豊洲市場:設計時、盛り土なし…都、変更諮らず
東京都の築地市場(中央区)からの移転が延期された豊洲市場(江東区)で土壌汚染対策の盛り土が主要建物下で行われていなかった問題で、都が遅くとも2013年12月までに、建物下が空洞になった豊洲市場の建設設計図を作製していたことが分かった。共産党都議団が入手した都の内部資料で判明した。
この時点では土壌汚染対策の工法を検討する外部有識者の「技術会議」が開かれていたが、議事録に設計図が提示された記録はなく、妥当性が議論されなかった。都が専門家の意見を考慮せず、独断で工法を変えていた実態が浮き彫りになった。
内部資料にあった設計図は「平成25年(13年)12月」の記載があり、建物を横から見た形で描かれ、建物の床下が空洞になっていることが確認できる。
豊洲市場の土壌汚染対策は07年5月〜08年7月、外部有識者の「専門家会議」で検討され、都に対し市場敷地内で盛り土をするよう提言が出された。これを受け都は08年8月〜14年11月、外部識者が土壌汚染対策工事の工法を検討する技術会議を設置した。
技術会議の議事録によると工法は公募され、地表から深さ2メートルを掘削して厚さ50センチの砕石層を敷き、その上に高さ4.5メートルの盛り土をすることが決まった。
対策工事は水産卸売場棟、水産仲卸売場棟、青果棟とも11年8月に契約が結ばれ、技術会議の14年2月の第17回会合から同年11月の最終18回会合にかけて全工程の完了が報告された。
地下の状況
2回の会議に提出された資料には平面図が添付され、建物内は地下2メートルまで掘削されたことを示す「A.P.+2.0メートル」、建物外は4.5メートルの盛り土がされたことを示す「A.P.+6.5メートル」の表記がある。ただ盛り土の有無は判断しにくく、議事録でも都から建物内に盛り土がされていないとの説明はなかった。
都の担当者は設計図を技術会議に提示しなかったことを認め「なぜ見せなかったのか調べているが、建築専門家の間では構造物を造る際にはメンテナンスなどのために地下に空洞を設けるというのは常識と捉えていたようだ」と話した。技術会議に諮らず設計したことについては「あくまで土壌汚染対策の工法を検討する場であり、建築方法を示すことは求めていなかった」と説明した。
毎日新聞 9月12日(月)
<豊洲盛り土問題>青果棟下、砕石層むき出し
東京都の築地市場(中央区)からの移転が延期されている豊洲市場(江東区)の主要な建物下で土壌汚染対策の盛り土がされていなかった問題で、青果棟の下では厚さ50センチの砕石層がむき出しになっていることが都への取材で分かった。外部識者の専門家会議が提言した盛り土は、地中から揮発したベンゼンが地表に出ない効果があるとされ、専門家は「安全性について改めて確認する必要がある」と指摘している。
都によると、水産卸売場棟と水産仲卸売場棟には、石を砕いて設けた砕石層の上に厚さ約10センチのコンクリートが敷かれている。しかし、目的は配管や電設工事施工の足場にするためで、上がってくる地下水を防ぐことは想定していないという。鉄筋などは入っておらず、都担当者は「コンクリートを流し込んで固めただけというイメージ」と話す。
これに対し青果棟は、このコンクリートすら敷かれていなかった。都は「砕石層によって地下水が上がってくることを防げる」としているが、豊洲市場の建物下を視察した共産党都議団に対しては「今後、青果棟の砕石層もコンクリートで覆う」と説明したという。
2007~08年に開かれた土壌汚染対策に関する専門家会議で座長を務めた平田健正・放送大学和歌山学習センター所長によると、ベンゼンは揮発性のため盛り土の有無で拡散の方向や広さが変わってくる。専門家会議は盛り土をした前提で汚染対策を検討しており、平田氏は「どのくらいの濃度のものが上がってくるか、もう一度改めて計算する必要がある」と指摘した。
