原発労働者の「電離放射線健康診断結果報告書」の実質的な不開示問題 4

9月30日、宮城労働局、主要部分を開示

去年3月実質全面非開示(注1)とされ厚生労働大臣に異議申し立て(審査請求)をしていた電離放射線健康診断結果報告書(原発労働者 の被曝-ヒバク-に関する報告書)の開示を、9月30日、仙台の第4合同庁舎にある宮城労働局で受けました。
開示されたのは主要部分を含む大半と、情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」と略)の厚生労働大臣への答申どおりのものでした(全754ページの複写の交付を求めたところ、今回はコピー代はタダになりました)。
実質全面非開示から主要部分を含む大半の開示に至るこの1年半の国とのやりとりの過程で、私が最も意外に感じたのは、審査会が厚労大臣に原処分を変更し主要部分等大半を開示すべきと答申したことでした。
 
しかし、もし全3回の審議が今年3月11日の福島原発での炉心溶融事故発生前に済んでしまっていたら、審査会は恐らくこのような答申をしていなかったのではないでしょうか。
去年3月の異議申し立て後、私が厚生労働大臣に次のような意見書を提出したのは去年10月のことでした。
 
「医療関係を除く事業場(ここでは女川原子力発電所にある事業場―筆者注。以下括弧内の注は同じ)の従業員として電離放射線による身体への影響を受ける可能性のある施設(ここでは女川原発)で働く人々の『生命、健康、生活又は財産を保護するため』にも、原子力施設などの事故が原因となっての放射能災害から周辺住民等の『生命、健康、生活又は財産を保護するため』にも、そのような事業場の人々が働く現場の労働環境そのものについては、国が監督・指導するだけでなく、日本列島住民がしっかりと目を向ける必要性がある。(以下略)」
 
全3回の審議のうちの第2回がたまたま福島原発事故後(5月17日)だったことが、私のこのような指摘に一定の説得力を与え、逆転開示を生むことになったのでしょうか。
しかし、この程度の開示は宮城労働局がそもそもはじめから行なって当然のことだったと今も思わないではいられません。
 
むしろ驚くべきは、現に炉心溶融事故が起き放射能災害が起きても原処分を押し通そうとした厚労省(宮城労働局)の態度です(注2)。
去年3月の宮城労働局及び厚労省の墨塗り開示は、高線量被曝( ヒバク)の事実を隠蔽したいがためのものではなく、 それ以前の「依らしむべし。知らしむべからず」という国の役人の体質ゆえのもののように思えました(注3)。
このような態度をこの事故後も変えようとしないところに、経済産業省にとどまらない国の「知らしむべからず」体質の根深さがあります。
 
今回の審査会答申が、不開示の上にあぐらをかく厚労省の体質に穴をあけました。
福島原発事故に対処する人々の被曝をできるだけ少なくするためにも、二度とこのような放射能災害を生まないためにも、この穴をどんどん大きくしていく必要があります。
 
 [注](近日中に掲載します)
 
 原発問題を考える石巻市民の会  日下郁郎 | 分類: 原発労働者の被曝