3月の地震の被害にあった岩手県と宮城県の30人以上の日本人生徒が、ウラジオストック郊外の全ロシア児童センター”オケアン”で休暇をすごす。中学生と高校生が、8月18日から25日まで、一週間過ごすのだ。

 "オケアン"のお客様たちには、興味深い、様々な文化・スポーツ・プログラムが用意されている。日本人生徒は、同年代のロシア人生徒向けに、”日本を知りましょう”の夕べや、折り紙や習字の授業を行う予定だ。更に、日本人生徒用プログラムには、ウラジオストック大旅行も予定されている。

 2008-2009年には、ロシア連邦大統領の招待で、同様に壊滅的な地震の被害にあった四川省から、1500人以上の中国人生徒が、ロシアのいくつかの地方を訪れた。中国の子どもたちは、オムスク、クラスノヤルスク、ノボシビルスク、沿海州や、他の地方で、暖かく迎えられた。全ロシア児童センター”オケアン”だけでも、約900人の中国人生徒が訪れたとITAR-TASS通信は報じている。

 記事原文のurl:www.vesti.ru/doc.html?id=536602&tid=88854


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 ロシア語を解する知人訳。なかなか暖かいおもてなしが予定されているようだ。
 全ロシア児童センター"オケアン"、どうやら巨大なレクリエーション複合体のようだ。
 今回は翻訳より以下余談がずっと長い。毎回同様、無視して頂きたい。

 おもてなし記事を読んでから、慶應義塾大学総合政策学部、廣瀬陽子准教授の下記記事があるのに気がついた。

 ▼ 「北方領土寄付」発言も飛び出した ロシアの手厚い震災支援
 2011年03月24日(Thu)廣瀬陽子

 『WEDGE Infinity(ウェッジ)』
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1280?page=3

 一部を引用させていただこう。

 そして18日にはロシア大衆紙「モスコフスキー・コムソモーレツ」に衝撃的なコラムが掲載された。
 コラムを書いたのは、ロシアジャーナリスト連盟の「黄金のペン」賞を受賞したこともある著名なユリヤ・カリーニナ政治評論員で、日本の返還要求の主張は認めず、返還にはずっと反対だったが、震災で深い悲しみを背負っている日本の悲しみを和らげ、日本への同情を示すために北方領土を即時に無条件で渡すべきだと主張したのである。

 原発事故で居住できない地域が増えることから、日本の小さい領土がさらに小さくなるとして、「ロシアにとってはたった0.035%程度にあたる小さな国土を慈善目的で日本に寄付してもよいのではないか。日本の破壊的な被害にしてみれば、ロシアの国益など小さなことで、それほど惜しくないはずだ」と述べたのである。

 さらに、同氏は、ロシアが北方領土を引き渡せば、ロシアは利益の奪い合いではない新時代の外交をアピールできるという利点も述べているのである。

 このコラムに対しては、反論が殺到したというが、それにしてもそのような提案が新聞に掲載されること自体が北方領土問題の大きな動きを感じさせる。

 該当文章の翻訳「北方四島は返却すべきだ」を掲載した際、「本当に、普通の主婦なのだろうか?」と書いたところ、「実に差別的な言い方なのが分かりませんか?」と思いもかけない指摘をされた方がいた。コラム題名、「主婦の目から」とあった。この廣瀬准教授の文章を、お読み頂ければ、「本当に、普通の主婦なのだろうか?」と思う理由、お分かりいただけるのではあるまいか。

 廣瀬准教授の上記文章の一部を繰り返す。

 コラムを書いたのは、ロシアジャーナリスト連盟の「黄金のペン」賞を受賞したこともある著名なユリヤ・カリーニナ政治評論員

 このコラムに対しては、反論が殺到したというが、それにしてもそのような提案が新聞に掲載されること自体が北方領土問題の大きな動きを感じさせる。

 ほぼ全員が自国領土と確信している島を、その国で暮らしながら、「無条件であげよう」と、発言すれば、非難諤々、大変な事態になるのは誰の目にもあきらかだろう。状況を裏返しにして、産経や読売の読書欄に「竹島を韓国に無条件であげよう」と投書したらどうなるだろう?8/15、靖国で合祀反対を声にだしたらどうなるだろう?

 ロシアに石原知事のような人物がいれば、「筆者は、自宅に爆発物を仕掛けられるのは「当たり前だ」と、といったかも知れない。(田中均元外務審議官宅に爆発物を模した不審物がおかれた事件の際、彼はそう発言したらしい。)
 一般の方が、はたして実名を出して、そういうリスクがある発言を、あえてされるだろうか?余りの果敢さに驚いて、そう書いたにすぎない。

 プーチン政権に極めて批判的な記事を書き続けていたアンナ・ポリトコフスカヤ事件を覚えておられる方も多いだろう。彼女は自宅アパートのエレベーター内で射殺された。犯人は不明だ。
 時の権力に真っ向から逆らえば、そういう運命が待っていることは容易に想像できる。もちろん、そうした行動と、それに対する報復、日本も例外ではない。

 逆に言えば、ロシア、なぜか北方領土について、方針を転換する用意があり、そのアドバルーン記事として、彼女が大胆な記事を書いたのではないかと勘繰りたくなる。
 一方、この記事に対して、日本の大手マスコミ、対応は極めて冷淡だった(無視か、極めて小さなコラム扱い)。翻訳を読まれ、「涙が出た」と、ご自分のブログに書かれた読者もおられる。

 ちなみに、北方領土問題、政府プロパガンダと違い、孫崎亨氏の新刊『日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土』の説明、素人にはわかりやすかった。
 体制側の原発推進プロパガンダ原則『原子力PA方策の考え方』鹿砦社ウェブで読める。

『マスコミに載らない海外記事』(2011年8月17日)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-f56f.html