国連 事前未編集版 一般配布
市民的及び政治的権利に関する国際規約
国連文書CCPR/C/JPN/CO/5
2008年10月30日
原文:英語
自由権規約委員会第94回会期2008年10月13日~31日 ジュネーブにて規約40条に基づき
締約国から提出された報告の審査
自由権規約委員会による最終見解
日本
1.当委員会は2008年10月15日及び16日に開催された第2574回および第2576回会議(CCPR/C/SR.2574,2575,2576)において、日本(CCPR/C/JPN/5)より提出された第5回定期報告を審査し、2008年10月28日及び29日に行われた第2592回、第2593回及び第2594回会議において下記の最終見解を採択した。
A・はじめに
2.委員会は締約国の包括的な第5回定期報告や諸問題の一覧に対する書面回答、並びに委員会の口頭による質問に対する代表団の詳細な回答を歓迎する。しかしながら、2006年12月に提出されたこの報告は、2002年10月までの期限であったことを示す。委員会は高いレベルの各省庁の構成による大代表団、並びに意見交換の際に強い関心を示した大勢の国内NGOの出席を感謝する。
B・評価すべき側面
3.委員会は特に男女による公平な権利の享有の促進を目的とする幾つかの法的及び制度的な措置の採択を歓迎する。
(a) 1999年の男女共同参画社会基本法の採択。
(b) 男女共同参画内閣府担当大臣の任命。
(c) 2020年までに社会のすべての分野において、女性が指導的立場を少なくとも30%を占める目標を設置した2005年の内閣による第2次男女共同参画基本計画の承認。そして、
(d) 男女共同参画基本計画を促進し、男女平等社会発展のための基本政策を調整する男女共同参画局の設立。
4.委員会は家庭内暴力(DV)や性的暴力そして人身売買を含む、男女の性差に基づく暴力や搾取の犠牲者を擁護し、援助するために締約国によって講じられた措置を示す。すなわち、(a) 配偶者間暴力に対する相談支援センターや女性指導事務所、そして女性保護施設の設立 (b) 保護規定の数の増加や改定された配偶者間暴力の防止と犠牲者保護に関する法の基でのその範囲の拡大、そして(c) 2004年に採択した人身取引対策行動計画や人身取引対策のための省庁間連絡委員会(特別研究班)の設立。
5.委員会は、締約国が2007年に国際刑事裁判所のローマ規程への加入を歓迎する。
C・主要な懸念項目と勧告
6.委員会は、締約国の第4回定期報告の審査後に出された多くの勧告が、未だ実行されていないことに懸念を有する。
締約国は前回の最終勧告同様、委員会により採択された今回の勧告を実行しなければならない。
7.委員会は、規約への違反が無いとした最高裁判決以外で、規約の条項(第2条)に直接言及する地方裁判決に関する情報の欠如を提示する。
締約国は、規約の適用や解釈が裁判官や検事及び弁護士に対する専門研修として持たれ、そして規約の情報が下級審を含むすべてのレベルの司法界に広まるよう保証せよ。
8.委員会は、締約国が規約の第一選択議定書を批准しないひとつの理由として、批准することによって、司法の独立性を含む司法制度に問題を生じさせるかも知れないという懸念であることを提示する。
締約国は、委員会の普遍的な法体系が4審目の訴えではなく、事実や証拠の正当な評価や裁判所による国内法の適用や解釈を検討することが、原則として妨げられていることを考慮しながら、選択議定書を批准するよう検討せよ。
9.委員会は、締約国が未だ独立した国内人権施設を設立していないことを懸念する。(第2条)
締約国はパリ原則(総会決議48/134、付属文書)に従い、締約国により受け入れられた国際的な人権基準を網羅する広範な委任を行い、公権力による人権侵害に対する訴えを検討し行動する能力を持った政府機関ではない独立した国内人権施設を設立せよ。また、この施設のために十分な財政的および人的資源を計上せよ。
10.「公共の福祉」は人権に恣意的な制約を掛ける根拠として頼られているのではない、と言う締約国の説明に注意を払いながら、委員会は、「公共の福祉」の概念は曖昧かつ範囲が大まかで、規約の基では可能な範囲を超える制約を許すことになると、その懸念を繰り返す。(第2条)
締約国は、「公共の福祉」の概念を定義し、「公共の福祉」を根拠に、規約で保証された権利に与えるいかなる制約を特定する法律を採択すべきだ。
11.委員会は、女性に影響を与える民法における差別的条項について懸念を繰り返す。例えば、離婚後6ヶ月間の再婚の禁止や、男女の婚姻年齢の相違である。(第2条1項、第3条、第23条4項、そして第26条)
