「式典は滞りなく行われているのに見張りが置かれ、現場は大きく変わった。そのことに戦慄を感じない裁判官の感性に失望している」と原告。

 《NHKニュース(6月6日)》
 ◇ 君が代斉唱 最高裁で反対意見

 東京都が教職員に君が代の斉唱を義務づけていることが憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、最高裁判所は、先月30日に引き続き、憲法に違反しないという判断を示しましたが、裁判官の1人は「歴史観に反する行為を強制するもので、憲法に違反しないかどうか厳格に検討すべきだ」という反対意見を述べました。
 この裁判は、都の教育委員会の通達に基づいて君が代を起立して斉唱するよう命じられた都立高校の元教職員13人が「思想や良心の自由を保障した憲法に違反する」と訴えたものです。
 判決で、最高裁判所第1小法廷の白木勇裁判長は「思想や良心の自由を間接的に制約する行為だが、教育上の行事にふさわしい秩序の確保を目的としたもので、憲法には違反しない」という判断を示し、元教職員の敗訴が確定しました。



 一方、5人の裁判官のうち、宮川光治裁判官は「教育委員会は、職員を派遣して式典を監視するなど、教職員らの歴史観に反する行為を強制しており、憲法に違反しないかどうか厳格に検討すべきだ」という反対意見を述べました。

 この問題を巡っては、先月30日、最高裁判所の別の小法廷が、全員一致で憲法に違反しないという判断を示しています。

 この問題では、今月3日、大阪府議会で教職員に君が代の斉唱を義務づける全国で初めての条例が可決されています。

 判決について、原告の1人の新井史子さんは「反対意見は私たちの言い分を取り入れてくれたが、判決としては訴えが退けられ憤りを感じている。式典は滞りなく行われているのに見張りが置かれ、現場は大きく変わった。そのことに戦慄を感じない裁判官の感性に失望している」と述べました。
 一方、東京都の大原正行教育長は「主張が認められたのは当然のことと考えている。今後とも学校における国旗・国歌の指導が適正に行われるよう取り組んでいく」というコメントを出しました。

『NHKニュース』(6月6日 18時23分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110606/t10013348071000.html


 《東京新聞(6月7日)》
 ◇ 君が代命令再び合憲
 ~最高裁上告棄却 1人が反対意見

 卒業式の君が代斉唱時に起立しなかったことを理由に、退職後の再雇用を拒否したのは違憲だとして、東京都立高校の元教職員十三人が都に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は六日、起立を命じた校長の職務命令は合憲とし、元教職員側の上告を棄却。元教職員らの敗訴とした二審東京高裁判決が確定した。
 起立斉唱をめぐっては、五月三十日に第二小法廷が、裁判官全員一致で合憲の初判断を示しており、最高裁では二件目。今回の判決は裁判官五人中四人の多数意見で、弁護士出身の宮川光治裁判官は反対意見を述べた。
 多数意見は前回判決と同様に「職務命令は思想、良心の自由を*間接的に制約するが、式典を円滑に進行する目的や公務員の公共性などに照らし、制約する*必要性、合理性はある」として合憲と結論づけた。
 宮川裁判官は「起立斉唱しない行為が*思想、良心の『核心』とみることもできるので、職務命令以外の代替手段がなかったかをあらためて検討すべきだ」と主張、二審判決を破棄し、審理を差し戻すのが相当だとした。

 ◇ 都通達の「意図」指弾 反対裁判官

 君が代訴訟の最高裁判決で、校長の職務命令を合憲とする多数意見に反対した宮川光治裁判官は、式典での起立斉唱を教職員に義務付けた東京都の通達(二〇〇三年)の行き過ぎに言及した。
 宮川裁判官は、反対意見で一九九九年施行の国旗国歌法と、同年告示の学習指導要領がともに起立斉唱を強制していないことを踏まえ、「通達が事態を一変させた」と指摘。通達の意図について「日の丸、君が代が戦前の軍国主義に役割を果たしたという教職員らの歴史観を否定し、不利益処分によって、その歴史観に反する行為を強制しようとした」との見方を示した。
 判決後、記者会見した原告弁護団の秋山直人弁護士は「君が代に反対する教職員を、教育現場から排除するという都の意図を明確に判断している」と宮川裁判官の意見を評価。新村響子弁護士も「教育行政に慎重さが求められることに変わりはない」と強調した。
 一方、原告の新井史子さんは「通達後、(生徒らに)式典で起立しなくてもいいという内心の自由を説明することなどは禁じられた。反対意見はあっても、上告棄却の結論には失望している」と話した。
 原告の清川久基さんは、大阪府で三日に起立斉唱を義務付ける条例が成立したことに触れ、「愛国心はお上が強制するものではない」と危機感をあらわにした。

 『東京新聞』(2011/6/7)

≪パワー・トゥ・ザ・ピープル!!
 今、教育が民主主義が危ない!!
 東京都の「藤田先生を応援する会有志」による、民主主義を守るためのHP≫
 http://wind.ap.teacup.com/people/5357.html