,30条,32条,33条,35条,36条,37条(b)~(d),38~40条)
(1)難民児童(第22条)
138.(最終見解パラグラフ77,78(a)) 条約難民及び第三国定住難民に対する 定住支援プログラムの一環として定住支援施設において,日本で日常生活を送る上で必要最低限の基礎的な日本語を習得するための6か月の日本語教育プログラムを 実施している。また,定住支援施設退所後は,日本語教育相談や日本語学習教材の 提供等の支援を行っている。2010年から2015年に来日した第三国定住難民105名のうち,日本語教育プログラム受講者は,幼児を除く84名(大人50名,児童34名) である。
139.第3回政府報告パラ443参照。
140.(最終見解パラグラフ78(b)(c))親を伴わない16歳未満の年少者や重度の 疾病を抱える申請者について,迅速に処理を行うと同時に,必要に応じて申請者の医師,カウンセラー,弁護士等によるインタビューの立会を認めることを試行すること とした。
また,我が国の難民認定手続においては,UNHCRの見解それ自体に法的拘束力 を認めているものではないが,実務においては,UNHCRの見解も十分に留意した上で対応している。 なお,2016年1月末現在,難民認定申請を行っている児童は768名である。また, 1982年1月に我が国の難民認定制度が開始されて以降,難民として認定された児童は132名である(注:本統計数値には異議の申立てを含む。)。
(2)マイノリティ又は先住民族の集団に属する児童(最終見解パラグラフ86,87)
141.教育についても,憲法及び教育基本法の精神に則り,すべての児童の教育を 受ける機会の実現を図っている。142.法務省の人権擁護機関では,少数民族又は先住民族の集団に属する児童の 人権を守るため,「子どもの人権を守ろう」,「外国人の人権を尊重しよう」,「アイヌの人々に対する理解を深めよう」等を啓発活動の強調事項として掲げ,講演会や研修 会の開催,啓発冊子の配布等,各種啓発活動を実施している。 (3)搾取の状況にある児童(a)経済的な搾取(32条)
143.パラグラフ66.参照。
144.労働基準法は,使用者が暴行,脅迫,監禁その他精神又は身体の自由を不 当に拘束する手段によって,労働者の意思に反して労働を強制することを禁止し,また,何人も法律に基づいて許される場合のほか,業として他人の就業に介入して利 益を得ることが禁止されている。 また,同法は,満18歳に満たない者に,危険な業務,重量物を取り扱う業務,安全,衛生又は福祉に有害な場所における業務及び坑内労働に就かせることを禁止してい る。具体的な危険有害業務の範囲については年少者労働基準規則に定めている。
145.(最終見解パラグラフ80(b)) 人身取引対策行動計画2014に基づき,婦人 相談所では,国籍・年齢を問わず,人身取引被害女性の保護を行い,宗教的生活や食生活を尊重した衣食住の提供,居室や入浴・食事の配慮,心理療法担当職員や通 訳者,夜間の警備員の配置,医療費の支援や法的援助の周知など,支援の充実を 図っている。
146.我が国は,人間の安全保障基金を通じて,人身取引や児童兵の問題に対処 するプロジェクトを支援。さらに,2010年7月及び2014年1月には,関係省庁,NG 30 O,労使団体,ILO等国際機関が参加して,「児童労働に関する意見交換会」を実施 した。
(b)売買,人身取引及び誘拐(35条)(最終見解パラグラフ80)
147.我が国は,2005年5月より,日本国内で認知された外国人人身取引被害者 の母国への安全な帰国及び再被害の防止を目的とし,人身取引被害者の帰国・社会復帰支援事業を,国際移住機関(IOM)への拠出を通じて行っている(カウンセリング, 帰国チケットの手配,出国支援帰国後のシェルターや医療・精神的ケアの提供,法律相談等)。2006年4月から2015年末までに,計209名の外国人被害者の帰国支 援を実施。
148.我が国政府は毎年,政府協議調査団を関係国に派遣し(2006年4月以降で は,タイ,インドネシア,ラオス,カンボジア,オーストリア,韓国,米国,フィリピン),先方政府,国際機関,NGO等と人身取引の効果的な防止及び撲滅について意見交換 を行っている。この枠組みを通じ,タイとの間では,2006年5月に「日タイ共同タスクフォース」を立ち上げ,連携を強化。
149.強制失踪条約を2009年7月23日に締結した。
150.パラグラフ174.参照。
