社会権規約委員会は、4月30日の第3回日本政府報告書審査をふまえ、日本において、スティグマ(個人に非常な不名誉や屈辱を引き起こすもの)のために高齢者が生活保護の申請を抑制されていることをとりわけ懸念していると表明した上で、生活保護の申請手続を簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとり、締約国が生活保護につきまとうスティグマを解消する目的で住民を教育するよう求め下記パラグラフ22を勧告しました。
高橋ちづこ衆議院議員が、この勧告を指摘して反対しています。
社会権規約 第3回日本政府報告書審査 勧告 抜粋 2013年5月17日
パラグラフ22.
委員会は、締約国の高齢者、とくに無年金高齢者および低年金者の間で貧困が生じていることを懸念する。委員会は、貧困が、年金拠出期間が受給資格基準に達していない高齢女性に主として影響を与えていること、および、スティグマのために高齢者が生活保護の申請を抑制されていることをとりわけ懸念する。
委員会はさらに、「国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律」で導入された改正により、多くの高齢者が無年金のままとなることを懸念する。(第9条)
委員会は、国民年金制度に最低年金保障を導入するよう締約国に対して求めた前回の勧告をあらためて繰り返す。
委員会はまた、生活保護の申請手続を簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるよう、締約国に対して求める。
委員会はまた、生活保護につきまとうスティグマを解消する目的で、締約国が住民の教育を行なうよう勧告する。
委員会は、締約国が、性別、収入源および所得水準によって細分化された高齢者(被爆者を含む)の状況に関する情報を、次回の定期報告書で提供するよう要請する。
委員会は、高齢者の経済的、社会的および文化的権利に関する一般的意見6号(1995年)および社会保障についての権利に関する一般的意見19号(2008年)を参照するよう、締約国に対して求める。
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
衆院厚生労働委員会2013年5月31
生活保護法一部「改正案」などに対する
高橋議員の反対討論
◇
日本共産党の高橋ちづ子議員が5月31日の衆院厚生労働委員会で行った、生活保護法の一部改正案と生活困窮者自立支援法案に対する反対討論は次のとおりです。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-05/2013060504_02_1.jpg (写真)高橋ちづ子議員=5月31日、衆院厚生労働委
|
最後のセーフティーネットとされる生活保護に関わる重要な法案を、十分な審議も行わないまま、採決することに反対です。子どもの貧困対策はもちろん賛成ですし、それ自体十分な審議をするべきです。まして、本日午前、参考人からの意見を受けながら、午後には採決するというのはあまりに不誠実な対応であり、強く抗議をしたいと思います。
生活保護法は「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き」とうたっており、「保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と明記されています。この基本理念ならびに制度の根幹である「無差別平等の原則」「必要即応の原則」もいささかも揺るがないことは審議の中でも確認されました。字面では何ら変えていないのに、中身はこの基本理念、原則を侵すものとなっていることに怒りを禁じえません。
以下法案に反対する主な理由を述べます。
まず指摘しなければならないのは、保護の申請を、申請書の提出が必要な行為と義務付けた新たな規定を設けたことです。現在でも、窓口で申請意思を示しても申請書を渡さない、あれこれと条件をつけてなかなか受理しない、といった水際作戦が行われています。時にそれが悲惨な結果を生み、申請権を侵害する違法な行為として裁判でも弾劾されてきたものです。今回の改正はこのような水際作戦を合法化するものであり、許されません。4会派提出の修正案もその本質を変えるものではありません。
つぎに、福祉事務所の扶養義務者に対する調査権限の付与、また義務を果たしていないと判断した場合の扶養義務者に対する通知の義務づけは、保護開始の要件とされていない扶養義務の履行を事実上強いるものになります。親族間に不要なあつれきを生じさせ、親族に知られたくないからと、生活保護を受けることを断念させることにつながりかねません。
なお、不正受給は厳正に対処していくことは当然ですが、不正受給とされる事案のほとんどは、アルバイト代の収入の申請漏れなどささいなミスによるものです。生活保護費との相殺や不正徴収金の懲罰的上乗せは、行うべきではありません。
生活困窮者自立支援法は、生活保護の見直しならびに扶助基準の大幅引き下げと一体のものとして提出されました。生活保護基準を下回る仕事でも「とりあえず就労」という形で、生活保護からの追い出し、あるいは水際作戦のツールになるおそれがあり、賛成できません。
また、今年5月に採択された国連の社会権規約委員会所見が、「生活保護の申請手続きを簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとる」ことを締約国である日本に求めていることからも逆行するものです。
一般国民の生活水準にまで負の連鎖を生みだす生活扶助基準の切り下げは断じて許せません。基本理念の否定につながる生活保護法案は廃案とすべきことを強く求めて、討論を終わります。