都によると、土壌汚染対策法では有害物質が屋内に入るのを防ぐには、床を厚さ10センチ以上のコンクリート製にすればよいとされる。主要な建物の床はいずれも厚さ35~45センチのコンクリート製だが、都の担当者は「専門家から盛り土がなくても大丈夫だというお墨付きをもらっていないという事実は重い。安全性を改めて確認しなければならない」と、これまでの認識の甘さを認めた。
また、都が遅くとも13年12月までに建物下が空洞になった建設設計図を作製していたことも分かった。この時点では土壌汚染対策の工法を検討する「技術会議」が開かれていたが、議事録に設計図が提示された記録はなく、妥当性は議論されなかった。
都によると、水産卸売場棟と水産仲卸売場棟には、石を砕いて設けた砕石層の上に厚さ約10センチのコンクリートが敷かれている。しかし、目的は配管や電設工事施工の足場にするためで、上がってくる地下水を防ぐことは想定していないという。鉄筋などは入っておらず、都担当者は「コンクリートを流し込んで固めただけというイメージ」と話す。
これに対し青果棟は、このコンクリートすら敷かれていなかった。都は「砕石層によって地下水が上がってくることを防げる」としているが、豊洲市場の建物下を視察した共産党都議団に対しては「今後、青果棟の砕石層もコンクリートで覆う」と説明したという。
2007~08年に開かれた土壌汚染対策に関する専門家会議で座長を務めた平田健正・放送大学和歌山学習センター所長によると、ベンゼンは揮発性のため盛り土の有無で拡散の方向や広さが変わってくる。専門家会議は盛り土をした前提で汚染対策を検討しており、平田氏は「どのくらいの濃度のものが上がってくるか、もう一度改めて計算する必要がある」と指摘した。
都によると、土壌汚染対策法では有害物質が屋内に入るのを防ぐには、床を厚さ10センチ以上のコンクリート製にすればよいとされる。主要な建物の床はいずれも厚さ35~45センチのコンクリート製だが、都の担当者は「専門家から盛り土がなくても大丈夫だというお墨付きをもらっていないという事実は重い。安全性を改めて確認しなければならない」と、これまでの認識の甘さを認めた。
また、都が遅くとも13年12月までに建物下が空洞になった建設設計図を作製していたことも分かった。この時点では土壌汚染対策の工法を検討する「技術会議」が開かれていたが、議事録に設計図が提示された記録はなく、妥当性は議論されなかった。
[図]会見で説明された土壌汚染対策と盛り土の概念図 THE PAGE 9月10日(土)
「間違った情報を公開してきたことは、都政への信頼回復に逆行する。全都庁の職員に粛正していきたい」
小池百合子都知事は10日、緊急会見を開いて、築地市場(東京都中央区)の移転先である豊洲市場(江東区)の各市場棟の床下で、土壌汚染対策のはずの高さ4・5メートルの盛り土が行われておらず、空洞になっていたことを明らかにした。
都民との約束破って盛り土せず
都はこれまで、汚染した土壌を入れ替えたうえ、すべての敷地で高さ4・5メートルの盛り土をすると説明してきた。
都の中央卸売市場が2009年2月に発行した『疑問解消BOOK』の中でも、専門家会議(座長・平田建正和歌山大学システム工学部教授=現在、放送大学和歌山学習センター所長)が08年に提言した土壌汚染対策に基づいて、市場建物の下を含む豊洲用地で、
<ガス工場操業時の地面の下2mを掘り、きれいな土と入れ替えます>
<その上に厚さ2・5mのきれいな土壌を盛ります>
といった対策を行うことで、
<食の安全・安心を十分確保していくことができます>
などとうたっていた。
しかし、その建物の下の盛り土が行われず、空洞になっていたということは、都が都民や市場の業者との約束を破ったばかりか、そもそもの土壌汚染対策の大前提が崩れたことになる。
小池知事は「間違った情報だったので、訂正させて頂きたい」と謝罪したうえで、こう言及した。
「建物の下の土壌の安全性に問題があるのではないか。消費者や現場で働く方々が安心できるのか、改めて確認したい」
858億円かけて、なぜ空洞?
