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《10・20日弁連院内集会》 配付資料から

 ★ 子どもの貧困の根絶に向けて(2)

 ★ 当事者の声④ 父親・非正規労働者

 1 突然の「派遣切り」

 私は,約2年前の2008年12月に,大手自動車会社に「派遣切り」されました。その「派遣切り」は,約1400人の非正規労働者全員を期間途中で解雇するという大変乱暴なものでした。
 私は,故郷に残してきた妻と子ども3人の生活を守るため,少しでも給料を増やそうと,正社員以上に必死に働き,残業や休日出勤も積極的にこなしてきました。給料は手取り25万円程度でしたが,自分の生活費は切り詰めて,できるだけ家族に仕送りにあてていました。
 家族の生活にも余裕はなく,妻にもパートをしてもらい苦労をかけました。子どもたちも,口には出しませんでしたが,いろいろ我慢していたと思います。しかし,「派遣切り」されるまでは,子どもたちの.ために必要なお金は,なんとか捻出できていました。
 長男は大学へ推薦進学を決め,長女は本人が希望した高校に行き,次男もサッカー部で頑張るなど,子どもたちは,それぞれの夢に向かって頑張っていました。
 そんな矢先,突然,1か月後に解雇になると言われ,私は頭が真っ白になりました。「妻に解雇のことをどう話したらよいだろう。」,「長男の大学の入学金をどうしよう。」,そんな思いで頭がいっぱいでした。


 2 「派遣切り」が狂わせた子どもたちの未来

(1)長男は,「派遣切り」の直前に公立大学に推薦入学を決めていました。長男は,高校時代,サッカー部のキャプテンや高校の生徒会長として活躍し,保父になりたいという夢を持って,大学進学を決めました。大学の授業料は奨学金で,その他の費用は長男がバイトしてまかなっていました。
 しかし,長男は,2009年の年末,就職すると言って大学を辞めました。本当に気持ちの優しい子なので,妹や弟の窮状や親が苦労している姿を見て,自分も働いて家計を助けなければと思ったのでしょう。
 私が「派遣切り」に遭わなければ,長男は大学を卒業し,夢を実現していただろうと思うと,長男に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

(2)長女は,今,高校3年生です。私が「派遣切り」された後,授業料の一部免除を申請しましたが,それでも学費を滞納していまい,今年の2月には,学校側から退学か留年の選択を迫られました。
 授業料の全額免除の制度はなく,結局,親兄弟からお金を借りてなんとか納めました。もっとも,私の場合,お金を貸してくれる人がいただけ,まだ救いがあるのかもしれません。
 長女は,小さいころからおしゃれ好きで,「派遣切り」の前は,デザイナーになりたい,専門学校に進学したいと言っていました。しかし,「派遣切り」の後は,就職希望に変わり,今は就活に励んでいます。
 地元には,それで食べていけるような仕事はほとんどなく,就職希望の生徒はみんな苦労しているとのことです。この前娘に聞いたときには,希望者の3割程度しか就職が決まっていないと言っていました。長女が進学したい気持ちを我慢してくれていることはよく分かっており,長女に対しても申し訳ない気持ちでいっぱいです。

(3)次男は,今,中学2年です。小学校の頃はサッカーを頑張っていましたが,中学生になって卓球部に入りました。
 授業料や給食費は免除制度を利用していますが,卓球のシューズや遠征費といった部活の費用はかかりますし,学校の制服やジャージといった学用品の費用等も必要です。「派遣切り」の後は,15万円程の失業保険等でやりくりしていましたから,そのような費用にも困りました。
 長男が大学を辞めたのは,そのような状況を見かねたからでしょう。長女も学校が終わった後,バイトをして家計を助けてくれています。長男と長女が家にお金を入れてくれるおかげで,家族の生活が成り立っています。

 3 親の貧困によって子どもの夢が奪われてはならない

 私は,派遣社員になる前,約17年間,正社員として勤務していました。正社員時代には,家族旅行に行ったり,家族でキャンプを楽しんだりしました。このときは,家族の生活費や子どもの学費に困ったことはありませんでした。
 しかし,派遣社員になってからは,子どもの学費にも苦労するようになりました。例えば,授業料は免除でも入学金は必要だったり,学校の制服が高かったり,学校までの定期代が何万円もしたりといったことがありました。年収200~300万円の労働者がこのような費用を負担するには,とことん生活を切り詰めなければなりません。しかも,非正規労働者は,会社の都合次第ですぐにクビになってしまいます。
 親がこのような働き方をしている中で,子どもたちが健やかに成長し,努力して自分の夢や希望を叶えることは,大変困難だと思います。私の長男と長女も,私が「派遣切り」されたことで,夢を奪われてしまいました。
 親の貧困によって子どもの夢が奪われてはなりません。子どもたちの健やかな成長のためには,すべての労働者が人間らしく働き,安定した生活を送れる社会が必要だと思います。

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