除染作業員証言:枝葉「その辺に」 洗浄「流しっぱなし」
毎日新聞 2013年01月05日 15時04分
東京電力福島第1原発事故を受けた国の直轄除染で集めた枝葉や汚染水を川などに捨てる不適切処理が明らかになり、環境省が実態調査に乗り出した問題で、現場の男性作業員が毎日新聞の取材に応じた。作業員は「そもそも仮置き場が足りない。『置くところがないから仕方ないべ』と捨てることが日常茶飯事になっている」などと証言した。
作業員は昨年秋から福島県川内村などで除染作業に従事し、放射線のモニタリングなどを担当。元請けは大手ゼネコンで、工区ごとに下請けがあり、さらに2次、3次下請けとして中小の事業主や地元業者で作る組合などが入っているという。
作業員によると、集めた枝葉は本来なら「フレキシブルコンテナバッグ」と呼ばれるブルーの袋などに入れて仮置きする。「でも仮置き場の場所がなくなっていて、枝葉を袋に回収しないでその辺に捨てることもある。日常茶飯事です。早い話が『もう置くところがないから仕方ないべ』となる」と話す。
洗浄後の汚染水も本来は回収する必要がある。作業員によると、建物などを水で洗浄する場合は通常、下にブルーシートを敷いて汚染した水を受け、ポンプでくみ取りタンクに入れ、浄化装置で処理する。しかし、「回収するのは環境省が管轄し、なおかつ環境省が見に来るモデル地区だけ。普段はそんなことやっていない。(汚染水は)流しっぱなし」という。
さらに「『今ここでマスコミなんかが見に来たら大変なことになるね』といつも同僚と話している。以前、国の要人が来た時には、いいところだけをきちんと見せたが、普段はずさんもずさん。道路縁の刈った草などは片付けもせず、そのままにして帰ることもある」と打ち明ける。
こうしたことから、除染後に空間線量を測っても、除染前とあまり変わらないケースも多いという。「実際、大した効果は出ていない。僕たちから言わせたら税金の無駄遣い。でも国は『予算がないからやめる』というわけにもいかない。大手(元請け)にしてみれば、こんなにおいしい(もうけ)話はない。作業をすればするほどお金が入ってくる」と作業員は指摘する。
その上で「(明らかになった)ここで何とかしないと、大変なことになる。税金なんかいくらあっても足りないですよ」と訴えた。【袴田貴行】
除染:不適正な処理横行 3市町村で、土や枝葉を川に投棄
毎日新聞 2013年01月04日 19時32分(最終更新 01月04日 22時19分)
東京電力福島第1原発事故を受けて国が直轄で行っている除染で、除去土壌や枝葉が川に捨てられるなど不適正に処理されているとの指摘があり、環境省は4日、実態調査に乗り出した。事実ならば、放射性物質汚染対処特別措置法に抵触する可能性がある。
指摘があったのは、福島県田村市、楢葉町、飯舘村の3市町村の除染現場。環境省の除染ガイドラインでは、除染で発生した放射性廃棄物は飛散防止のため、袋詰めなどの措置を取るよう求め、特措法で不法投棄を禁じている。
しかし、一部の請負業者が、落ち葉などを川や崖下に捨てた疑いがあるとの指摘があり、環境省は来週中にも元請けゼネコンの現場責任者を環境省福島環境再生事務所(福島市)に呼び、事実関係を確認することにした。
国は、旧警戒区域と旧計画的避難区域(11市町村)を除染特別地域に指定し、直轄で除染を行うことになっている。これまで、指摘のあった3市町村のほかに、川内村を加えた4市町村の除染作業をゼネコンの共同企業体(JV)に発注。本格的な除染作業が始まっている。
除染方法について、環境省は元請けゼネコンとの契約時に、特措法や除染ガイドラインなどの規定に沿って実施するよう文書で求めている。また、環境省は、再生事務所の職員に現場を巡回させ、適正に行われているかをチェックしてきたとしている。
除染後の廃棄物などを不法投棄した場合、5年以下の懲役か1000万円以下の罰金が科される。【藤野基文】