町民の皆様へ(その3)
 今回は、皆さまの損について申し上げます。
 9月下旬に、羽鳥地区の区長さんと役員の方が厳しい表情で私を訪ねて来ました。福島県が遅れて発表した、高濃度の放射線量が昨年の3月12日午後に計測されていた新聞記事を見て激怒したことを伝えに来たのです。
 内容を聞きますと、3月12日の午後、福島第一原発の1号機の水素爆発が起きる前に子供や妊婦の方が避難準備中で自宅にいたそうです。さらに多くの町民もいたようです。知らないで無用な被ばくをさせられてしまったことに、区長さんとしてもそのようなことは知る由もありませんでしたし、福島県は、もっと早く情報を知らせるべきではないかとのことでした。羽鳥地区の方の将来を大変心配され、区長さんは意を決して福島県知事に抗議をして善処を求めました。地区の方を守ろうとする区長さんの姿勢に町民の皆さんと共に支援してまいりたいと考えます。
 [http://www.town.futaba.fukushima.jp/image.jsp?id=2097参考:公表までの経緯http://www.town.futaba.fukushima.jp/image.jsp?id=2284(PDF形式:115KB)]

 これも、私たちに課せられた大きな損害です。将来放射能で発症したらということの意味が重要です。それを証明してくれる人が、放射能には関係ないと言えば証明されません。自分では確信しても法律では自分が証明しないといけない仕組みになっているのです。立証責任という言葉です。今までの公害裁判では、大きな損害を受けさせられても立証できなければ却下されています。

 町民の皆さん、今が大切です。皆さんの家系は大丈夫ですか。ウクライナでは若者の20パーセントしか健康でないとのことでこれは大変なことです。私は今の日本の避難基準が非常に高く設定していることに異議を唱え続けてきました。
 大きな損は健康を害することです。私たちはチェルノブイリ事故から多くの事実を学ばなければなりませんし、情報の取り方は新聞だけではなく、被ばくに関する本などもたくさんあります。放射能が安全だという本は少なく、いくら低いレベルでも危険だという本が多くなっています。流言飛語や無責任な言葉に惑わされないでください。被ばくを続けないようお願いします。自分で決めるしかありませんが、ますます放射能が危険だと言う人が追いやられています。正に、未だ見えない大損に向かって進むことを避ける考えをしなければならないと思います。

 町民の皆さん、上羽鳥地区の人たちや被ばくを受けた人たちだけが苦しんでいいのですか。このような時だからこそ力を合わせて、被ばくさせられたことの賠償を求めることに、皆さんで立ち上がり協力してください。
 羽鳥区長さんは地区住民にアンケートを依頼し、中間貯蔵施設、区域の見直し、賠償、帰還の方法についても尋ねています。今後の活躍に期待したいと思います。

 国は双葉町に住むことを諦めさせようとしています。中間貯蔵施設ができれば無理です。私たちは先祖が町を守り育ててきたから今があります。幾多の困難にも町を諦めなかったから、自分の町で私たちが育まれてきたのです。子どもたち、孫たちに故郷のない悲しい思いをさせてよいのですか。

 双葉町の除染したものは他所では受け入れませんので、町に置くしかないのです。双葉町は大変濃い放射能で汚染されてしまったので、貯蔵するためには大きな面積が必要となり、町の分だけで一杯になると思います。受け入れたら歴史的に敗北です。お金に変えられない大損害を受けさせられます。慎重に考えましょう。

 今の事故の損害とは全く違う新たな損害ですので、交換条件にはなりません。新たな迷惑施設の話ですので、冷静に判断しましょう。

 原発で一番お金が入ったのは双葉町でなく福島県です。双葉地方に何かできましたか、県内の各地を見たときどれだけ双葉地方が遅れているかお分かりでしょう。

 双葉町が双葉郡では復興が遅れていると言いますが、第一原発の中でどのようになっているかお話します。作業員がいないと言う記事が東京新聞に出ています、国の収束宣言以降、待遇が悪く働く人がいないそうです。
 原発の安全は、作業する方たちの力量に有ります。しかし、これが本当だとすれば、安全は担保されません。このようなことを考えずに区域の見直しが本当にできますか、区域の見直しと賠償を絡めることには無理があるのです。区域の見直しと切り離せば直ぐにでも財物賠償は進む話ですが、何があるのかはわかりません。このように、損の話は無限にあります。
 町民の皆さんよく考えてください。この事故の処理費用を安く上げようとする勢力がいない事を信じたいと思います。
 
 平成24年12月28日
双葉町長 井戸川 克隆