151.北朝鮮による拉致問題は,基本的人権の侵害という国際社会全体の普遍的 問題であり,その被害者には拉致当時児童であった者も含まれている。我が国は,北朝鮮に対し,北朝鮮が拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的 な調査の実施に合意した2014年5月のストックホルムでの日朝政府間協議におけ る合意の履行を求めつつ,あらゆる機会をとらえ,各国に対し拉致問題を提起し,協力を要請してきている。また,我が国及びEUが共同提出している北朝鮮人権状況決 議は,国連人権理事会では2008年から,国連総会では2005年から毎年採択され てきており,2016年12月に国連総会で採択された同決議は,北朝鮮に対し,拉致被害者の即時帰国等により,国際的な懸念事項を早急に解決することを強く要求して いる。さらに,同月には,国連安全保障理事会において,人権状況を含む「北朝鮮の 状況」に関する会合が3年連続で開催され,我が国は北朝鮮に対し,拉致問題の一刻も早い解決を求めた。
152.法務省令の改正・施行により(2005年3月及び2006年6月),人身取引に関 する指摘のなされていた興行の在留資格審査を厳格化した。 31 (4)少年司法 (a)少年司法の運営(第40条)(最終見解パラグラフ85)
153.別添2の私生活の保護の項を参照。
154.最終見解パラグラフ85(a) その後の烙印の回避につき,少年法第60条(人 の資格に関する法令の適用),第61条(記事等の掲載の禁止)参照。
155.(最終見解パラグラフ85(b))2000年の少年法改正において,刑事処分可能 年齢を16歳から14歳に引き下げることとしたのは,14歳,15歳の年少少年による凶悪重大事件が後を絶たず憂慮すべき状況にあったことにかんがみ,少年の健全育 成のためには,この年齢層の少年であっても,罪を犯せば処罰されることがあること を明示することにより,規範意識を育て,社会生活における責任を自覚させる必要があると考えられるために,刑事処分可能年齢を刑法における刑事責任年齢と一致さ せて14歳としたものであって,指摘のような,従前の16歳へ引き上げるための再改 正を要する状況にはないものと認識している。なお,我が国においては,全ての少年非行事件は,少年に係る医学,心理,教育等 について専門的知見を有する家庭裁判所の審判を経て処分が決せられることとされ ており,その過程においては,少年,保護者又は関係人の行状,経歴,素質,環境等について専門知見を活用した調査を行い,要保護性の有無・程度等に関する判断を 適切に行うなどしている。そのような調査をも踏まえて,裁判所において刑事処分が 相当であると判断した事案のみが刑事処分の対象とされているところであり,この点は,重大事件を起こした年少少年についても同様である。 加えて,懲役又は禁錮の言渡しを受けた16歳未満の少年については,16歳に達 するまで,少年院に収容して,保護処分と同様の処遇を授けることができることとしている(少年法第56条第3項)。
156.(最終見解パラグラフ85(c))我が国においては,刑事責任年齢に満たない児 童が刑事犯罪者として扱われ,刑事施設に収容されることはない。刑事責任年齢以上の児童については,前項記載のとおり,家庭裁判所において, 要保護性の有無・程度等に関する判断を適切に行うなどして処分を決定しており,刑 事処分が相当と判断した事案のみについて,成人と同様に,裁判員制度によるものを含む刑事裁判が行われている。 そして,その審理の過程においては,家庭裁判所における調査の結果が参照され 得るほか,刑事裁判所においては少年を保護処分に付するのを相当と認めるときは,事件を家庭裁判所に移送することとされている。
157.(最終見解パラグラフ85(d))第3回報告パラグラフ172及び173参照。家庭裁判所は,検察官が関与し得る一定の重大事件について,少年鑑別所に送致する 観護措置がとられている場合において,弁護士である付添人がいないときは,職権で 少年に弁護士である付添人を付することができる。この国選付添人を付することが できる一定の重大な事件の範囲について,故意の犯罪行為により被害者を死亡させ た罪,死刑・無期・短期2年以上の懲役・禁錮に当たる罪の場合に限られていたが,2014年6月に施行された改正少年法により,死刑・無期・長期3年を超える懲役・禁錮 に当たる罪の場合にまで拡大された(少年法22条の3第2項)。
158.(最終見解パラグラフ85(g))少年刑務所及び少年院における教育・訓練につ き別添2参照。
159.パラグラフ58.参照。
160.少年に対する保護観察としては,家庭裁判所の決定により保護観察に付され た者,少年院からの仮退院を許された者,少年刑務所から仮釈放を許された少年及び保護観察付執行猶予に付された少年に対する保護観察がある。詳細につき別添2 参照。
161.条約40条2項(b)(ⅵ)について,参考となる資料は別添3参照。
(b)自由を奪われた児童(37条(b)~(d))
162.(最終見解パラグラフ85(e))パラグラフ166参照。少年に対し,刑事罰が科される場合であっても,前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者などに対し,3年 以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをするときは,情状により, 裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間,その刑の全部の執行を猶予することができる。また,その執行猶予の期間中,保護観察に付することができる。
