11月9日、第53回放送フォーラムで発表した放送を語る会の見解
特定秘密保護法案に反対し、テレビ報道の現状を問う
2013年11月9日 放送を語る会
安倍政権は特定秘密保護法案を臨時国会に提出、7日には衆議院で審議入り、早期成立を急ぎ緊迫した事態になっている。
法案によれば、「秘密指定」は「行政機関の長が行い」(第3条)、「5年の有効期間」(第4条)は事実上無制限に延長できる。原発・オスプレイ・TPPなど市民生活に直結する情報も「秘密」に指定されかねず、政府の恣意的情報隠し、国民の「知る権利」侵害が危惧される。膨大な軍事機密が国民の目から隠された戦前の暗黒社会の再来を思い起こさせる。
「秘密」を漏らした者にも聞き出した者にも「懲役10年」(第22条)の重罰が課され、処罰対象は未遂(第22条3)・共謀・教唆・扇動(第24条)にまで拡げられる。情報提供者ばかりでなく報道機関、ジャーナリスト、市民活動家などにも強い萎縮効果をもたらし、「取材・報道の自由」が侵害されることは明らかである。
法文の解釈適用にあたり、「知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分配慮」(第21条)の条項が付け加えられたが実質的な意味を持たないことは言うまでもない。
私たちは、民主主義を危うくする特定秘密保護法案に強く反対する。
メディアとりわけテレビの「特定秘密保護法案」報道の現状はどうか。
メディア自身の「取材・報道の自由」に重大な影響があるにもかかわらず、ニュース、報道番組で取り上げられることは極めて少なかった。法案準備は参院選直後から始まっていたが臨時国会以前の報道は皆無に近かった。テレビメディアの法案に対する危機意識は極めて弱かったと言わねばならない。
国会開会、法案提出により番組・ニュースでも取り上げられるようになったが、事態の
重大さに比べれば今も報道量は圧倒的に不足している。「報道ステーション」(テレビ朝日)
など一部の番組の健闘を除き、問題点の掘り下げ、識者・専門家などの異なる見解、批判
的視点の提示も不十分である。一部のニュースでは、客観報道・事実報道に名を借りて政
権の動きや主張を無批判に大量に垂れ流し、結果としてテレビ版政府広報の様相を呈して
いる。
しかし、放送には、「健全な民主主義の発達に資する」(放送法1条)、「意見が対立して
いる問題については、できるだけ多くの論点を明らかにする」(放送法3条2項)という重
要な任務が課されているはずである。
安倍政権が強行成立をめざす切迫した事態のもと、テレビ報道には、政局報道に陥らず
「特定秘密保護法案」の危険な本質を掘り下げた調査報道、在野の識者・専門家の批判的見解、市民の動きにも目を向けた質・量ともに豊富な多角的報道を強く求める。