東京新聞 2014年9月10日 朝刊
TPP旅費3億5000万円 頻繁に会合 妥結見えず膨張
環太平洋連携協定(TPP)交渉会合に参加した国家公務員の海外出張旅費が2013年度、少なくとも3億5000万円にのぼったことが、本紙が求めた主要4府省への情報開示で判明した。TPPは、職員を大量派遣する大規模会合が絶え間なく開かれたが、妥結時期は現在でも見通せない状況。総額は大きく膨らむことになる。 (吉田通夫)
長期にわたる多国間の経済交渉などで、公務員の出張旅費の状況が明らかになったのは初めて。政府も集計したことはなかった。
年間三億円を超えたことに対し政府関係者は「頻繁に大規模会合が開かれたことで、従来よりも多額に上った」と説明。交渉団幹部は「従来の交渉に比べ、TPP交渉は派遣人数が圧倒的に多い」と話した。
情報開示は、交渉団の大半を占める内閣府TPP政府対策本部、外務省、農林水産省、経済産業省の四府省に対して請求。閣僚会合や首席交渉官会合、中間会合などのため、一三年度に出張した職員の旅費について求めた。その結果、日本が初参加した昨年七月の会合から今年三月末までの八カ月間の旅費精算書六百一件が開示された。合計額は航空運賃と宿泊費を中心に計三億五千八百万円だった。一二年に納税者が納めた所得税は一人当たり七十八万円なので、約四百六十人分に当たる。
多国間交渉は、事務レベルで水面下の交渉を重ね、節目で閣僚などが参加する大規模会合を開くのが一般的だ。しかしTPPは米国の要望で、毎月のように大規模会合を開催。そのたびに日本は、米国に次ぐ規模となる数十人から百人超の交渉団を派遣していた。
TPPには四府省のほかにも、国土交通省や金融庁なども少人数ながら職員を派遣している。
◆規定超す額 支給認める
八カ月間で三億五千万円を超えたTPP交渉のための出張旅費。膨らんだ背景には「担当大臣との同行」を理由に、規定の上限を上回る高級ホテルへの宿泊が相次いで認められていたこともある。
旅費法では、海外出張の際の航空運賃は課長以上がビジネス、大臣や次官、大臣警護官はファーストクラスを利用できる。宿泊費や日当も階級に応じて支給され、大臣の宿泊費は地域によって三万二千二百~一万九千三百円、審議官以上の幹部職員は二万五千七百~一万五千五百円などとなっている。
しかし上限を上回った場合でも、財務省と協議して認められる「増額調整」という手続きがある。特に「体面上、大臣は高級ホテルに宿泊する」(政府関係者)ため、同行職員も打ち合わせなどの便宜上、同じ高級ホテルに泊まるのが通例だ。このため甘利(あまり)明TPP担当相が出張した会合では、ほとんどが上限を大幅に超過。調整額は三十万円近くになった例もあった。
また一回の旅費が二百万円を超えたのは四件。最高は今年三月、オランダと米国の二カ国に出張した農水省幹部の二百八十三万円だった。甘利氏の旅費八十四万~百六十三万円を大きく上回った。