また、土壌汚染対策を提言した専門家会議が、こうした建物の地下の安全性を確認する前に解散してしまったのは行政的な問題があると指摘している。
「専門家会議の平田座長も、全然違う前提でフタをしている状況については、ご存じないのではないか?」
そう疑問を投げかけた小池知事は、土壌汚染対策に858億円も投じながら、なぜ盛り土をせずに建物の下が空洞になっていたのか、都の担当職員が情報を正しく伝えていたのかについても、今後、専門家会議の平田座長らに対策の大前提が守られなかったことへの確認を求めるとともに、新しく土壌や建築などの専門家でつくるプロジェクトチーム(PT=座長・小島敏郎青山学院大学国際政治経済学部教授)をスタートさせて、検証していく考えを明らかにした。
さらに、床下に土がぎっしり詰まっている状態に比べて空洞の場合、建物の耐震上の問題はどうなのか、費用に含まれているはずの盛り土代がどこかに消えているのかどうかについても、小島PTのほうで調査していく方針だ。
これに先立って、日本共産党都議会議員団は、7日に豊洲の施設を視察。水産卸売り場棟の地下に降りてドアを開けたところ、高さ5メートルほどの地下空間になっていて、底面には深さ1センチ余りの地下水とみられる水もたまっていたという。
大山とも子・日本共産党都議団幹事長は、こう説明する。
「水たまりがどのくらいの深さなのか、何も道具がなかったので指を入れてみたんです。すると、人差し指の爪くらいの深さでした。物差しで測ると1・2センチくらい。どうして水がたまったのか、都の随行職員に聞くと、地下水管理システムはまだ稼働してないので、地下水だろうとのことでした。ところが、本庁に聞くと、地下水システムはすでに稼働していると言われました。それなのに水たまりがあるということは、もっと問題です」
計算をすべてやり直さなければいけない
床下の空間に地下水が沁み出しているのだとすれば、地下水の管理ができていない可能性もある。
当時の専門家会議座長で、土壌汚染の専門家でもある平田・放送大学和歌山学習センター所長は、筆者の取材に応じ、こう語る。
「ますは、なぜこういうことになったのか、説明を求めたい。次に、盛り土の前提が消えているので、改めて、どのくらい有害物質のガスが上がりやすくなるのか、空洞の中がどのようなガス濃度になっていくのか、計算をすべてやり直さなければいけない」
地下空間の底面にたまる謎の水については、こう指摘する。
「外の地下水位が底面よりも高いか低いかで、地下水なのか雨水が入ったのかを判断しなければいけない。底面よりも高いのであれば、地下水が中に入ってきた可能性もある。また、ベンゼンやシアンなどの有害物質だけでなく、一般的水質の調べる必要がある。ただ、ベンゼンなどは揮発して飛んでるかもしれない」
長年、豊洲市場用地の土壌汚染問題を調べている日本環境学会の畑昭郎元会長は、「盛り土が入っていれば、ベンゼンなどのガスは上に行きにくくなるのに、空洞にした理由がよくわからない。また、建物は雨漏りでもしない限り雨水を排除する一方、横の壁が分厚く、床が薄い捨コンだと水を通すので、下から地下水が湧き出していると見たほうがいい」と話す。
他にも、都の発注した指定調査機関が、専門家会議の概況調査でベンゼンが検出された300区画以上にわたって帯水層の底面調査を行わず、汚染区域の指定から外されていた問題も最近、明らかになっている。
専門家会議の平田座長は、300カ所以上の未調査区域]があることについて「現段階ではノーコメント」としながら、「適正に調査が行われたのかどうか」を確認したいという。
小池知事は、10日の会見の中で「あのまま移転を認めていたら、大変な問題になっていた。予断を持たずに、いろんなケースを考えていきたい」として、移転を止める可能性についても否定しなかった。