宮川反対意見の次の下りは、ズバリ真実を言い切っている!
「本件通達は、式典の円滑な進行を図るという価値中立的な意図で発せられたものではなく、前記歴史観ないし世界観及び教区上の信念を有する教職員を念頭に置き、その歴史観等に対する強い否定的評価を背景に、不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制することにあるとみることができると思われる。」(17p)
日の丸君が代6・6最高裁判決【宮川光治裁判官反対意見全文】(後半)
4 平成11年8月に公布、施行された国旗及び国歌に関する法律はわずか2条の体技法にすぎないが、この制定に関しては、国論は分かれた。政府の国会答弁では、繰り返し、国旗の掲揚及び国歌の斉唱に監視義務付けを行うことは考えていないこと、学校行事の式典における不起立府斉唱の自由を否定するものではないこと、国旗及び国歌の指導に係る教員の職務上の責務について変更を加えるものではないことなどが示されており、同法はそのように共生の景気を有しないものとして成立したものといえるであろう。その限りにおいて、同法は、憲法と適合する。
これより先、平成11年3月告示の高等学校学習指導要領は、「入学式や卒業式などにおいて
は、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と規定しているが、この規定を高等学校の教職員に対し起立斉唱行為を職務命令として強制することの根拠とするのは無理であろう。そもそも、学習指導要領は、教育の機会均等などを確保し全国的に一定の水準を維持するという目的のための大綱的基準であり教師による創造的かつ弾力的な教育や地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分にあるものであって(最高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁参照)、学習指導要領のこのような性格にも照らすと、上記根拠となるものではないことは明白であると思われる。
国旗及び国歌に関する法律施行後、東京都立高等学校において、少なからぬ学校の校長は内心の自由告知(内心の自由を保障し、起立斉唱するかしないかは各教員の判断に委ねられる旨の告知)を行い、式典は一部の教職員に不起立不斉唱があったとしても支障なく進行していた。
こうした事態を、本件通達が何を企図したものかに関しては記録中の東京都関連の各会議議事録等の証拠によれば歴然としているように思われるが、原判決はこれを認定していない。しかし、原判決認定の事実によっても、都教委は教職員に起立斉唱させるために職務命令についてその出し方を含め細かな指示をしていること、内心の自由を説明しないことを求めていること、形から入り形に心を入れればよい、形式的であっても立てば一歩前進だなどと説明していること、不起立行為を把握するための方法等について入念な指導をしていること、不起立行為等があった場合、速やかに東京都人事部に電話で連絡をするとともに事故報告書を提出することを求めていること等の事態が認められるのであり、卒業式等にはそれぞれ職員を派遣し式の状況を監視していることや、その後の戒告処分の状況をみると、本件通達は、式典の円滑な進行を図るという価値中立的な意図で発せられたものではなく、前記歴史観ないし世界観及び教育上の信念を有する教職員を念頭に置きその歴史観等に対する強い否定的評価を背景に、不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制することにあるとみることができると思われる。
本件通達は校長に対して発せられたものではあるが、本件各職務命令は本件通達に基づいているのであり、上告人らが、本件各職務命令が上告人らの有する前記歴史観ないし世界観及び教育上の信念に対し否定的評価をしているものと受け止めるのは自然なことであると思われる。
本件各職務命令の合憲性の判断にあたっては、本件通達やこれに基づく本件各職務命令をめぐる諸事情を的確に把握することが不可欠と考えられる。
5 本件各職務命令の合憲性の判断に関しては、いわゆる厳格な基準により、本件事案の内容に即して、具体的に、目的・手段・目的と手段の関係をそれぞれ審査することとなる。目的は真にやむを得ない利益であるか、手段は必要最小限度の制限であるか、関係は必要不可欠であるかということをみていくこととなる。結局、具体的目的である「教育上の特に重要な節目となる儀式的行事」における「生徒等への配慮を含め、教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ること」が真にやむを得ない利益と言いうるか、不起立不斉唱がその目的にとって実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白で、害悪が極めて重大であるか(式典が妨害され、運営上重大な支障をもたらすか)を検討することになる。その上で、本件各職務命令がそれを避けるために必要不可欠であるか、より制限的でない他の選び得る手段が存在するか(受付を担当させるなど、会場の外の役割を与え、不起立不斉唱行為を回避させることができないか)を検討することとなろう。
6 以上、原判決を破棄し、第1に前記3の真摯性、第2に前記5の本件職務命令の憲法適合性に関し、改めて検討させるため、本件を原審に差し戻すことを相当とする。
最高裁第一小法廷
裁判長裁判官 白木勇
裁判官 宮川光治
裁判官 櫻井龍子
裁判官 金築誠志
裁判官 横田尤孝
【宮川光治裁判官反対意見(前半)】↓参照
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/20376678.html
