「待ったなし!今こそ可視化の実現を~冤罪はこうして作られる~」に多くの市民が集う
冤罪事件が現在も次々に起きている中で、全面可視化を求める市民が日弁連会館に集い、取調べの可視化を求める市民集会が2日、開催されました。主催は同実行委員会。
厚生労働省元局長の村木厚子さんに無罪判決が言い渡された「厚労省元局長事件」では、冤罪が作りあげられていく過程が裁判で明らかになった報告を弁護団の河津博史弁護士が行いました。
現在行われている取調べは密室であり、そこでどのような取調べが行われたのか、後からそれを検証することは容易ではなく、冤罪の被害者が失ったものは取り返せません。
なぜ、無実の人が「自白」をしてしまい、どのような状況で「自白」が作り上げられていくのか?
集会は、ドキュメンタリー映画『つくられる自白~志布志の悲劇』「こうして冤罪は作られた~冤罪被害者の声」の上映後、このような冤罪を繰り返させず、これ以上の冤罪被害者を生まないために、「今、なぜ可視化が必要なのか」「取調べの全過程を録音・録画(可視化)することについて」、「もはや必要不可欠である」ことが冤罪被害者である当事者や弁護士、元裁判官、市民団体がそれぞれの立場から発言し、議事の最後で集会決議が採択されました。
可視化の実現を目指して運動してきた日弁連の宇都宮健児会長は、郵便不正事件の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件で検察が逮捕起訴されていることにふれ、恐るべき事件だと指摘し、これまで虚偽の自白に基づいて冤罪が作られてきたが、これは証拠そのものを改ざんした事件で検察の根幹を揺るがす問題背あると指摘。現在法務省で、検討会が作られて議論されているが、もう議論する段階ではなく実現する段階に入ったと強調。
また、可視化が必要だという市民の声が国会議員に影響力を与えていくことについて、現在新会長として”市民目線で第2次司法改革を”と取り組んでいる中で、司法修習生の給費制廃止問題も”市民とともに”取り組んだことがが大事であり、法曹の世界に貧富の格差が持ち込まれようとされたが、市民団体も一緒になって取り組んできて政党を動かして貸与制を延期させることができたと報告し、
可視化についても、本来裁判員制度実施の前に可視化が実現しているべきだったが、すでに裁判員制度が実施されている中で一刻も早く実現しなければならない課題であり、
日弁連だけではなくて冤罪被害者を支援する市民団体。市民と一緒になって、可視化の実現を急ぎたいとのべ、最後に「がんばりましょう」と呼びかけ、参加者は大きな拍手で答えました。
集会アピール
本日の集会では、足利事件、布川事件の当事者や厚生労働省元局長事件の弁護団、市民団体、ジャーナリスト、元裁判官など、様々な立場から「今なぜ、取調べの全面可規化が必要なのか」を考えました。
冤罪事件の当事者からは、密室の取調室で虚偽の自白を強要された過酷な取調べの実態がリアルに語られました。
また、取調室で何があったのかを検証する方法がないまま、捜査官が作った「自白調書」が裁判では重要な証拠として扱われ、多くの冤罪を生み出してきたことが明らかにされました。
世界では、密室での取調べがウソの「自白」を生み出してきたこと、密室であるがゆえに自白に至った過程を検証することが困難であることを反省し、取調べで弁護人の立会いを認め、取調ぺの全過程の録音・録画を行っています。
欧米諸国だけでなく、すでに近隣の韓国や台湾、香港においても本格的な取調べ過程の録音・録画が開始されています。
また、国連人権機関からは再三にわたって日本政府に対して、代用監獄の廃止と取調べの全面可視化を行うように勧告が出されています。
ところが日本では、取調室はいまだ深い闇の中にあります。法務省は、取調ぺの全面可視化に対し消極的な姿勢を示しています。
また現在、警察、検察で行われている「取調べの一部録音・録画」は、すでに自白している被疑者について、捜査官が調書を読み上げ、被疑者がそれに署名する様子を録音・録画するだけで、逆に冤罪を生み出すことになります。
2009年5月から裁判員裁判が始まり、市民から選ばれた裁判員も自白が強要されたものかどうか、信用できるのかどうかなどを判断しなければならなくなりました。現在のような取調べが続けば、裁判員もウソの「自白」に引きずられ、冤罪に加担してしまうおそれがあります。
厚生労働省元局長事件では、大阪地検特捜部が関係者にウソの供述を強要した違法捜査が明らかになり、さらに証拠資料の改ざんが発覚し、検察に対し厳しい批判の声があがっています。
この事件は、一検事の個人的な問題でなく、日本の検察・警察の捜査機関の構造的な問題から起きたものです。冤罪の悲劇を繰り返さないためにも、取調べの全面可視化はまったなしの緊急な課題です。
10月に行われた新聞の世論稠査では、取調べの全面可視化について、80%以上の人が「賛成」と回答するなど、社会的関心が非常に高まっています。
私たちは、このような状況を踏まえ、すべての事件における取調ぺの全面可視化の実現にむけて、早急に国会で必要な法改正を行うよう強く求めます。
2010年12月2日
「取調べの全過程の可視化を求める12・2市民集会」参加者一同