橋下徹氏の日本軍「慰安婦」及び「風俗業」に関する発言の撤回と謝罪を求める会長談話

日本維新の会の共同代表であり、大阪市長である橋下徹氏は、本年5月13日、軍隊に「慰安婦」制度は必要であった、沖縄海兵隊司令官に風俗業を活用してほしいと述べたとの発言をした。

当連合会はこれまで繰り返し、日本政府に対し、日本軍「慰安婦」制度の下で被害を受けた女性への謝罪と賠償を行うよう求めてきた。

橋下氏の今回の発言は、今なお癒されることのない傷に苦しむ日本軍「慰安婦」制度被害女性に対して更なる苦痛を与えるものである。のみならず、橋下氏の発言は、今日においても軍人及び基地の管理運営に際しては、女性の性を「活用」することが正当化され得るとの認識を示したものであり、日本国憲法が定める個人の尊厳と両性の本質的平等に真っ向から反するものである。国政政党の共同代表並びに地方公共団体の首長として公権力を行使する立場にある公人の発言として、女性の名誉と尊厳を傷付け不適切極まりないものである。



当連合会は、橋下氏によるこれらの発言を強く非難するとともに、橋下氏がこれらの発言を直ちに撤回し、日本軍「慰安婦」制度被害者に謝罪することを強く求める。
 
2013年(平成25年)5月24日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
 
日弁連HP
 
 

人種的憎悪を煽り立てる言動に反対する会長声明

近時、東京・新大久保及び大阪・鶴橋などにおいて、排外主義的主張を標榜する団体による、在日外国人の排斥等を主張するデモ活動が活発化している。

当該デモにおいては、「殺せ、殺せ朝鮮人」、「良い韓国人も悪い韓国人もみんな殺せ」、「ガス室に朝鮮人、韓国人を叩き込め」、「鶴橋大虐殺を実行しますよ」など、人の生命・身体に対する直接の加害行為を扇動したり、特定の民族的集団に対する憎悪を煽り立てたりする言動が繰り返されている。

上記デモへの参加者による、人の生命・身体に対する直接の加害行為を扇動する言動は、朝鮮半島にルーツを持つ在日コリアンの人々を畏怖させ、憲法13条が保障する個人の尊厳や人格権を根本から傷つけるものである。

また、人種的憎悪や民族差別を煽り立てる言動については、日本が批准する国際人権(自由権)規約の20条2項が差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道を法律で禁止することを締約国に求めており、また、日本が加入した人種差別撤廃条約の2条1項(e)は、立法を含む全ての適当な方法により、いかなる個人、集団又は組織による人種差別についても禁止し、終了させることを、締約国の義務としている。このことからみても、人種的憎悪や民族差別を煽り立てる言動をなくすことに、今、日本社会は真剣に取り組むべきである。

以上により、当連合会は、人種的憎悪や民族差別を煽り立てる言動に反対する立場を表明するとともに、人の生命・身体に対する直接の加害行為を扇動するこれらの言動を直ちに中止することを求める。

当連合会は、2004年に開催された第47回人権擁護大会において、外国人・民族的少数者の権利を保障し、多民族・多文化の共生する社会の構築を目指す宣言が採択されたところであり、お互いの違いを認め合う、多民族・多文化の共生する社会を築き上げるべく引き続き全力を尽くす決意を表明するものである。
 
2013年(平成25年)5月24日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
 
日弁連HP