163.少年の立ち直り支援活動について別添2参照。
164.(最終見解パラグラフ85(g))少年法は,留置施設においては少年を成人と分 離して収容しなければならない旨規定しており,警察の留置施設に少年を留置する場合,成人用の居室とは分離された少年用の居室において処遇し,成人被留置者と 少年が相互に接触しないようにしている。
165.(最終見解パラグラフ85(g))刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する 法律は,少年の被留置者に,親族・弁護人等との面会及び信書の発受を認めている。 留置施設では,少年の被留置者については,留置施設の管理運営上の支障や捜 査上の支障等がある場合を除き,親族との面会を認めている。
166.(最終見解パラグラフ85(g))刑事訴訟法に基づき,留置担当官は,少年の被 留置者から弁護人選任について申出があったときには,弁護士会への連絡等必要な措置をとることとしている。 また,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づき,少年の被留 置者と弁護人との面会は,原則として時間制限なく,無立会面会を認めている。
167.(最終見解パラグラフ85(f))我が国は,憲法第31条が,法律の定める手続に よらなければ生命,自由を奪われない旨,適正手続の保障一般について規定しているほか,同第33条は,現行犯逮捕の場合を除き,令状によらなければ逮捕されない旨,また,同第34条は,正当な理由を直ちに告げられなければ拘禁されない旨,そ れぞれ規定している。これを受けて,刑事訴訟法は,被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある場合に,裁判官があらかじめ発した逮捕状により行う通常逮捕,現に罪を行い,又は現に罪を行い終わった者を逮捕する現行犯逮捕,一定の重罪事 件について,被疑者が罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり,急速を要し事前 に逮捕状を求めることができない場合に認められる緊急逮捕の手続を規定している。また,捜査段階の少年の身柄の拘束については,やむを得ない場合でなければ勾 留することはできず,勾留する場合には少年鑑別所を勾留場所とすることができ,勾 留に代えて観護措置を執ることができるなど,少年の特質が考慮されている。身柄拘束に不服があるときは,勾留について,その裁判の取消又は変更を請求す ることができる。観護措置についても異議の申し立てをすることができ,家庭裁判所 はその異議に理由があるときは,原決定を取消し,必要があるときは更に裁判をすることとなる。
168.少年院の仮退院者の平均収容期間につき別添3参照。
169.「不法に恣意的に自由を剥奪された児童」に該当する例はない。合法的に自由 をはく奪された児童数等の統計は別添3参照。
(c)死刑及び終身刑(37条(a))
170.少年法第51条(別添1参照)は,犯行時18歳未満の者に対する死刑と無期刑 の緩和について規定する。我が国には仮釈放のない終身刑は存在せず,無期刑については10年を経過した 後,仮釈放が可能とされている。 さらに,少年法第58条により,20歳未満の時に無期刑の言渡しを受けた者については,同法第51条第1項の規定による場合を除き,7年の経過で仮釈放が可能とさ れている。
(d)少年司法制度に関係する専門家のための研修
171.別添2の研修の項,第3回政府報告パラグラフ94,98参照。
172.弁護士としての活動について別添2参照。
10.児童の売買,児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選 択議定書のフォローアップ(データ)
173.性的搾取に関する主な福祉犯検挙人員は別添3参照。 (最終見解パラグラフ80(a)~(d))2015年中の福祉犯の送致人員のうち暴力 団等関係者は257人で,送致人員の3.7%を占めており,暴力団等が少年に対す る薬物密売や少女に売春をさせる等悪質性の高い事案に関与している実態がみられる。
174.児童相談所における児童虐待等に関する相談対応件数につき,別添3参照。 (立法措置)
175.パラグラフ5.参照。 (国内行動計画)
