弁護士(べんごし、: Lawyer)とは、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする者である。
(弁護士法より) 弁護士法弁護士職務基本規程などで規定されている。なお、弁護士は幹部予備自衛官(法務職)の任用資格になっている。
 
不良・非行弁護士の問題
弁護士への苦情相談の件数は2003年から2009年にかけて約3倍になり、2009年度の弁護士総数27,462人について約2,000件の苦情が発生した
同年に懲戒請求をされた弁護士は1402人であるが、同統計の数字は実際に懲戒を受けた件数ではなく、請求を受けた弁護士の人数であることに注意が必要である。
 
また懲戒請求制度は、弁護士法によるところの弁護士会の業務であるが、個々の弁護士に対する懲戒請求事案のうち、弁護士会が懲戒処分を行うケースは、平均で2%未満である。日弁連の広報誌『自由と正義』には懲戒処分を受けた弁護士名は掲載されているが、懲戒請求をされたただけで処分を受けていない弁護士名は公開されていない。
 
 
 
犯罪行為や違法・脱法行為に関与したり,弁護士資格を持たない知人に事務所を運営させるなどして
非弁活動に事実上肩入れしたりするなどのケースがある。
 
また2011年には、証拠改ざん・隠蔽事件で引責辞任した地検高検の検事が、大阪弁護士会に入会した]
 
さらには、暴力団等反社会勢力への脱法行為の指南、また弁護士自身が暴力団組織の一員となり、弁護士資格を失ったケースもある。東京地検特捜部長、最高検公判部長を歴任した河上和雄は、1997年に発売した著書で、近年弁護士が実刑判決を受けるケースが増えており、暴力団を除けばわずかな弁護士集団から毎年これだけの実刑判決を受けるような組織はないとして、弁護士業界を厳しく批判した。
 
ほか、法律の規定を勘違いした状態のままで弁護活動が行われた結果、被告人が不利益を被る事例が発生している。
近年ようやく、依頼者が弁護士を代理人として委任しようとするとき、その弁護士が過去3年間に受けた懲戒請求事案について開示を求めることができるようになった。また弁護士を依頼しない本人訴訟による提訴も増加している。
 
2011年には、債務整理を手掛ける弁護士のトラブルの多発を受けて、債務整理事件処理の規律を定める規程が日弁連で可決された。
 
 
 
弁護士会
地方裁判所管轄区域(=北海道の4ブロックと都府県)ごとに置かれる弁護士会や、日本弁護士連合会(日弁連)が弁護士の監督を行う(ちなみに戦前は司法省に弁護士・弁護士会を監督する権限が与えられていた)。
これらの弁護士の公権力からの自立性を弁護士自治という。
このため、弁護士会及び日弁連は強制加入団体となっており、弁護士登録をする者は、各弁護士会と日弁連に対し会費を拠出する。
 
これら弁護士の懲戒については、各弁護士会あるいは日弁連の綱紀委員会、懲戒委員会が行うが、弁護士の関与なしに学識経験者等が判断することが可能となっており、不公平、身内びいきであるという批判も強い。
 
 
 
 
日弁連新聞 第472号 20130501
「預り金等の取扱いに関する規程案」を定期総会に付議
不祥事の再発防止策を強化
弁護士による不祥事が相次ぐ事態を受け、4月19日に開催された理事会において、預り金等の出入金記録の義務化弁護士会への調査権限の付与等を内容とする規程案を定期総会(5月31日開催予定・東京都)に諮ることを全会一致で承認した。
 
昨年秋以降、複数の弁護士会で、後見人に就任した弁護士が被後見人の金員を横領するなど、弁護士が業務上預り保管する預り金の横領事件等が相次いで発覚した。これら不祥事により、弁護士・弁護士会に対する市民の信頼が根底から揺るぎかねないという非常事態を受け、日弁連は弁護士不祥事対策検討プロジェクトチームを設置して再発防止策を検討してきた。    その一環として、全国で統一的な預り金等の取扱いに関する規程を制定することとし、全国の弁護士会、関連委員会等に意見照会を行った。
 
意見照会への回答を踏まえ、議論を重ねた結果、総会に付議される規程案では、
 
①預り金等の適正な管理のため、自己の金員と区別して保管すべきことを定め、預り金等の出入金記録を会員に義務づけたほか、
 
②特定の会員に対する弁護士会への苦情申出が重なるなど「相当の理由」がある場合には、弁護士会に、預り金等の保管状況全般について規程案に列挙する事項の調査権限を付与する一方、対象会員に回答義務を課した。
 
