安倍晋三 内閣総理大臣
岸田文雄 外務大臣
金田勝年 法務大臣
2016年12月7日
国連経済社会理事会特別協議資格NGO
言論・表現の自由を守る会
人間の安全保障と防災の主流化の実現には、個人通報制度の批准が不可欠です。
直ちに、市民的政治的権利に関する国際規約、こどもの権利条約、拷問等禁止条約等日本が批准している人権条約に備わっているすべての個人通報制度批准することを閣議決定し、速やかに個人通報制度を批准するよう要請します。
国際連合は、我らの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念」(国際連合憲章前文)に基づいて1945年に設立されました。しかし、第二次世界大戦の侵略国であるアジアに位置する日本は、国連創設後1956年12月18日まで11年間、国連加盟を承認されず今月12月18日、ようやく国連加盟60周年を迎えます。
国連では、人権問題への取り組みを強化し人権の主流化を実現するために2006年3月15日人権理事会を創設しており、今年10周年を迎えました。
人権理事会は国連総会直接の下部機関として設置され、その画期的中核的な取り組みは、各国の人権状況の普遍的・定期的な審査であり、理事国は優先的に、その任期中に審査を受けなければなりません。
記念すべき10周年を迎えた人権理事会において、日本政府はこの7月、理事国選挙に立候補し、当選し、来年の元旦から3年間、4期目のアジア選出の人権理事国となり、来年11月には人権理事国として3回目の定期的普遍的日本審査を予定しています。
この審査は、国連加盟国193カ国のすべての人権状況を、各加盟国が人権条約を批准している・いないにかかわらず、定期的(現在は、1クール:4年半)に4カ国ずつ、お互いがお互いを審査し勧告するもので、政府は、2016年人権理事会理事国選挙における日本の自発的誓約において「2016年に自発的に中間フォローアップ文書を公表する」と表明しています。
ぜひ、その中間フォローアップ文書に「個人通報制度批准を閣議決定した」と報告すべく、日本政府が直ちに個人通報制度批准を閣議決定し、人間の安全保障の実現に足を踏みだすよう要請します。
当会は2007年以降毎年、個人通報制度批准を求め、総理大臣、外務大臣、法務大臣をはじめ各省庁要請を繰り返し、日弁連のシンポジウム開催とその成功に協力し、今年5月には日弁連主催の「市民集会(「今こそ、個人通報制度の実現を!大集会―個人通報で何ができる?何が変わる?」)を実現することができ、現在地方弁護士会にも国際人権規約をはじめとする人権条約の活用と個人通報制度即時批准を実現 する取り組みを広げています。
同時に、2008年第7回期人権理事会に初回レポートを提出し、繰り返し人権理事会や自由権規約委員会、社会権規約委員会、こどもの権利委員会、拷問禁止委員会等国連人権条約機関に日本の人権問題の情報を提供し、「言論・表現の自由に関する特別報告者」による日本調査の実現を求め、繰り返し発言・要請するとともに第2回UPR日本審査が行われた人権理事会の2つの会期(/)でもサイドイベントを2度開催し、ようやく今年4月、日本政府の協力を得てデイビット・ケイ氏の来日調査と当会の情報提供が実現しました。
国際人権規約「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(A規約/社会権規約)「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約/自由権規約)「市民的及び政治的権利に関する国際規約の選択議定書」(自由権規約第1選択議定書)は、1966年12月16日、第21回国連総会で採択され、1976年に発効しています。
日本政府は1979年、社会権規約と自由権規約を批准し、その際、衆参両外務委員会において全会派一致で『自由権規約第1選択議定書(個人通報制度)も早期に批准する』と決議しています。しかし、37年を経た現在、まだ批准していません。
日本政府はこれまでに、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、こどもの権利条約武力紛争におけるこどもの権利条約に関するこどもの権利条約選択議定書、障害者権利条約等、人権条約を批准し、当該人権条約機関や人権理事会に報告書を提出し審査を受けていますが、これらの人権条約に備わっているいずれの個人通報制度も、ひとつも批准していません。
第二次世界大戦の侵略国であり、来月から4回目の人権理事国となる日本政府が、今、最優先で取り組まなければならない課題は、日本が批准済みの人権条約に備わっている個人通報制度を批准し、アジアに位置する日本において法の支配を実現することであり、そのためにただちに個人通報制度批准を閣議決定することが不可欠です。
安倍総理大臣、岸田外務大臣、金田法務大臣におかれましては37年前に、みなさんが所属している自由民主党政権下の国会での決議であっても、同じ政権下において国民に約束した国会の宿題を、時間がかかっても必ずやり終えることが不可欠であるということを、自らの行動によってこどもたちに手本を示してください。
そして、こどもたちに、こどもの権利条約をはじめとする人権条約と日本政府に対して出されているすべての勧告等の邦訳を、「児童の」ではなく「こどもの権利条約」と正しい日本語で翻訳し、その「こどもの権利条約」と「武力紛争におけるこどもの関与に関するこどもの権利に関する条約の選択議定書」、及び「児童の売買・児童買春及び児童ポルノに関するこどもの権利に関する条約の選択議定書」の3つの条約とそれらに関する3つの勧告(2010年)のパンフレットを大至急作成し、すべての18歳以下のこどもたち及び保護者・NGO・市民団体と自衛隊員及び公務員にただちに普及してください。
あわせて、現在もなお安保理決議第1325号については、政府による日本語訳が存在していません。大至急、総理大臣の責任において安保理決議第1325号を日本語に翻訳し、可及的速やかに安保理決議1325号決議の日本語訳と国内行動計画のパンフレットを作成し、すべての福島の避難者のみなさん・東日本大震災・熊本地震・鳥取地震、常総市・噴火・台風・自然災害等の全災害被災者とすべてのこどもと女性と障害者及び高齢者と全ての日本の市民・NGO・公務員等に、配布してください。
IT弱者であり、経済弱者の女性には、パンフレットやリーフレットが命です。停電や災害時にはパソコンもインターネットも使えません。紙媒体での普及を優先してください。外務省のホームページの人権条約に関するページは、とてもわかりにくくアクセスしにくいため、人権条約を網羅し、こどもと女性にもアクセスしやすくわかりやすいホームページ作成をお願いします。
人間の安全保障と防災の主流化を実現するために活用させていただきます。
以上