やらせ疑惑に関する記事(2009~2010年)再掲 2  2011年9月 2日

締め切り日1日で「賛成」意見が5倍に増えていた「プルサーマル全般に関するご意見・ご質問」

(★この記事は、2010年3月9日の記事の再掲です)
6日(土)、1日かけて、
女川原発のプルサーマル計画に関して
宮城県と女川町と石巻市が行なった
「住民理解活動」全般について調べ直してみました。



「プルサーマル全般に関するご意見・ご質問募集」は
当初は予定されていなかったものです(注1)が、
突如、「住民理解活動」の一環として
去年12月5日から2か月間に渡って行なわれものです。

寄せられた全部の意見・質問をまとめたものが
最近石巻市から開示されたので、
その一つ一つに目を通していると、
「‘反対意見が多くて大変だから…、’と動員をかけられ」
と書いてあるもの(注2)がありました。

提出日を見ると締め切り日の2月5日となっています。
そこで、全部で330人(匿名者等が除外された人数)の
意見・質問提出者の提出日を確認してみたところ、
なんと79%に達する255人がこの日の提出者でした。

最後の意見・質問まで読んでみた結果、
私(日下)を除いた254人全員が
女川原発へのプルサーマル導入や
原子力推進に賛成の立場であることがわかり、
組織的な動員のあったことを確信しました。



国による住民説明会
(正式名称「プルサーマルの必要性、安全性及び耐震バックチェックに関する住民説明会」)
が女川町で開かれたのは、
この意見募集の締め切り直前の1月31日。

約500人が参加したこの説明会の
「プルサーマルの必要性、安全性」の部で
質問に立ったのは8人でしたが、
うち6人の質問や発言はプルサーマルに
批判的な立場からのものでした。

資源エネルギー庁は、
2007年12月に発行した小冊子
「わかる!プルサーマル」で、
原子力委員会の元の図を、
使用済燃料の再処理により
その13%をMOX燃料として回収・再利用できるかのように
書きかえました。

この問題についてのこの日の私たちの質問に対して、
同庁核燃料サイクル産業課の森本英雄課長は、
自分たちの「まちがい」を認めました(『河北新報』翌2月1日号)。

残り2人のうち、1人の意見は
トラブルが続く女川原発の人為ミスを突いたものでした。

ですから、この日、
女川原発のプルサーマル計画に
全面的に賛成の立場から「質問」したのは1人だけ。

その「質問」は、
「女川町はプルサーマル交付金をもらえないのか。
もらえないのはおかしいのではないか」という
国への交付金の「要望(おねだり)」でした。

これに対して回答したのは、
説明会の冒頭で挨拶に立った
同庁電力・ガス事業部の横尾英博部長。

「回答」は、
「(先行してプルサーマルを始めた所と)
同じ額とは行きませんが、交付するようにします。」
というものでした(数日後、交付額は30億円と発表される)。

国が、地元住民に「活」を入れ、
地元でプルサーマル推進の先頭に立ってきた
安住町長や村井知事を支えるために、
女川原発の立地市町の一つに直接出向いて
このように特別交付金を交付すると約束したものの、
結局、質問の大半は
プルサーマルに批判的な立場からのものでした。

宮城県と女川町と石巻市が主催して
石巻市で2回、女川町で1回、合わせて3回開いた
「プルサーマルを考える対話フォーラム」と同様に。



それで急遽、
「反対意見が多くて大変だから…」
と事業者と仕事の上でつながりの深い組織か
有力者が動員をかけたから、なのでしょう。

「プルサーマル全般に関するご意見・ご質問募集」に対する
全応募者の約80%が締め切り日に意見を提出し、
前日まで59人だった
女川原発のプルサーマル計画に対する賛成は、
300人以上へと5倍に増えたのでした。



注1.
村井知事と県当局は、
女川原発3号機にプルサーマルを導入した場合の
「安全性の確認」と「住民の理解」を
地元同意の前提条件としてきた。

当初は、この「住民の理解」は、
この「安全性」についての「住民理解」のことだった。

それは、去年9月5日に
石巻市と女川町で「住民理解活動」の一つである
「基調講演会‘プルサーマルを考える’」が開かれた際の
プログラムの「プルサーマルを考える対話フォーラム」の
開催決定・参加案内欄に、次のようにあることからも明らかだ。

「プルサーマルの安全性に関して、
パネリストによる話題提供・問題提起と
討論、会場との質疑応答を行います」(黄帯は引用者。以下同じ)。

県当局は、
「対話フォーラム」の講師(パネリスト)を選ぶ段階では
とりわけ、「話題・問題提起」を
「安全性を中心とする」ことにこだわった。

しかし、市民の要請を受けての
石巻市当局の県当局への要請・努力と講師自身の求め、
及び司会・進行役の同調
(10月15日の東京での講師と司会・進行役の打ち合わせ)で、
結局、「話題・問題提起」はそれぞれの講師の望みどおり、
「プルサーマルの必要性」中心のものとなり、
あるいは「使用済MOX燃料問題」中心のものとなった。

また、11月になって独自に
「プルサーマル市民勉強会」を設置した石巻市は、
講師の話の内容を「安全性」に限ることはしなかった。

このようなことの結果、
県当局や知事が言う「住民理解」の内容も
当初とは違うものとなっていった。



注2.
こう書いたのは、「317番」目に意見・質問を提出した方。

この意見・質問は、全15枚の意見・質問一覧表の14枚目にあった。

県は2月15日の安全性検討会議の配布資料5の
「パブリックコメントの結果」で、この方の意見を、

「女川原子力発電所3号機プルサーマル計画に対し、
結論から言えば‘消極的賛成’です」という冒頭部分と、
「ご意見・ご質問フォーム」へのアクセスの至難さ、
及び書き込み欄が狭いこと等による
入力の大変さの指摘に限って紹介し、回答している。

しかし、この意見には、次のような重大な指摘が含まれていた。
何のための「意見・質問募集」なのかを質問したのも、
この方と日下(「333番」)だけだった。

「‘反対意見が多くて大変だから…、’と動員をかけられ
‘ハイハイ。えっ今日が締め切りじゃないですか!’と
慌てながらも仕事の合間を縫って
『ご意見・ご質問フォーム』に‘消極的賛成、’と
書きこむぐらい賛成です」、

「そもそも意見や質問を集約してどうするんだろう?
反対意見が過半数を占めたらやめちゃうのかな?
逆に意見が3通しか集まらなくても
3通がすべて賛成意見なら‘賛成100%’なのかな?」


原子力発電を考える石巻市民の会HP
http://shiminnokai.info/cat58/post-52.html
日下郁郎 | 分類: 東日本大震災と原発