176.政府では,2016年7月に犯罪対策閣僚会議において策定した「第三次児童 ポルノ排除総合対策」(https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/no_cp/cp-taisaku/pdf/cp-measures3.pdf)に基づき,関係府省において,被害防止対策やインターネット上の児童ポルノ画像等 の流通・閲覧防止対策等の各種施策を総合的に推進している。 また,官民一体で児童ポルノ排除に向けた総合的な活動を推進するため,2010年以降毎年,官民で構成する児童ポルノ排除対策推進協議会を開催していたところ であるが,2016年11月には,同協議会を児童の性的搾取等撲滅対策推進協議会として発展的に改組するとともに,設立総会を開催して情報交換等を行い,相互の連携・協力を図っている。
177.政府では,人身取引が重大な人権侵害であり,人道的観点からも迅速・的確 な対応が必要であるとの認識の下,2004年12月に「人身取引対策行動計画」が,2009年12月に「人身取引対策行動計画2009」が策定された。両計画に掲げられた 施策が着実に実施されたことにより,人身取引対策は大きく前進し,一定の成果を上げたところであるが,依然として人身取引は重大な国際問題であり,我が国の人身取 引対策に対する国際社会の関心も高いことから,人身取引に係る情勢に適切に対処 し,政府一体となった対策を引き続き推進していくため,2014年12月,「人身取引対策行動計画2014」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jinsin/kettei/keikaku2014_en.pdf ;)が策定された。関係閣僚から成る人身取引対策推進会議を設置し,関係省庁が連携 をとりながら取り組んでいる。 警察では,同計画に沿って,引き続き人身取引事犯の取締りを推進するとともに,関係機関・団体と協力して被害者の発見と適正な保護・支援に努めている。
178.2010年12月に閣議決定した「第3次男女共同参画基本計画」では,重点分 野の一つに「女性に対するあらゆる暴力の根絶」を掲げており,女性に対する暴力を根絶するため,暴力の形態に応じた幅広い取組を総合的に推進している。同計画で は,子供に対する性的な暴力の根絶に向けた対策として,子供に対する性的な暴力 被害の防止,相談・支援等,児童ポルノ対策の推進,児童買春対策の推進,広報啓発推進に関する具体的施策を盛り込んでおり,関係府省において取組を進めてい る。 また,2015年12月に閣議決定した「第4次男女共同参画基本計画」に基づき,子供に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の一層の推進を図る。(調整及び評価)
179.2016年4月以降,児童の性的搾取等に係る対策について,行政各部の施策 の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する業務を国家公安委員会が担うこととなり,同委員会において関係府省庁間の必要な調整等を行 うため,関係府省庁による連絡会議を設置した。 その後,2017年4月18日,犯罪対策閣僚会議において,児童の性的搾取等に係る対策の基本計画が策定された。 (広報及び研修)
180.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ14~17,45)別添2参照。 (資源の配分)
181.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ19)犯罪捜査や犯罪被害者等支援の ため,必要な予算の確保や検察庁職員の増員を措置し,検察体制の充実強化を図っている。 (犯罪の予防措置)
182.(最終見解パラグラフ80(a)~(d),児童売買議定書・最終見解パラグラフ27,43)警察では2009年から国際児童ポルノデータベースに参画し,被害児童の特定・ 救出等に向けた各国との連携強化を図っている。
183.(最終見解パラグラフ80(a)~(d),82,児童売買議定書・最終見解パラグラフ27(a)) 警察では,毎年,児童の商業的・性的搾取問題に取り組んでいる東南ア ジア各国の捜査機関の代表者等を我が国に招へいして,「東南アジアにおける児童 の商業的・性的搾取犯罪捜査官会議」を開催し,取組状況等について意見交換を行っている。このほか,警察では,国際刑事警察機構(ICPO)主催による「児童に対する犯罪に 関する専門家会合」に出席し,諸外国捜査機関との情報交換を行い,協力関係を構 築している。
184.(最終見解パラグラフ82)警察では,児童ポルノ画像照会システム(Child Pornography Advanced Searching System:CPASS)を児童ポルノ事犯の捜査 に活用している。このシステムは,各都道府県警察が捜査等を通じて入手した児童ポルノ画像(静止画像・動画像)及び当該画像に係る情報を警察庁において一元管理 する一方,各都道府県警察が入手した画像と一元管理する画像との照合を行うことで,画像に係る捜査情報を共有するものであり,児童ポルノ事犯捜査を効率的かつ効果的に行うことを目的としている。
