ニコン過労自殺 違法派遣と認定 

 東京高裁判決 賠償を大幅増額 遅延損害金合わせ1億円以上


大手光学機器メーカーのニコンで「偽装請負で」で働かされ、過労自殺に追い込まれた上段勇士(うえんだんゆうじ)さん=当時(23)=の母親・のり子さん(60)が派遣先と派遣元に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁で行われました。

都築弘裁判長は、一審から踏み込んで違法派遣を明確に認め、両社に対し7058万9305円(遅延損害金合わせ1億円以上)の支払いを命じました。


勇士さんが自殺した1999年当時、製造現場での派遣は禁止されており、「派遣法によって禁止された労働供給事業等に当たる」とニコンの使用者責任を認めました。


一審では、勇士さんにも過失があったとして損害金を減額し約2400万円でしたが、高裁判決は「損害金額を減額すべき事情は認められない」と大幅に増額しました。


勇士さんは97年10月、名古屋市の請負会社「アテスト」(旧ネクスター)に就職。埼玉県熊谷市のニコン熊谷製作所に派遣され、半導体製造機械の最終検査を担当していました。

判決は、違法派遣のもとストレスのかかる作業室で深夜労働や時間外労働など過重に働かせたことなどがうつ病発症と自殺につながったと認めています。

報告会でのり子さんは「勇士が亡くなった年に派遣が原則自由化され、04年には製造業も解禁されました。

今派遣法改正が言われていますが、決める方々は国民の命を背負っていることを肝に銘じて欲しい。

私たちの子どもを犠牲にすることは絶対に認められません。」と訴えました。


川人弘弁護士は「一審の不十分な部分を改めた文字どうり全面勝訴。『派遣切り』との戦いや運動の盛り上がりが反映したと思う』とのべました。