2015年3月12日 西日本新聞
福島で育児 半数「不安」「できるなら避難」24%
東京電力福島第一原発事故を受け、福島県内の避難指示区域外で子育てをしている親の半数以上が地元での育児に不安を感じ、4人に1人が避難を望んでいることが、成元哲中京大教授や牛島佳代福岡大講師らのグループの調査で分かった。事故の影響が今なお深刻なことを浮き彫りにした。調査グループは「事故の影響は続いており、長期的な支援が必要だ」と指摘している。
調査は、原発事故の避難指示区域に近い福島県中通り地方の9市町村で、震災時に1?2歳だった子を育てる母親などの保護者を対象に2013年から毎年、アンケートで健康や生活状態を尋ねてきた。
今年1月に配布したアンケートには4日現在、1184人が回答を寄せた。それによると、「放射能の健康影響についての不安が大きい」との質問に「あてはまる」「どちらかと言えばあてはまる」との回答が6割近くを占め、「福島で子どもを育てることに不安を感じる」も5割を超えた。「できることなら避難したい」は24.6%に上った。
情報の信頼性への疑念も強く、「放射能に関してどの情報が正しいのか分からない」が7割、「いじめや差別を受ける不安を感じる」も、5割超に達した。
一方、「地元産の食材は使わない」が3割近くあった。事故直後の約9割から減ったものの、少しでもリスクを回避したいとの思いは根強い。そうした対応は家計の圧迫にもつながっており、6割が「事故後、何かと出費が増え、経済的負担を感じる」と回答した。
調査グループは「地元産以外の食材使用や避難などの対策には費用がかかり、収入が低いほど負担が大きい。リスクへの対処がさらなるストレスにつながっている」と分析する。
成教授は「被災地の親が今も苦しんでいるという事実を社会全体で共有し、実効性のある対策につなげていくべきだ」と強調し、今後も調査を続ける方針だ。