≪パワー・トゥ・ザ・ピープル!!
 今、教育が民主主義が危ない!!
東京都の「藤田先生を応援する会有志」による、民主主義を守るためのHP≫

YI(都立高教員)

 ①「エンカレッジスクール」とは
 私の勤務校「エンカレッジスクール」は、その昔、中退率の高さや問題行動の多さの他、地域住民からの評価も低かった。そんな状況を打破したい現場と、東京都の新しいタイプの学校作りが呼応して、7年前に指定された学校です。様々な理由で力を発揮出来ない生徒を「勇気付け、励まし、力づける」学校として改善が見られたと報告書が出ていますが、実態は様々な問題点を抱えています。
 30分授業、2人担任制、習熟度別少人数授業、豊富な体験学習、きめ細かな生活指導、学力試験の無い入学者選抜、と様々な特徴があり、副校長も2人います。
 一般に、意欲不足の生徒対象に、活路を見出す手助けをする学校として認知されているようです。しかし現場は、目の回るような多忙さ故、教員の意識は様々で、共通認識を図る余裕すらありません。当然4.13通知(注:「職員会議採決禁止」)の弊害も大きいでしょう。結果として、表面上の改善は作り出せたとしても、多くの矛盾や犠牲の上に立っていることは、否定出来ない事実と感じています。

 ②エンカレッジの一日


 朝8時、生徒部教員、生徒会生徒、時には朝清掃の罰を受ける生徒も一緒に正門は賑やかです。「おはようございます」と登校生に声かける生徒の脇で、教員は頭髪や身だしなみ等のチェックを入念にし、茶髪や異装等で再登校させることもあります。
 1年のみ30分授業を3コマ。3限から全学年揃って50分授業。携帯電話や服装違反は、没収後に反省文を書かせて返却。授業規律違反者にはカード発行の枚数で指導対象。休み時間には、教員が廊下でチャイム着席を促す大声が聞こえます。
 午後には、体験学習等の学校設定科目が並び、一般教科の授業は僅かです。教員は生徒引率の為に学校を離れ、あちこちへ散ります。
 放課後には様々な会議。とはいえ、企画調整会議を中心とした連絡徹底がメインで、議論が深まることは滅多にありません。
 気が付くと退勤時間。遅くまで仕事する若い先生も多くいます。帰宅しても翌日のことを考えると、パソコンに向かい、就寝は1時~2時。身が持たないと感じることもしばしばです。
 異動当初ビックリしたのは、玄関の下駄箱に「都教委」専用のものが5~6人分あり、各地教委や議員団の視察、マスコミの取材も多くあった事です。

 ③本当に生徒の為か。
 生徒達にもっと関わりたいと思っても、十分な時間が無いのは今やどの学校でも同じかも知れません。しかし、「勇気付け、励まし、力づける」為には十二分に生徒の話を聞き、信頼関係を作る為の十分な時間が必要です。今の教育行政では、身を粉にして働いても不十分な対応しか出来ないのが現状です。
 中には、中学時代の様々な苦悩によるハンディーを克服し、体験学習等を通して前向きに積極的に成長出来た生徒も少なからずいます。しかし、過剰管理に抵抗する生徒と教員の衝突も多く、場合によっては学校を去るケースも少なくありません。
 様々なタイプの学校設置で、都民のニーズに応えるとは聞こえが良いですが、本当に生徒の為になっているのかは疑問です。
 入試倍率は確かにトップクラスですが、もしも人気の理由が「学力検査が無い入試」=「ここなら入れる」といった安易な考えだったり、「30分授業や定期考査無し」=「勉強しなくても大丈夫」という甘い期待だったりすれば、生徒にとっても教員にとっても互いに不幸な話です。
 鳥海教育委員発言が示すように、競争に負けた子ども達には、それなりの対応で…という机上の論理と、現場で目の前の一人ひとりを大切に関わりたいという実践が噛み合うことは至難の業です。
 そろそろ現場の声を含む総括によって、見直しが必要な頃だと思っています。

 『藤田先生を応援する会通信』(2010/2/8 第39号)