◎ 子どもの権利条約:第3回日本政府報告の審査を傍聴して

代表委員 中村伸郎(DCI大阪セクション)

 はじめに
 子どもの権利条約が発効して20年。日本が子どもの権利条約を批准して15年。この5月26日~28日に第3回日本政府報告の審査がジュネーブで行われました。審査の概要、特徴、日本における子どもの権利の状況について報告します。


絵 中村千恵子

 ただ、今回の審査は、私が当初想像していたことと少し違っていたこともあります。それは、日本からの傍聴団は約110名いたのですが、全員が一度に傍聴できなかったことです。直前までDCI(Defence for Children International)日本支部が事務局に要求しましたが、結局、当日の朝、半分だけ。そして、午前と午後、交代で傍聴するということになったのです。これは、自由権規約の審査の時にパレ・デ・ナシオンの大きな会議室を準備してくれた事務局と大きな違いがありました。理由ははっきりと分かりません。うわさはありますが・・・。
 そのために、私も半分しか傍聴できませんでした。仲間の話やメモも加えての報告です。


 1.日本政府報告について

 約4割が従前の報告内容です(民主党中心の政権になる前に出されたもの)。誠実に条約と勧告を実行することを怠っていることを示しています。ですから、委員から「前の勧告はどうなっているのか。それを基準にして政策につなげているのか」などと厳しく批判されたのです。

 2.子どもたちによるプレゼンテーション

 子どもたちは、自分の生活を基に、居場所や身近な大人の存在の必要性、受験競争がもたらしたものなど、約1時間、一生懸命に訴えました。

 3.厳しい状況にある日本の子どもの権利

 国連子どもの権利委員は、次のような厳しい指摘をしました(多くは、私たちのカウンターレポートを基にしていました)。

 ★子どもに関する予算の減少について。子ども手当、高校教育無償化が始まるが、子ども支援はヨーロッパの3分の1である。
 ★ユニセフの調査によれば、日本の子ども(15歳)の30%が「さみしい」、子どもの貧困率は14%と高い。これは「競争の教育」と関係があるのではないか。競争への負担、人格への影響があるのではないか。
 ★保育・教育予算が削減され、「勝者」と「敗者」の格差がひどい。民営化による施設が増加し、財政支援が減っている。保育所など入れ物だけを作ってこと足りるのではない。
 ★子どもの現実を土台に「最善の利益」が図られているか、具体的に報告を。
 ★ひとり親家庭にどんな支援をしているか。虐待・育児放棄・子どものメンタルヘルス・自殺・いじめ・暴力にどのような措置をとっているか。
 ★条約と法の調和、整合性はあるのか。
 ★条約の位置づけはどうなっているのか。裁判官は条約を活用しているか。

 4.日本政府の回答と報告

 「国内法との整合性は国会で討議した」
 「裁判官については、最高裁から条約の内容を、説明を付けて送付した」
 「子ども若者育成支援推進法の立法過程ではNGOの意見を聞かなかったが、国会討議の中では国民の意見も入っている」
 「自衛隊の募集を18歳からにした」
 などであった。
 子どもの権利委員会からの総括所見は6月14日に出される予定。
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 追記6月11日、「総括所見」が出されました。現在、日本委員会で翻訳中です。

 『国際人権活動ニュース』(2010年6月25日 第105号)
 国連経社理特別協議資格NGO 国際人権活動日本委員会
URL:http://jwchr.s59.xrea.com/

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