放送を語る会は2010年7月の参院選挙報道をモニターし報告と提言をまとめました。

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2010年参院選・テレビ報道を検証する ~モニター報告と提言~

         2010年10月29日   放送を語る会
1.モニターのねらい

 選挙報道に求められているのは、有権者の政治選択に資する公平かつ正確で多様な情報提供である。しかし、これまでの選挙報道、特にテレビによる報道に対して私たちはさまざまな疑問を抱いてきた。例えば、国会に占める議席数に対応させたと推測できる各政党への時間配分は果たして政治的に公平といえるか、といった疑問である。時間配分の差は大政党に有利に働き、少数政党は軽視され結果的に政治的力関係の現状を固定することにつながっていないだろうか。
 勿論「政治的公平」の具体的内容をめぐっては意見の分かれるところであるが、少なくとも公示日から投票日までの期間はすべての政党の主張を可能な限り平等に伝えることが求められるのではないか。また政治的争点の報道では有権者の関心と報道の視点がずれていないか、意図的な話題設定が結果的に争点隠しを招いていないか、有権者の理解に役立つ適切な内容になっているかなど、選挙報道では検証すべき問題が少なくない。
 こうした問題意識を出発点に、放送を語る会では2010年7月の参議院選挙のTV報道をモニターし、有権者の知る権利に奉仕できているかを検証した。

 モニターを行なうにあたって重視した視点は次のようなものである。
 1)各政党の政策や主張が公平に伝えられているか
 2)政治的争点がどのように報道されているか
 3)キャスター・コメンテーターの論評、報道姿勢や編集方針に問題はないか

2.対象番組・モニター方法

 とりあげたのは、公示日(6/24)から投票日(7/11)までの18日間にNHK・在京民放キー局で放送されたニュース、政治討論、選挙関連番組、開票速報など112本。放送を語る会会員が手分けして録画し、その内容を整理集計した。民生用機器で録画し時間計測など各自手作業で集計したため文中表示する時間に若干の誤差がある。

モニターした番組は以下のとおりである。(資料1「2010参院選報道モニター番組リスト」参照)

NHK― 「ニュース7」「ニュースウォッチ9」「参院選特集」「開票速報」
NTV― 「news every」「NEWS ZERO」「ウェークアップ!ぷらす」
TBS― 「NEWS23X(クロス)」、
フジテレビ―「スーパーニュース」「ニュースJAPAN」「新報道2001」
       「踊る大選挙戦(開票速報)」
テレビ朝日―「報道ステーション」

3.各党の取り上げ方は政治的公平が保たれていたか

  ニュース報道番組の各党時間配分
 NHK・民放各局とも、各党の紹介順は改選前の議席の多い方から、時間配分は改選前の議席数を勘案する、などを基準にしていると思われる。(資料2「各番組党派別放送時間」参照)
例えば、6/24公示日の「ニュース7」(NHK)における民主(18分50秒)、自民(13分40秒)、公明(6分50秒)、共産(5分35秒)、社民(4分35秒)、国民新党(4分40秒)、みんなの党(4分25秒)、たちあがれ日本(2分17秒)、新党改革(2分)が典型的数字。
「ニュースウォッチ9」7月5,6,7日の「党首を追って」3回シリーズでも、民主(7分45秒)、国民新党(3分15秒)、自民(6分29秒)、公明(5分10秒)、共産(4分56秒)、社民(3分14秒)、みんなの党(3分15秒)、たちあがれ日本(2分1秒)、新党改革(2分)となっている。ここでは紹介順が与党から野党へと配慮が加えられている。

二大政党民主・自民両党と時間配分の最も少ない新党改革の放送時間を比べてみる。

「ニュース7」       民主:自民:新党改革≒8:6:1

「ニュースウォッチ9」   民主:自民:新党改革≒3.4:2.8:1

「news every」(日本テレビ)は公示日、党首演説・比例候補などを取り上げ民主(3分50秒)、自民(1分57秒)、公明(1分7秒)、共産(58秒)、社民(44秒)、国民新党(1分13秒)、みんなの党(1分35秒)、たちあがれ日本(35秒)、新党改革(37秒)。党首演説のコーナーでは民主のみ菅代表・小沢前幹事長(当時)二人を紹介、ここでは国民新党、みんなの党の紹介時間が議席数に比べて長い。

各党割り当て時間のおおよその比は、民主:自民:新党改革≒6:3:1。

「報道ステーション」(テレビ朝日)7月1~8日「党首インタビュー」では、民主(27
分)、自民(24分30秒)、公明(10分)、共産(10分)、社民(12分)、国民新党(17分)、
みんなの党(15分)、たちあがれ日本(3分30秒)、新党改革(3分30秒)。

各党への時間配分をみると、民主:自民:新党改革≒8:7:1。

 改選前の議席数を勘案した各党への時間配分という基準は一見公平のようだが、数字を
具体的に検討すると、実際は政府与党あるいは二大政党の主張や政策ばかりが大きく扱わ
れ、少数政党がないがしろにされていることが明瞭になる。結果としてメディアが民主党
と自民党の二党に肩入れし、批判の声もある二大政党制を推進することにならないだろうか。

(略)


~~~~目次~~~~~~~~~~~~~~~

2010年参院選・テレビ報道を検証する

~モニター報告と提言~

            放送を語る会 http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/

1.モニターのねらい
2.対象番組・モニター方法
3.各党の取り上げ方は政治的公平が保たれていたか
  ニュース番組の各党時間配分
  政治討論番組の各党時間配分
4.政治的争点はどう伝えられたか
  「消費税」に絞り他の争点は後景に
  消費税増税を誘導・既成事実化
その他の争点
5.報道姿勢・編集方針、コメンテーターのスタンスなど
  政策論議より政局報道に傾斜
  問われるキャスターのスタンス
  選挙報道はどう位置づけられているのか
6.私たちの提言
  提言1 政党の時間配分を見直し、平等・政治的に公平な選挙報道を
  提言2 政治的争点の報道は多角的に掘り下げて
  提言3 政局報道から政策論議へ

  資料1 2010.7参院選報道モニター番組リスト
  資料2 番組ごとの党派別放送時間
  「ニュース7」「ニュースウィッチ9」(NHK)
  「news every」「ウェークアップ!プラス」(NTV)
  「NEWS23X(クロス)」(TBS)
  「スーパーニュース」「ンユースJAPAN」(フジ)
  「報道ステーション」(テレビ朝日)
  資料3 討論番組党派別発言時間・回数

資料1参院選報道モニター番組リストBook1
資料2-1NHK「ニュース7」党派別放送時間Book1
資料2-2NHKニュース9(改訂版)党派別放送時間比較Book1
資料2-3日本テレビ「news every」党派別放送時間Book1
資料2-4TBS「NWES23X」(改訂版)党派別放送時間比較Book1
資料2-5フジ「スーパーニュース党派別放送時間Book1
資料2-6フジ「ニュースJAPAN」党派別放送時間Book1
資料2-7 テレ朝「報道ステーション」党派別放送時間__Book1
資料3討論番組党派別発言時間・回数Book1    以上

【NHKを監視・激励する視聴者コミュニティHP 11月5日(金)
  NHKがより優れた番組を提供するよう監視・激励してゆきます。
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