<東日本大震災>千葉の液状化 地盤強化策、見通したたず
毎日新聞夕刊 12月10日(土)
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東日本大震災による液状化被害が首都圏で最も顕著だった千葉県の東京湾岸部。あちこちで民家の傾きを修復する工事が進む一方、宅地全体を対象とした抜本的な地盤強化策の見通しは立たず、本格的な補修を先送りしている被災者も多い。11日で震災から9カ月。浦安市などでは転出者が相次いで人口減に陥るなど、深刻な影響が続いている。
◇高額な工事負担
市域の8割以上が液状化した浦安市。戸建て住宅が建ち並ぶ地域では、工事の関係車両が家の前に並び、新潟や鳥取など県外ナンバーも目につく。業者間の競争も激しく、工事用の薬剤が下水に流れて管が詰まるなどのトラブルも起きている。
震災後しばらくは「傾きの修復は500万円、地盤改良まで含めると1000万円」といわれた工事費用は、競争の結果か低下傾向。しかし、「家のドアが自然に開いてしまう」とぼやく主婦(64)は「どの業者も他社の工法を批判するばかりで、結局どれがいいのか分からない」と困惑顔だ。家が傾いたままの無職の男性(71)は「工事の質が上がり、安い工法も出てくるかも」と様子見を決め込む。
同市によると、県や市の住宅再建支援制度を申請した世帯数は11月末現在、県分が対象の4.1%、市分も5.5%にとどまる。
◇噴砂で防潮堤
液状化で噴出した土砂は、浦安市だけで約7万5000立方メートルに達し、処理も難題だ。同市は海岸沿いに、噴砂やがれきを混ぜた盛り土に植林して防潮堤を造ることで処理する計画を検討している。同市は「海に面した部分を可能な限り囲みたい」と防災都市を目指す構え。18日には試験的な植林の取り組みも行うが、費用の捻出など課題も多く、完成のめどが立っているわけではない。千葉県によると、同市の人口は4月に300人減など9月まで3ケタ減が続き、10月末現在では昨年末より1145人減った。
◇戸建てにこだわり
液状化で約4000世帯が一部損壊以上の被害を受けた習志野市では、復興計画を巡って住民の合意形成が難航。同市主導の復興検討会議でまとまった復興案は、戸建て住宅をマンションに集約する案や、区画整理と地盤改良した土地に戸建てを建て替える案など4案あるが、いずれも住民の負担が必要だ。11月の説明会では住民から「いったいいくら負担するのか」など疑問の声が相次いだ。
被災した世帯主の5割以上が住宅ローンや教育費の負担を抱える40歳代以上で、年金暮らしも多い。住み慣れた家や戸建てへのこだわりも強く、「復興案は絵に描いた餅」と話す住民も少なくない。市の担当者は「要望に応えたいのだが……」と頭を抱える。
◇遅れる空洞修復
道路にできた空洞の修復もこれからだ。習志野市が市内の埋め立て地の3分の1を調査した結果、陥没などの危険のある場所が約200カ所見つかった。同市は「事故が起きてからでは遅い」として来年3月末までに修復する方針。
浦安市でも、確認されただけで約100カ所で空洞の存在が疑われている。同市の担当者は「道路の凹凸などの苦情対応に日々追われ、本格的な復旧はまだまだ」と話す。【山縣章子、橋本利昭、森有正】