締約国は、女性が離婚後における再婚を禁止されている期間の撤廃と、男女の最低結婚年齢
の調和を計りながら、民法の改正をすべきだ。
12.委員会は、公職における女性代表の数的目標にも拘わらず、女性は国会の議席で18.2%のみ、省庁の部長クラスでは1.7%であり、2008年女性社会参加促進計画で取り決めた数的目標のいくつかは極めて控えめであり、例えば、2010年までの省庁の部長と同等の地位に対する女性代表の目標は5%であることに懸念を示す。(第2条1項、第3条、第25条、第26条)
締約国は、2005年に採択された第2次男女共同参画基本計画で決められた時間の枠内で、法定割当人数のような特別措置を採択し、また、女性代表のための数的目標を検討することにより、国会や政府並びに公職の高いレベルにおいて男女同数の代表者を達成するよう努力を強めなければならない。
13.委員会は、民間企業における女性の管理部門に占める割合は10%のみであり、平均として男性給料の51%しか賃金を得ておらず、女性は非正規労働者の70%を占め、有給休暇や出産休暇、そして家族手当等の恩恵から除外されており、彼女らの不安定な契約状況によりセクハラの攻撃を受けやすく、しばし家族生活を維持するためにパート労働者として働くことを余儀なくさせられているとの報告に懸念を抱く。(第2条1項、第3条、第26条)
締約国は正規労働者としての女性の採用を促進し、男女間の賃金格差を撤廃するよう下記のような対策を講じるべきである。
(a) すべての企業に女性に対して公平な雇用機会を保証するよう積極的な行動を取ること要求する。
(b) 長時間労働をもたらす労働基準のいかなる規制緩和を検討する。
(c) 男性同様、女性にも仕事と家庭生活が調和出来るために、育児施設の更なる増加を図る。
(d) 改定されたパート労働法の基でのパート労働者に対する公平な待遇のために条件を和らげる。
(e) 職場におけるセクハラを罰する。
(f) 世帯主、あるいはパート社員または契約社員としての身分に基づいて、社員として様々な待遇を含む男女雇用機会均等法上の間接的な差別の禁止形態を拡大する。
(g) 間接的な差別を防止する効果的な措置を採択する。
市民的及び政治的権利に関する国際規約
国連文書CCPR/C/JPN/CO/5
2008年10月30日
原文:英語
自由権規約委員会第94回会期2008年10月13日~31日 ジュネーブにて規約40条に基づき
締約国から提出された報告の審査
自由権規約委員会による最終見解
日本
1.当委員会は2008年10月15日及び16日に開催された第2574回および第2576回会議(CCPR/C/SR.2574,2575,2576)において、日本(CCPR/C/JPN/5)より提出された第5回定期報告を審査し、2008年10月28日及び29日に行われた第2592回、第2593回及び第2594回会議において下記の最終見解を採択した。
A・はじめに
2.委員会は締約国の包括的な第5回定期報告や諸問題の一覧に対する書面回答、並びに委員会の口頭による質問に対する代表団の詳細な回答を歓迎する。しかしながら、2006年12月に提出されたこの報告は、2002年10月までの期限であったことを示す。委員会は高いレベルの各省庁の構成による大代表団、並びに意見交換の際に強い関心を示した大勢の国内NGOの出席を感謝する。
B・評価すべき側面
3.委員会は特に男女による公平な権利の享有の促進を目的とする幾つかの法的及び制度的な措置の採択を歓迎する。
(a) 1999年の男女共同参画社会基本法の採択。
(b) 男女共同参画内閣府担当大臣の任命。
(c) 2020年までに社会のすべての分野において、女性が指導的立場を少なくとも30%を占める目標を設置した2005年の内閣による第2次男女共同参画基本計画の承認。そして、
(d) 男女共同参画基本計画を促進し、男女平等社会発展のための基本政策を調整する男女共同参画局の設立。
4.委員会は家庭内暴力(DV)や性的暴力そして人身売買を含む、男女の性差に基づく暴力や搾取の犠牲者を擁護し、援助するために締約国によって講じられた措置を示す。すなわち、(a) 配偶者間暴力に対する相談支援センターや女性指導事務所、そして女性保護施設の設立 (b) 保護規定の数の増加や改定された配偶者間暴力の防止と犠牲者保護に関する法の基でのその範囲の拡大、そして(c) 2004年に採択した人身取引対策行動計画や人身取引対策のための省庁間連絡委員会(特別研究班)の設立。
