JRFS 子どもの権利条約個人通報制度批准の即時閣議決定求め外務省要請
 
 
   来月7月7日から国連(ジュネーブ)で第111回期自由権規約委員会が始まり、15日・16日に第6回日本政府報告書審査が行われます。
 この審査に先立ち本日6日、日本の人権鎖国の重い歴史の扉を開けるべく言論・表現の自由を守る会垣内つね子事務局長と日の丸君が代裁判の原告・会員および市民らが外務省要請を行い、岸田文雄外務大臣あての要請書を山中修人権人道課長に手渡して要請しました。
 

外務大臣 岸田文雄 様
2014年6月6日
言論・表現の自由を守る会
Japanese Association for the Right to Freedom of Speech (JRFS)
 NGO in Special Consultative Status with the ECOSOC

◎ 子どもの権利条約第3選択議定書(個人通報制度)の批准をただちに閣議決定し、
自由権規約第1選択議定書(個人通報制度)の即時批准を求める要請書



 1、子どもの権利条約第3選択議定書批准をただちに閣議決定し、自由権規約第1選択議定書(個人通報制度)も今国会でただちに批准することを求めます。

 2、拷問等禁止条約の個人通報制度批准もすみやかに閣議決定し、女性差別撤廃条約を初め個人通報制度が備わっている日本政府が批准済みの全ての人権条約の個人通報制度批准を求めます。

 先月開催された東京電力福島第1原発の核惨害による健康影響を調べている福島県の「県民健康調査」の検討会で、甲状腺がんが悪性と診断された子どもが、疑い例も含め89人になったと報告されました。
今回、公表されたのは3月31日までのデータで、原発事故当時18歳以下だった約29万人が検査対象です。
 福島県内での甲状腺検査の結果、1月から3月までの3ヶ月間に新たに甲状腺がんの手術を終え、甲状腺がんと確定されたのは17人で合計50人、疑いの39人を合わせると89人です。

 しかし、この健康調査に対象には県外に避難した子どもや、福島県以外の汚染地域に住んでいるこどもたちの調査は行われていません。この報告からだけでも、放射線の影響を受けやすいこどもたちに甚大な健康被害が及んでいることが明らかです。
 子どもたちの命と健康を守るために、抜本的政策転換が求められています。

 日本政府が、個人通報制度批准を躊躇している余裕はありません。1979年に、当時自民党内閣の国会において自由権規約と社会権規約を批准した際に、自由権規約の第1選択議定書(個人通報制度)も早期に批准することを全会派一致で決議しています。もう35年もたっています。
 この間に、国連では人権尊重の流れが確実に強まり、2006年にそれまでの人権委員会が人権理事会に昇格し、2008年には画期的なUPR審査もスタートしすでに2クール目の審査が行われています。

 日本政府は昨年元旦から3期目の国連人権理事国です。二度目のUPR日本審査の際、オーストリア政府が個人通報制度の批准を勧告しました。第二次世界大戦の侵略国として人道の罪を犯した日本政府は、第22回期人権理事会で受け入れを表明した勧告をはじめ各人権条約機関から勧告されている課題を誠実に実施して、アジア、とりわけ東アジアにおいて人権問題をリードする立場にあります。個人通報制度の批准をこそ三度人権理事国となった日本政府が、いの一番に取り組まなければならない仕事です。

 2010年に外務省人権人道課の中に個人通報制度を批准すべく条約履行室が設置され、もう4年も経過しています。職員のみなさんも個人通報制度の批准を心待ちにしていることと存じます。今年に入り、障害者権利条約の批准手続きも終え、4月にはハーグ条約が発効し、さらに安保理決議第1325号の国内行動計画策定に向けて人権人道課内に女性参画推進室も設置されました。

 2012年12月の国連総会では日本も提案となって、子どもの権利条約の個人通報制度が制定され、今年1月に批准国が10か国になったため、その3か月後である4月14日に国連で発効しています。
 この子どもの権利条約の個人通報制度は日本では、閣議決定で批准できるのですから、全ての課題に最優先で、直ちに子どもの権利条約の第3選択議定書(個人通報制度)批准を閣議決定するよう求めます。
                                                                                                                              以上 
 
 
             
外務大臣 岸田文雄 様
2014年6月6日
言論・表現の自由を守る会

◎ 教育現場から自由権規約個人通報制度の即時批准を求める要請書

 東京都教育委員会は、卒・入学式の国歌斉唱時に起立・斉唱・伴奏せよとの「職務命令」を校長を通して発令させ、従わなかった教職員を懲戒処分してきました。2003年以降、その数は460人を超えます。

 2012年最高裁は、「起立斉唱命令」は「敬意の表明の要素を含む」から人権への「間接的制約」にあたるものの「必要性・合理性」があるから「思想・良心の自由」(憲法19条)に違反しないとしつつも、減給以上の累積加重処分については裁量権の範囲の逸脱濫用であるとして取り消しを命ずる判決を示しました。
 しかし、これで審理が尽くされたとは言えません。最高裁はわが国が批准している自由権規約18条(思想・良心・宗教の自由)第3項に触れていません


 確定版『一般的意見34』(2011/7/21)パラグラフ38には、規約19条(意見と表現の自由)3項に関して、公権力による人権制約が許されない具体例として「旗とシンボルへの不敬」の文言が追加されましたが、このことも見逃しています。

 また、自由権規約第6回日本政府審査に対する政府報告の中では、板橋高校卒業式事件の最高裁判例が「公共の福祉」名目で人権制約を正当化する事例として引用されていますが、逆にこれこそ国連から繰り返し指摘されてきた「公共の福祉」誤用の典型例であって、勧告の無理解と言わざるを得ません。

 「10・23通達」以降、学校では「日の丸・君が代」不可侵であるかの如く、上意下達の画一的一方的な命令体制が、卒業式だけではなく日常の教育活動のあらゆるところに貫徹し始め、それは必然的に子どもの世界にも、多様な価値観を認めず個性に応じた弾力的な教育を許さない画一的教育をもたらし、息苦しい雰囲気が広まりつつあります。この事態は、生徒一人一人の人格の完成を目指して行われるべき教育権の国際標準を定めた、世界人権宣言26条(教育への権利)をはじめとする国際規約に反しています。
 わが国は、素晴らしい国際人権条約を批准しており、その国際水準の人権が学校でも保障されるよう、自由権規約第1選択議定書の即時批准の実現を、教育現場から強く訴えます。

要請内容

 第6回審査を前に、前回の『総括所見』を踏まえ、締約国の義務として以下を実行されるよう要請します。

 1,第5回審査の『総括所見』パラグラフ8の勧告を受け容れ、「第1選択議定書」を即時批准すること。

 2,同じく『総括所見』パラグラフ7の勧告を受け容れ、法曹関係者の専門的教育に規約の適用と解釈を組み込むことによって、規約が裁判規範として直接適用されるよう、法務省とも連携して取り組むこと。

 3,同じく『総括所見』パラグラフ10の勧告を受け容れ、規約で許容される制約を超える制約が課されることのないよう、「公共の福祉」について規約19条3項に合致する定義と立法をなすこと。

 4,『規約』第18条および『一般的意見34』パラ38を尊重し、地方自治体を含む国全体において、公立学校における卒業式や入学式などの学校行事において「国旗・国歌」が何人にも強制されないよう、文科省とも連携して十全な措置をとること。

 5,学校の中で、子どもたちにも教職員にも、国際標準の人権が保障されるよう、文科省とも連携して政府一丸となって、国際人権教育を推進し、その普及定着を図ること。