『都政新報』投稿記事
◆ 非常勤職員にボーナス支給を!
本紙読者には都内自治体の幹部職員・組合役員・議員が多いだろうことを意識して、非常勤職員へのボーナス支給について問題提起をしたい。
ここではボーナスに絞り、退職金など他の手当問題には触れない。なお、私のスタンスはボーナスを受け取る常勤であり、賃金の交渉に関わる組合役員である。主人公である非常勤が声を上げ始めたことに応えて投稿した(本紙10月7日号「非正規公務員らが集会『一時金・退職金を』」参照)。
この問題の性格は“なぜ非常勤にボーナスを払うのか?”ではなく、“なぜボーナスを払わないのか?”である。理由は以下の通り。
①非常勤は、短時間勤務であるための賃金の減額を毎月受ける(実際はそれ以上の格差)。ボーナスが出ないということは年収(常勤は約16カ月分)で更に4分の1減額されるということである。これは構造的な不均衡である。現在、「官製ワーキングプア」は社会問題であり、片山前総務大臣もこれを憂慮する発言をしている。
②パート労働法は、労働契約と更新に際して、ボーナス・昇給・退職手当の有無を文書で明示することを義務付けている。
③東京都東村山市訴訟等の最高裁判決は、一定の条件があれば、非常勤への手当支給は地方自治法に違反しないと判断した。
④不支給の根拠とされてきた地方自治法第203条は、実は非常勤への手当支給を禁じていない。
並列列挙する「議会の議員」への期末手当支給を「条例で~支給することができる」としており、その理由は「国会議員(歳費制度)との均衡」である(『逐条地方自治法』学陽書房)。
理由と手続きが適正であれば、非常勤への手当支給は法の趣旨にかなう。
そして、今、*人事院は国に対して非常勤への手当支給を奨励し、多くの府省がボーナスと退職手当を支給している(支給基準はボーナスが6カ月以上勤務で、退職手当は加えてフルタイム的勤務)。
⑤国基準が23区でも準用されていれば(「国に準拠」は自治体の常套句)、6カ月以上勤務する非常勤(2008年総務省調査で1万5165人)にボーナスが出る。また、6カ月以上勤務した大震災被災者や障害者(「チャレンジ雇用」)にもボーナスが出る。
⑥厚生労働省2010年全国調査によれば、49%の民間事業所がパートタイマーにボーナスを支給している。
⑦自治労アンケートによれば、全国で27%の非常勤にボーナスが支給されている。労使交渉中は378単組(23%)に及ぶ。23区では既に12区職労とユニオンが非常勤へのボーナス支給を要求している。つまり、今この問題は自治体での一般的交渉テーマである。
⑧任用根拠は異なるものの、同じ短時間勤務である再任用・任期付にはボーナスが支給されている。また、都区の学校非常勤講師には、条例でボーナスが支給されている。
⑨人事院と異なり、特別区人事委員会は「23区の非常勤は特別職であり制度外」として、非常勤処遇改善の勧告をしない。一方で、非常勤の処遇に言及した勧告を出した政令市人事委員会は既に五つある(千葉市・浜松市・京都市・堺市・岡山市)。
特別区人事委員会の「23区に一般職非常勤はゼロ」という認定は、以下の通りに誤りであり、矛盾している。
(1)2008年総務省全国調査で、一般職非常勤は約10万人である(特別職非常勤は約20万人いる)。
(2)行政実例は、「学校給食パートと特例保育パートは一般職非常勤」とする。
(3)特別区研修所発行の『職員ハンドブック』は、特別職を「選挙等で選ばれる職」「非専務職(非職業的)」「自由任用職」の三つに区分する。しかし、23区で働く非常勤の多くは公募で採用され、専務的かつ職業的である。
⑩ボーナスを出さないことは、以下の理由により人事政策として考え直されるべきである。
(1)『逐条地方自治法』には、「期末手当は、わが国の生活習慣上、盛夏と年末に生活費が一時的に増高することを考慮して支給される生活給」「勤勉手当は、精勤に対する報償として支給される能率給」とある。なぜ非常勤をこの外に置くのか。
(2)金融機関は、ボーナス支給のない顧客にはローンの幅を狭くする。福利厚生貸付制度も*ボーナス返済併用型をとる。計画的なローンで住宅・車・教育費・治療費を得ることは、働きがいを育て、離職や流出を止めることにつながる。
⑪水は低い方に流れる。現状を放置すれば、常勤の賃金制度は”特権”と化す。これまでの”「非正規」は安く使える”は”「正規」は高くつく”に転換する。ちなみに、2010年特別区人事委員会勧告は、調査した民間事業所において、「ベースアップの慣行なし」係員70%・係長級75%、「定期昇給制度なし」係員19%・係長級32%、と報告した。深刻な格差が公務員を包囲している。まずは同じ屋根の下の格差解消を目指すべきである。
港区でも、この秋から非常勤へのボーナス支給についての労使協議を始める。区は本年3月に人事政策方針を改定し、「非常勤の役割が補助ではないという認識のもと、その育成はますます重要」と記した。実のある協議を期待している。
(港区職員組合役員 本多伸行)
『都政新報』2011年(平成23年)11月1日(火曜日)
≪パワー・トゥ・ザ・ピープル!!
今、教育が民主主義が危ない!!
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