185.(最終見解パラグラフ82)警察では,児童ポルノの流通・閲覧を防止するため,サイバーパトロールやインターネット・ホットラインセンターに寄せられた通報を通じ,児童ポルノに係る情報の把握に努め,取締りを推進するとともに,当該情報が掲載さ れたサイト管理者等に対し,当該情報の削除の要請及び同種事案の再発防止に努 めるよう申入れ又は指導を行っている。また,2011年4月から,インターネット・サービス・プロバイダ等の民間による自主 的な取組として,インターネット上の児童ポルノの閲覧防止措置が開始されたことを受け,警察としても必要な情報を提供し支援している。
186.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ27(a))我が国は,「オンライン児童性 的搾取に関する世界的連携」及び「世界オンライン児童性的搾取サミット」の会合に参加したほか,「世界的連携」においては我が国の取組にかかる報告書を公表した。 また,上記枠組みが合併し新たに発足する「オンラインの児童性的搾取撲滅のた めのWePROTECT世界連携」に我が国も参加を予定している。
187.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ27(a))警察庁では,2004年から毎 年1回,人身取引事犯に係るコンタクトポイント連絡会議を開催し,在京大使館,関係省庁,都道府県,NGO,IOM(国際移住機関)等との意見交換・情報交換を行っている。
188.(最終見解パラグラフ80(d),児童売買議定書・最終見解パラグラフ27(c))我が国は,2005年6月8日に国連国際組織犯罪防止条約を補足する「人(特に女性 及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」の締結について国 会承認を得ているところ,2017年6月15日,国際組織犯罪防止条約を締結するために必要な国内担保法が成立した。人身取引議定書の締結に必要な国内担保法は 既に成立していたことから,日本は同条約及び同議定書の締約国となる準備が整った。日本は,現在,同条約及び同議定書の早期締結に向けて準備を行っている段階である。
189.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ29,31)パラグラフ5.参照。憲法98条2項は,「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と規定しており,我が国は当然のことながら条約上の義務の遵守 を前提に国内法を制定し政策を実施している。前回政府報告審査後に制定・改正された関連国内法の起草過程においては,条約の趣旨がより一層効果的に反映され るよう十分な考慮が払われている。検察において,児童が被害者となる犯罪について, 児童買春・児童ポルノ禁止法,児童福祉法,刑法等を活用して,厳正な処分と科刑の実現に努めている。 (児童売買等の禁止)
190.風営適正化法は,少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止している。 (別添1参照)
191.(最終見解パラグラフ80(a)~(d),82,児童売買議定書・最終見解パラグラフ31(b)~(d)) 警察では児童買春・児童ポルノ禁止法に定める国民の国外犯処罰 規定に基づき,国外で敢行された事犯の取締りを積極的に推進している。
192.(最終見解パラグラフ82)警察では,少年の福祉を害し,又は少年に有害な影 響を与える犯罪を福祉犯として捉え,これらに該当する禁止事項を持つ児童買春・児童ポルノ禁止法,児童福祉法,労働基準法,風営適正化法を活用した取締りを行っ ている。
193.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ33)パラグラフ8.参照。
194.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ35) 児童買春を処罰する児童買春・ 児童ポルノ法においては,児童を買った者のみが処罰され,買春の対象となった児童を処罰する規定はない。
(被害児童の権利保護)
195.(最終見解パラグラフ49(b),82,児童売買議定書・最終見解パラグラフ39 (c),41)児童買春等を始めとする福祉犯の被害を受けた児童については,都道府県警察に設置された少年サポートセンターを中心として,少年の特性に関する知識や少年の取扱いに関する技術を有する少年補導職員等が,必要により部外の専門家や民間ボランティアとも協力しつつ,個々の少年の特性を踏まえたきめ細かなカウン セリングや保護者等と連携しての環境調整等による継続的な支援を行っている。また, これらの職員については,大学教授やカウンセラー等の専門家を講師としたカウンセリング技術専科等の教育を実施している。
196.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ39(a))
