■要請先
 〒102-8651 千代田区隼人町14-2 
           最高裁第一小法廷 桜井龍子裁判長宛

           FAX:03-3221-8975 最高裁事務総局秘書課
 
 電文例 板橋高校君が代弾圧事件の判決期日を取り消し、大法廷に回付し口頭弁論を開け!


 板橋高校卒業式事件は、元都立高校の教員であった藤田さんが、卒業式の開始前に保護者に「出来ましたら着席をお願いします」と語りかけたことが、威力業務妨害として刑事責任を問われた事件です。

 そもそもこのような藤田さんの行為は到底の刑事罰の対象となる行為とは考えられず、また刑事罰の対象とすることは、憲法はもちろん国際人権法で保障された「表現の自由」を侵害することになり、国民に与える萎縮効果は極めて大きなものがあると言わざるをえません。

 最高裁は、控訴棄却(2008/5/29)から3年余、一度も口頭弁論を開かないままに、7月7日に期日指定をしてきました。私たちは、ずさんな原審を見直し、人権の世界標準に基づいた公正な判断を実現するために、審理を尽くすよう要求します。

 ○憲法21条「表現の自由」を適正に適用せよ!
 ○わが国も批准している自由権規約19条2項を、裁判規範として適用せよ!
 ○出発時間と制止時間が矛盾している、原審のずさんな事実認定を見逃すな!
 ○音源にない言葉が「解析書」に記載されている証拠の不一致を放置するな!
 ○式典を円滑に行う校長の権限が「公共の福祉」並みに「不可侵」でいいのか!
 ○近年になく感動的だった卒業式に、威力業務妨害罪が成立する余地があるのか?
 ○都教委が「被害届」提出した真の意図は、「日の丸・君が代」強制への反対言論を刑事罰で弾圧しようとしていることを見抜け!


■ 最高裁判所 第一小法廷裁判長 櫻井龍子殿 

 大事な問題が残っています。
 期日指定を取り消して、あくまで弁論を再開して審理を尽くして下さい。

  花輪紅一郎(藤田先生を応援する会)              2011年7月4日

 5月末から「君が代起立斉唱命令」裁判で立て続けに「上告棄却」の判決が出されました。しかし、14人の判事のうち、2人が反対意見、7人が補足意見を書いており、新聞では「揺れる最高裁」などと報道されています。
 まして藤田さんの事件は、卒業式開式前の保護者に対する呼び掛けに対して刑罰が科せられるという「表現の自由」に対する苛酷な制裁が問題になっている事件です。

 控訴棄却(2008年5月29日)から、3年1ヶ月。上告趣意書提出(2009年1月26日)から、2年5ヶ月に。この間、最高裁では慎重な審理がキチンと尽くされてきたのでしょうか。
 私たちは、これまでに9回最高裁へ要請を行ってきました。そこで訴えてきたことは、原審の判断があまりにずさんだった、ということです。
 私たちは、法務省要請も行いました。外務省要請も行いきました。そして日弁連も2009年の人権擁護大会でこの問題を取り上げました。(資料参照)

 「表現の自由」は、民主主義社会の基盤を支える重要な権利であって、単に「式典を円滑に執り行う校長の職務遂行」等を理由に、制約することは許されず、まして刑事罰を科すことなど、あってはならないことです。「公共の福祉」の曖昧な適用については、国連自由権規約委員会から、懸念が表明されていました。
 国際人権の権威フォルホーフ教授は、私たちの鑑定依頼に対して、国際人権法規に照らし藤田さんは無罪と結論づけました。これが人権の世界標準ではないでしょうか。その指摘に目をつぶるのですか。

 しかも、刑事裁判なのに、有罪認定するにあたって、検察側が提出した証拠の中には、様々な矛盾や疑惑が残ったままです。
 検察が同一音源から作った2つの「ICレコーダ解析書」が相互に矛盾しています。さらに、原審の中の教頭の出発時間と制止時間が逆転しています。
 これらは「威力業務妨害罪」を成立させるための証拠捏造だったことの動かぬ証拠です。このままで判決を申し渡してしまって良いのでしょうか。

 本年3月、大阪地検特捜部事件に端を発した「検察の在り方検討会議」の答申では、「検察官は公益の代表者として、有罪判決の獲得のみを目的とすることなく、公正な裁判の実現に努めなければならない」との提言がなされました。この提言は、当裁判では生かされないのでしょうか。
 その上、都教委と校長が「被害届」を出した真の動機が解明されていません。開式前に藤田さんは退去させられ、卒業式自体は、国歌斉唱時に大半の卒業生が起立しなかったことを除いては、近年にない感動的な式だったと評価されて無事終わっているのに、3月の末になって「被害届」を出したのは余りにも不自然です。

 そもそも一連の卒業式をめぐる事件は、生徒・教員に起立斉唱を力尽くでも強制したい特定の政治勢力が都教委を動かして2003年に通達を発出させたことに端を発しています。同じ2004年に同じ崎坂誠司公安検察官により、立川反戦ビラ配付事件、葛飾政党ビラ配付事件、が立件され、当時の最高検次長検事の古田佑紀氏は現在最高裁第2小法廷の裁判官です。これらの事件に共通する、思想信条・言論表現を弾圧する特定の政治的意図こそ解明されなければなりません。
 学校が、一つの価値観で、上から下まで序列化される上意下達体制は、学校を大変硬直化したものにしています。教員の画一化は、必然的に、子どもたちの世界にも、一つの価値観で序列化する動きを作っていきます。今や学校では多様な価値観は認められず、個性を豊かに伸ばす弾力性のある教育は不可能になっています。その根元が、刑事罰まで科して行われている、「日の丸・君が代」の強制です。

 最高裁判所は、憲法の番人であって、公権力の番人ではありません。

人権を守る最後の砦として、学校に自由と人権を実現すべく、あくまで口頭弁論を開いて、ずさんな原審を徹底審理し、見直すよう求めます。
                           以上