30日、原子力安全・保安院から電力会社への「やらせ」関与を認定した経産省の第3者調査委員会の中間報告では、東北電力女川原発での住民説明会など5件で「国の関与を疑わせる」と、発表しました。
 5件のうち、3件が保安院、残り2件が資源エネルギー庁の関与疑いとしています。

 栽3者委員会の大泉隆史委員長(弁護士、元大阪高検検事長)は、記者会見で、今後も調査を続け、9月末をめどに最終報告をまとめる方針を示しました。
 疑いを指摘された説明会は次の通り。

 ① 06年10月28日、宮城県石巻市での住民説明会(東北電力)
 ② 宮城県女川町で、①と同じ06年10月28日の住民説明会。(東北電力)
 ③ 同月29日の石巻市の住民説明会(同)
 ④ 10年5月18日の川内原原発第一次公開ヒヤリング(九電)
 ⑤ 11年6月26日の玄海原発(九電) 




 原発やらせ問題:保安院要請 女川原発説明会で

 東北電でも動員の疑い…第三者委中間報告

 経済産業省原子力安全・保安院による国主催原発シンポジウムへの動員など「やらせ」問題で、事実関係を調べる第三者委員会は30日、中間報告をまとめ、東北電力のシンポジウムでも新たに保安院の関与が疑われる事案があったと指摘した。また、九州、四国、中部の3電力が、それぞれ開催したシンポジウムで、当時の保安院職員が電力会社に動員要請などをしたと認めたケースについて、報告書は事実認定した。

 調査対象は、過去5年間に開催された国主催のシンポジウムや住民説明会を中心とした計41件。調査は、▽開催当時、実施に関与した資源エネルギー庁や保安院の職員、電力会社社員など延べ約70人へのヒアリング▽関連文書や電子媒体の精査▽電力会社への追加調査▽経産省職員へのアンケート--などの方法で実施した。

 中間報告で新たに発覚した東北電のケースは、06年10月28、29日に宮城県石巻市と女川町で開かれた女川原発の耐震安全性を巡る住民説明会で、保安院職員が東北電に動員を要請した疑い。また、九電をめぐっては、昨年5月の川内原発3号機増設計画に関する第1次公開ヒアリングや今年6月の玄海原発の運転再開に向けた県民向け説明番組で、エネ庁が再開に向けた意思表明などを要請したと報道されたが、報告書はこれらを追認した。

 一方、九電など3電力で「やらせ」を事実認定した3ケースについては、特に詳細を報告した。九電については、05年10月の玄海原発3号機のプルサーマル計画のシンポで、九電担当者が、当時の原子力安全広報課長と事前に打ち合わせ「動員、さくら質問等、“とり注(取り扱い注意)”でお願いする」と記載したメモを作成したと指摘。四国電力については、06年6月の伊方原発のシンポで、担当者が同課長との打ち合わせ後「シンポのキーは、動員を確保すること、賛成派がうまく発言すること、反対派の怒号をどう抑えるか」とのメモを作成していた。さらに07年8月の中部電浜岡原発のシンポでは、同課職員が、反対派に偏らないよう中部電側で質問文を作成して参加者に質問を依頼するよう要請したという。

 委員長の大泉隆史弁護士は、この保安院の関与を認定した、この3件について「問題がある」と強調。国が関与した「疑い」のある事案や、その他のシンポなどと合わせて調査を継続する姿勢を示した。いずれの事案も電力会社からの報告で判明。経産省職員へのヒアリングやアンケートで具体的な情報提供がないことから、省内の組織的な隠蔽の可能性がないか、さらに慎重な調査が求められそうだ。同委員会は再発防止策も協議し、9月末をメドに最終報告を行う。【和田憲二、小倉祥徳】

毎日新聞 2011年8月30日 
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110831k0000m040098000c.html