さらに同規程案は、弁護士会による調査の結果相当と認めるときは、当該会員に対する助言、懲戒手続のいずれか、または双方の措置を講じることを定めている
 
今後、同規程の制定により、弁護士による預り金等の管理が明確化され、市民の弁護士に対する信頼回復の契機となることが期待される。
 
 
 
弁護士の一連の不祥事に関する理事会決議
2013年1月18日
日本弁護士連合会
 
弁護士は基本的人権の擁護と社会正義の実現をその使命とし(弁護士法1条)、高度な専門知識と職業倫理に対する市民の信頼を基礎としてその職務を遂行しています。

しかるに、昨年秋以降、福岡県弁護士会所属元弁護士が依頼者からの預り金等の名目で多額の金員を詐取等して詐欺罪と業務上横領罪にて懲役14年の実刑判決を受けた事件のほか、複数の弁護士会で弁護士が後見人や後見監督人の立場を利用して金員を詐取または横領するなどの不祥事が相次いで発覚しています。かかる事態は、単に当該弁護士個人の問題であるだけでなく、弁護士、弁護士会に対する市民の信頼を根底から揺るがすものです。
福岡県弁護士会元弁護士への調査は、同会に設置された調査チームにより進められており、まもなくその調査結果が出されます。その他の各地で発覚したものについても、既に各弁護士会において懲戒処分等の手続が進められており、その過程で原因が追究されています。

当連合会は、一連の事件に対する厳正な処置と原因究明を徹底します。  また、原因究明の結果を踏まえ、今後弁護士がこのような不祥事を起こさないための再発防止に全力を尽くします。                      
この点では、全国の弁護士に対してより一層の綱紀粛正と倫理の確立を求めるほか、預り金管理の方法、市民窓口との連携、さらに弁護士会の所属弁護士に対する指導監督のあり方などを含む改善・改革の方策について、当連合会内にプロジェクトチームを編成して検討しており、同チームの答申を得て直ちに不祥事発生防止策を実行に移します
当連合会は、不祥事の根絶のために最善を尽くす決意であることをあらためて宣明します。
 
日弁連: 弁護士の不祥事再発防止に向けての会長談話 2013年5月31日
弁護士は基本的人権の擁護と社会正義の実現をその使命とし(弁護士法1条)、高度な専門知識と職業倫理に対する市民の信頼を基礎としてその職務を遂行しています。


しかしながら、複数の弁護士会で弁護士が依頼者からの預り金等の金員を詐取・横領するなどの不祥事が相次いで明らかになりました。このような事態は、弁護士、弁護士会に対する市民の信頼を根底から揺るがすものであり、極めて遺憾です。当連合会は、このことを真摯に受け止め、本年1月に「
弁護士の一連の不祥事に関する理事会決議」を採択して、弁護士の不祥事の根絶のために最善を尽くす決意をし、不祥事発生防止策を検討して直ちに実行に移すことを宣言しました。


本日、定期総会において「預り金等の取扱いに関する規程」を制定したのは、その取組のひとつです。本規程は、預り金専用口座の開設と分別管理を徹底し、本規程違反が疑われる場合の弁護士会の調査や措置等の権限を明確化するもので、これにより、弁護士の預り金の取扱いについてより一層の適正化を図ります。


ただし、不祥事発生防止策はこの規程の制定に尽きるものではありません。苦情を受け付ける弁護士会市民窓口の機能強化等早期に不祥事を探知する方策の検討、懲戒手続に付された時点の公表制度の運用及び懲戒手続の整備等不祥事による被害拡大を防止する方策の検討、さらには、弁護士向けの相談窓口整備に関する検討や研修制度の強化等不祥事の発生自体を防止する方策の検討等、様々な観点から方策を講じる必要があると考えており、現在、全国の弁護士会で諸施策の具体化に向けて、鋭意、取組んでいるところです。


当連合会は、引き続き、不祥事発生防止の取組を一歩一歩着実に進めながら、弁護士、弁護士会に対する市民の信頼回復に努めてまいる所存です。そして、弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現を図るために全力を尽くしてまいります。
 
2013年(平成25年)5月31日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司