▼ 避難者を見捨てない
鎌田 慧(ルポライター)

 東電福島の大事故からもう六年になろうとしている。「風化」がいわれたりしているが、そんなことはない。むしろ、すべての分野で、原発はもうだめだ、との声が強まっている。
 電力会社は政府に後押しされ、火事場泥棒のように隙をついて再稼働を強行し、もうけにありつこうとする。

 被災者は時間がたつにつれてますます生活困窮を深めている。
 戦争責任を誰も取らなかった退廃のように、いまも政界、財界は事故に頬かぶり。またもや危険な原発を動かそうと策謀する。
 この六年間、わたしたちは脱原発と、再稼働を認めない「さようなら原発」の運動を続けてきた。
 が、落ち着かない気持ちもあった。


 被災者をどうするのか。原発の犠牲になったひとびとを忘れているわけではない。
 集会にもきて頂いた。しかし、そのひとたちに寄り添うようにはしてこなかった、との思いがあった。

 わたしたち「さようなら原発」運動は、二月二日、福島市にでかけ、内堀雅雄知事に、「区域外避難者の住宅無償提供継続を求めます」とする要望書を提出した。
 三月末で「自主避難者」と呼ばれるひとたちへの住宅提供が非情にも打ち切られようとしている

 避難者に「強制」も「自主」もない。
 被ばくを恐れ、子どもたちを抱えて故郷を立ち去ったひとたちを、見殺しにできない。

『東京新聞』(2017年2月7日【本音のコラム】)