5.委員会は、締約国が2007年に国際刑事裁判所のローマ規程への加入を歓迎する。
C・主要な懸念項目と勧告
6.委員会は、締約国の第4回定期報告の審査後に出された多くの勧告が、未だ実行されていないことに懸念を有する。
締約国は前回の最終勧告同様、委員会により採択された今回の勧告を実行しなければならない。
7.委員会は、規約への違反が無いとした最高裁判決以外で、規約の条項(第2条)に直接言及する地方裁判決に関する情報の欠如を提示する。
締約国は、規約の適用や解釈が裁判官や検事及び弁護士に対する専門研修として持たれ、そして規約の情報が下級審を含むすべてのレベルの司法界に広まるよう保証せよ。
8.委員会は、締約国が規約の第一選択議定書を批准しないひとつの理由として、批准することによって、司法の独立性を含む司法制度に問題を生じさせるかも知れないという懸念であることを提示する。
締約国は、委員会の普遍的な法体系が4審目の訴えではなく、事実や証拠の正当な評価や裁判所による国内法の適用や解釈を検討することが、原則として妨げられていることを考慮しながら、選択議定書を批准するよう検討せよ。
9.委員会は、締約国が未だ独立した国内人権施設を設立していないことを懸念する。(第2条)
締約国はパリ原則(総会決議48/134、付属文書)に従い、締約国により受け入れられた国際的な人権基準を網羅する広範な委任を行い、公権力による人権侵害に対する訴えを検討し行動する能力を持った政府機関ではない独立した国内人権施設を設立せよ。また、この施設のために十分な財政的および人的資源を計上せよ。
10.「公共の福祉」は人権に恣意的な制約を掛ける根拠として頼られているのではない、と言う締約国の説明に注意を払いながら、委員会は、「公共の福祉」の概念は曖昧かつ範囲が大まかで、規約の基では可能な範囲を超える制約を許すことになると、その懸念を繰り返す。(第2条)
締約国は、「公共の福祉」の概念を定義し、「公共の福祉」を根拠に、規約で保証された権利に与えるいかなる制約を特定する法律を採択すべきだ。
11.委員会は、女性に影響を与える民法における差別的条項について懸念を繰り返す。例えば、離婚後6ヶ月間の再婚の禁止や、男女の婚姻年齢の相違である。(第2条1項、第3条、第23条4項、そして第26条)
締約国は、女性が離婚後における再婚を禁止されている期間の撤廃と、男女の最低結婚年齢
の調和を計りながら、民法の改正をすべきだ。
12.委員会は、公職における女性代表の数的目標にも拘わらず、女性は国会の議席で18.2%のみ、省庁の部長クラスでは1.7%であり、2008年女性社会参加促進計画で取り決めた数的目標のいくつかは極めて控えめであり、例えば、2010年までの省庁の部長と同等の地位に対する女性代表の目標は5%であることに懸念を示す。(第2条1項、第3条、第25条、第26条)
締約国は、2005年に採択された第2次男女共同参画基本計画で決められた時間の枠内で、法定割当人数のような特別措置を採択し、また、女性代表のための数的目標を検討することにより、国会や政府並びに公職の高いレベルにおいて男女同数の代表者を達成するよう努力を強めなければならない。
13.委員会は、民間企業における女性の管理部門に占める割合は10%のみであり、平均として男性給料の51%しか賃金を得ておらず、女性は非正規労働者の70%を占め、有給休暇や出産休暇、そして家族手当等の恩恵から除外されており、彼女らの不安定な契約状況によりセクハラの攻撃を受けやすく、しばし家族生活を維持するためにパート労働者として働くことを余儀なくさせられているとの報告に懸念を抱く。(第2条1項、第3条、第26条)
締約国は正規労働者としての女性の採用を促進し、男女間の賃金格差を撤廃するよう下記のような対策を講じるべきである。
(a) すべての企業に女性に対して公平な雇用機会を保証するよう積極的な行動を取ること要求する。
(b) 長時間労働をもたらす労働基準のいかなる規制緩和を検討する。
(c) 男性同様、女性にも仕事と家庭生活が調和出来るために、育児施設の更なる増加を図る。
(d) 改定されたパート労働法の基でのパート労働者に対する公平な待遇のために条件を和らげる。
(e) 職場におけるセクハラを罰する。
(f) 世帯主、あるいはパート社員または契約社員としての身分に基づいて、社員として様々な待遇を含む男女雇用機会均等法上の間接的な差別の禁止形態を拡大する。
(g) 間接的な差別を防止する効果的な措置を採択する。