人権NGO 言論・表現の自由を守る会は、本日1125日、濱田純一東京大学総長に対して、国際自由権規約第一選択議定書(個人通報制度)即時批准に対する協力を求める下記文書を資料とともにファクス送付しました。
 
 
                                         
東京大学 
濱田純一 総長
20111125日   
    人権NGO 言論・表現の自由を守る会 
 
≪国際人権規約に関する情報提供とお願い≫          (前文略)                                              
当会は、復興とともに日本の大学の国際化に道を開くためにも、自由権規約第一選択議定書の即時批准で国際人権規約(社会権規約・自由権規約)の活用に道を開き人権の開国をすることが待ったなしの課題であり、そのカギは「個人通報制度の即時批准」だと考えます。
法学部(法科大学等)において、国際人権条約を必修とすることも緊急の課題です。
 
私たちは、政府に批判的なビラを配布したことによって逮捕され起訴された2004年のビラ配布弾圧事件を機に市民運動として会を立ち上げ、次々と逮捕起訴される中で言論弾圧6事件の被害者の無罪を勝ち取るために裁判支援活動を行い、2008年には人権NGOとして自由権規約委員会第5回日本政府報告書審査のロビー活動を行いました。この結果、自由権規約委員会が、日本の参政権の問題として、日本の公職選挙法と国家公務員法が自由権規約19条と25条違反であると指摘した上で、これらの法律を撤回するよう求め勧告しました。
(別紙資料パラグラフ26
 
また、2001年にも、社会権規約委員会における第2回日本政府報告書審査の結果、原発問題・二重ローンの問題・震災弱者の問題でも資料※※のとおり勧告しています。
 
「個人通報制度の批准」については、民主党もマニュフェストの50番目に掲げています。
この間、多くの与野党の国会議員のみなさんにも自由権規約第一選択議定書の批准について、ご尽力いただいておりますが、未だ「批准」についての議案は上程されていません。
 
日本政府が自由権規約第一選択議定書を批准することは、法治国家確立のための第一歩であり、人類普遍の人権尊重の道が拓かれることは、復興の道を力強く照らす希望の太陽としてあたたかい無限のパワーを発揮するものだと考えます。
 
国会での個人通報制度即時批准を実現し、日本が国際人権規約の活用の道に踏み出すために、濱田総長のご理解とお力添えをいただきますよう、どうぞよろしくお願いします。
以上
 
 
 【 資料 】 
     
※自由権規約委員会第5回日本政府報告書審査 最終見解(勧告)200810月(抜粋)
パラグラフ26 委員会は、公職選挙法の下での戸別訪問の禁止選挙期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約につき懸念を有する。委員会は、政治活動家と公務員が、私人の郵便箱に政府に批判的な内容のリーフレットを配布したことで、不法侵入についての法律や国家公務員法の下での逮捕、起訴されたとの報告についても懸念する。
 
  締約国(日本)は、規約19条及び25条の下で保護されている政治活動及び他の活動を、警察、検察官および裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである。
 
 
※※ 社会権規約  経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会  2001924
第2回日本政府報告書審査 経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解  
 主な懸念される問題とそれに対する勧告(抜粋) 
 
◆ 原子力施設の事故について

 
パラグラフ22 委員会は、報告された原子力発電所事故、及び当該施設の安全性に関する必要な情報の透明性及び公開が欠如していることに懸念を有するとともに、原子力事故の予防及び処理のための、全国規模及び地域社会での事前の備えが欠如していることに懸念をする。

【勧告】パラグラフ49 委員会は、原子力施設の安全性に関連する問題に関し周辺住民に対して、全ての必要な情報の透明性及び公開性を促進することを勧告する。さらに、締約国に対し、原子力事故の予防及び事故が起きた際の迅速な対応のための準備計画を策定することを要求す
 
 震災弱者の問題について

パラグラフ27  委員会は、阪神・淡路大震災後に兵庫県により計画し実行された、大規模な再定住計画にもかかわらず、最も震災の影響を被った人々が必ずしも十分に協議を受けず、その結果、多くの独居老人が、個人的注意がほとんどあるいは全く払われることなく、全く慣れない環境に起居していることに懸念を有する。家族を失った人々への精神医学的又は心理学的な治療がほとんどあるいは全くされていないようである。多くの再定住した60歳を越える被災者には、地域センターがなく、保健所や外来看護施設へのアクセスを有していない。
【勧告】パラグラフ54 委員会は、締約国が兵庫県に対し、とりわけ高齢者及び障害者への地域サービスの向上及び拡大を勧奨することを勧告する。
 
◆ 二重ローンの問題について
パラグラフ28 委員会は、阪神・淡路地域の被災者のうち、貧困層にとっては、自らの住宅再建資金の調達がますます困難になっていることに懸念をもって留意する。これらの者の中には、残余の住宅ローンの支払いのために、住宅を再建し得ないまま財産の売却を余儀なくされた人々もいる。

【勧告】パラグラフ55 委員会は、貧しい被災者が、住宅ローンの支払いを続けるために財産を売却せざるを得なくなることを防ぐために、それらの者が破壊された住宅を再建するために公的住宅基金あるいは銀行に対する債務の支払いを支援するため、締約国が規約第11条の義務に従って、効果的な措置を迅速にとることを勧告する。