法律上の要件を満たすとき は,児童の供述を録取した供述調書や録音録画媒体を公判における証拠とすることが可能であり,その場合には,児童が公判において証言することを回避し得る。 また,①児童が被害者等である事件に関し,児童の負担軽減等のため,検察,警 察,児童相談所の各関係機関に相談窓口を設置して日頃から緊密な情報交換を行う,②児童の事情聴取に先立って検察,警察,児童相談所の担当者が協議を行い,代 表者が聴取するなどの運用を行っている。その際には,必要に応じてその様子について録音録画を行なっている。さらに,刑事訴訟法には,証拠開示の際に被害者の住居等が関係者に知られるこ とがないように求める制度,被害者について公開の法廷では氏名,住所その他被害 者が特定されることとなる事項を明らかにしない制度,証人への付添い,遮へい,ビデオリンク等の被害者等の保護のための措置が規定されており,児童が被害者である事件に関し,検察庁においてこれらの制度を適正に運用している。
197.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ39(b)) 証人が証人尋問の際に受け る精神的・心理的な負担を軽減するため,2000年の刑事訴訟法の一部改正により,一定の場合に証人の遮へい措置やビデオリンク方式による証人尋問ができることや, 証人尋問の際に証人が著しく不安又は緊張を覚える恐れがあると認めるときには適 切な者を証人に付き添わせることができることを定めた。また,2007年の刑事訴訟法等の改正により,一定の場合に被害者が刑事裁判に 参加することができる制度を導入し,翌2008年の犯罪被害者等の権利利益の保護 を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律等の改正により,その参加した場合における国選弁護制度が,2013年の法改正により,その参加した場合の旅費 等の支給制度を導入した。 2007年の刑事訴訟法等の改正により,裁判所は一定の場合に被害者等の申し出により被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる制度のほか,損害賠償命令制度と呼ばれる犯罪被害者等が民事に関する紛争を 刑事手続の成果を利用して簡易かつ迅速に解決する制度を導入した。 2016年の刑事訴訟法等の改正により,ビデオリンク方式による証人尋問を拡充するとともに,証人等の氏名及び住居の開示に係る措置及び公開の法廷における証 人等の氏名等の秘匿措置を導入した。
198.児童を含めた犯罪被害者等を保護するため,検察庁において,児童を含む犯 罪被害者等に対し,事件の処理結果や刑事裁判の結果等の情報を提供している。
199.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ39(c))別添2の児童売買等選択議定 書の広報・啓発活動及び研修の項を参照。
200.裁判官の研修を担当する司法研修所では,児童を含む犯罪被害者に対する配慮をテーマとする研修を実施し,裁判官の意識を高めている。
201.日本司法支援センターでは,犯罪被害者に対して,法制度の紹介や被害者が 必要とする支援を行っている関係機関・団体に関する情報提供,犯罪被害者支援に精通している弁護士の紹介を行っている。また,資力が乏しい者に対しては,民事法 律扶助として,無料法律相談による援助や,加害者に対する損害賠償請求をする際の弁護士費用等の立替えによる経済的援助を行っている。これらの援助は,児童買春等の被害児童も対象となる。なお,被害児童が弁護士費用等の立替えによる経済的援助を受ける場合には,原則として,法定代理人の同意が必要である。
202.第3回児童の性的搾取に反対する世界会議(2008年,リオデジャネイロ)に, 外務大臣政務官が出席し,児童の性的搾取の解決に向けた国際社会全体の取組みの重要性を強調。
203.我が国は,2015年10月に,児童売買・児童買春・児童ポルノ特別報告者の訪日調査を受入れた。
204.(児童売買議定書・最終見解パラグラフ27(a),43)我が国は,米国,韓国, 中国,香港,EU及びロシア連邦との間で刑事共助条約又は協定を締結しており,これらの条約又は協定に基づき,又はこれら以外の国との間では,相互主義の保証の下,国際礼譲に基づき,児童の売買,児童買春及び児童ポルノを含む犯罪について捜査共助を実施することとしている。
205.2014年,UNICEFを経由したプロジェクト「中央アフリカにおける現在の人道危機による被害を受けた脆弱な5歳以下の子どもと女性への緊急支援(180万米ド ル)」の実施により,2013年末にクーデターが発生した中央アフリカにおいて,性暴力抑止等のキャンペーンを実施。
11.武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書 のフォローアップ