「本件通達は、式典の円滑な進行を図るという価値中立的な意図で発せられたものではなく、前記歴史観ないし世界観及び教区上の信念を有する教職員を念頭に置き、その歴史観等に対する強い否定的評価を背景に、不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制することにあるとみることができると思われる。」(17p)
日の丸君が代6・6最高裁判決【宮川光治裁判官反対意見全文】(後半)
4 平成11年8月に公布、施行された国旗及び国歌に関する法律はわずか2条の体技法にすぎないが、この制定に関しては、国論は分かれた。政府の国会答弁では、繰り返し、国旗の掲揚及び国歌の斉唱に監視義務付けを行うことは考えていないこと、学校行事の式典における不起立府斉唱の自由を否定するものではないこと、国旗及び国歌の指導に係る教員の職務上の責務について変更を加えるものではないことなどが示されており、同法はそのように共生の景気を有しないものとして成立したものといえるであろう。その限りにおいて、同法は、憲法と適合する。
これより先、平成11年3月告示の高等学校学習指導要領は、「入学式や卒業式などにおいて
は、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と規定しているが、この規定を高等学校の教職員に対し起立斉唱行為を職務命令として強制することの根拠とするのは無理であろう。そもそも、学習指導要領は、教育の機会均等などを確保し全国的に一定の水準を維持するという目的のための大綱的基準であり教師による創造的かつ弾力的な教育や地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分にあるものであって(最高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁参照)、学習指導要領のこのような性格にも照らすと、上記根拠となるものではないことは明白であると思われる。
国旗及び国歌に関する法律施行後、東京都立高等学校において、少なからぬ学校の校長は内心の自由告知(内心の自由を保障し、起立斉唱するかしないかは各教員の判断に委ねられる旨の告知)を行い、式典は一部の教職員に不起立不斉唱があったとしても支障なく進行していた。
こうした事態を、本件通達が何を企図したものかに関しては記録中の東京都関連の各会議議事録等の証拠によれば歴然としているように思われるが、原判決はこれを認定していない。しかし、原判決認定の事実によっても、都教委は教職員に起立斉唱させるために職務命令についてその出し方を含め細かな指示をしていること、内心の自由を説明しないことを求めていること、形から入り形に心を入れればよい、形式的であっても立てば一歩前進だなどと説明していること、不起立行為を把握するための方法等について入念な指導をしていること、不起立行為等があった場合、速やかに東京都人事部に電話で連絡をするとともに事故報告書を提出することを求めていること等の事態が認められるのであり、卒業式等にはそれぞれ職員を派遣し式の状況を監視していることや、その後の戒告処分の状況をみると、本件通達は、式典の円滑な進行を図るという価値中立的な意図で発せられたものではなく、前記歴史観ないし世界観及び教育上の信念を有する教職員を念頭に置きその歴史観等に対する強い否定的評価を背景に、不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制することにあるとみることができると思われる。
本件通達は校長に対して発せられたものではあるが、本件各職務命令は本件通達に基づいているのであり、上告人らが、本件各職務命令が上告人らの有する前記歴史観ないし世界観及び教育上の信念に対し否定的評価をしているものと受け止めるのは自然なことであると思われる。
本件各職務命令の合憲性の判断にあたっては、本件通達やこれに基づく本件各職務命令をめぐる諸事情を的確に把握することが不可欠と考えられる。
5 本件各職務命令の合憲性の判断に関しては、いわゆる厳格な基準により、本件事案の内容に即して、具体的に、目的・手段・目的と手段の関係をそれぞれ審査することとなる。目的は真にやむを得ない利益であるか、手段は必要最小限度の制限であるか、関係は必要不可欠であるかということをみていくこととなる。結局、具体的目的である「教育上の特に重要な節目となる儀式的行事」における「生徒等への配慮を含め、教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ること」が真にやむを得ない利益と言いうるか、不起立不斉唱がその目的にとって実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白で、害悪が極めて重大であるか(式典が妨害され、運営上重大な支障をもたらすか)を検討することになる。その上で、本件各職務命令がそれを避けるために必要不可欠であるか、より制限的でない他の選び得る手段が存在するか(受付を担当させるなど、会場の外の役割を与え、不起立不斉唱行為を回避させることができないか)を検討することとなろう。
6 以上、原判決を破棄し、第1に前記3の真摯性、第2に前記5の本件職務命令の憲法適合性に関し、改めて検討させるため、本件を原審に差し戻すことを相当とする。
最高裁第一小法廷
裁判長裁判官 白木勇
裁判官 宮川光治
裁判官 櫻井龍子
裁判官 金築誠志
裁判官 横田尤孝
【宮川光治裁判官反対意見(前半)】↓参照
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/20376678.html