在日米軍再編:「普天間県内移設は人権侵害」 国連参加NGO、「条約違反」改善の申し立て
【ジュネーブ伊藤智永】在沖縄米海兵隊・普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古(同県名護市)移設計画は、日本も批准している人種差別撤廃条約違反だ--。国連の会議に参加資格を持つNGO(非政府組織)「反差別国際運動」(事務所・ジュネーブ)など3団体が10日、ジュネーブの人種差別撤廃条約の委員会に対し、県内移設計画の見直しなどを日本政府に勧告するよう求める初の申し立てを行った。
条約委員会は10年の定例審査で沖縄の基地集中に懸念を表明しており、13日からの会期中審査を経て改善を勧告する可能性が高い。
また、3団体は申し立ての中で、沖縄の米軍基地を「明治政府が琉球国を編入(琉球処分、1879年)して以来続く先住民への差別」と主張。移設計画を「人権侵害」と位置づけることで議論に一石を投じるとともに、各国の外国軍基地問題を人権問題とする国際的な議論も喚起しそうだ。
毎日新聞が入手した申立書によると、沖縄について、固有の民族性、文化、言語、伝統を持つ先住民がいたが、日本政府が同化政策を進め、戦争などで多大の犠牲を強いられてきたと定義。面積で国土の0・6%の沖縄県に在日米軍基地の74%が集中しているのも歴史的な差別政策の一環とした上で、「普天間飛行場の県内移設はこの差別構造を続けるもの」だと指摘した。
条約委員会は定期的に加盟国の差別状況を審査。01年と10年の2回にわたり、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が沖縄の独自性を認定していることなどを理由に「沖縄の住民」を条約の保護対象と認めている。これに対し、日本政府は「不同意」と回答している。
関係者によると、勧告に法的拘束力はない。ただ、10月に国連人権理事会で国連全加盟国を対象に普遍的定期審査(UPR)を行う予定で、基地問題も審査対象になる可能性があるという。NGOは、国際人権規約などをもとに「基地問題は人権侵害」とする問題提起を展開していく構えだ。
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■ことば
◇人種差別撤廃条約
人種、皮膚の色、世襲的地位、民族、出身国を理由とする差別の撤廃をめざし、1965年の国連総会で採択。条約委員会が差別の実態について各国を審査し、改善を勧告している。日本についてはアイヌ、沖縄、被差別部落、在日韓国・朝鮮人、中国帰国者などが主要な審査対象。日本の条約加盟は95年。
毎日新聞 2012年2月12日 東京朝刊