東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城、岩手、福島の3県で、認知症高齢者や知的・精神障害者に代わって財産管理などを行う成年後見人ら32人が死亡したり、遠隔地に避難するなどして後見事務が不可能になっていることが分かった。認知症高齢者らが孤立化する恐れがあることから、3県の家裁は安否確認を続けるとともに、新たな後見人の選任も急ぐ。

 成年後見制度は、親族の申し立てなどに基づき、家裁が本人の判断能力の程度に応じて「成年後見人」「保佐人」「補助人」などを選任し、財産管理や介護施設の入所手続きをさせる。被災地域で後見の対象になっている人は3県で計約4500人に上るとみられる。

 震災後、3県の家裁が電話や手紙で後見人らの安否を確認したところ、4月27日時点で▽宮城18人▽岩手4人▽福島10人--の計32人が後見事務を行えていない状態にあった。

 このうち、後見人、保佐人などの死亡が確認されたのは▽宮城8人▽岩手2人▽福島2人。それ以外は、けがや遠隔地への避難などで後見不能になっているケースとみられる。

 最高裁家庭局の担当者は「震災で親族を失ったケースが多いと思われるので、今後は本人の権利擁護のため弁護士や司法書士などの専門家を後見人とすることが必要になってくる」と話している。
【伊藤一郎】

【毎日新聞 2011年5月5日 東京朝刊