< 7月3日、都庁39階の審理室で、東京都人事委員会の公開審査行われる >

 2007年に卒業式・入学式・周年行事で「君が代」起立斉唱またはピアノ伴奏命令に従わなかったために、都教委の10・23通達によって処分された「卒業式⑯グループ」の8人の初の口頭審理が行われました。

 ★2006年9月21日東京地裁の難波孝一裁判長の判決
 「10・23通達」は憲法違反であり教育基本法に違反している。
 「10・23通達」に基づく職務命令には、明白かつ重大な瑕疵があり無効である。
 また、(教師らが)このような職務命令に従う義務はない。


■ 東京都人事委員会はすみやかに、東京都教育委員会に対し、憲法と国際人権規約違反の人権侵害の処  分を即刻撤回するよう指導せよ!

■ 21世紀の日本の首都東京の公教育の現場で、教師らに対して時代錯誤の人権侵害が行われている!

■ 石原慎太郎東京都知事と東京都教育委員会は教師に対する弾圧をやめなさい!


【 2007年の処分撤回を求める8人の意見陳述 】

初回の審査では、現職の都立高校教師6人と、現時点で退職されている教師2人が、処分の取り消しを求めて不服審査を請求し、午後2時から4時まで、休憩を挟んで一人15分前後で意見陳述を行いました。

この8人の先生方の意見陳述の一端を紹介します。

ーー10・23通達以後、教員の内心の自由は認められなくなった。ーーー

処分が非常に厳しいものにもかかわらず、なぜ起立しなかったのか
なぜ教員になったのか、
生い立ちや両親などの戦争体験や、
国旗・国家法の成立過程で表明されていた”強制の否定”
戦争への動きに対する危惧
いじめなどに苦しむ生徒に向かい合う高校教師としての基本的姿勢や処分の不当性について

立っていれば『君が代』の強制に反対なのにサイレントマジョリティーとされ、『君が代』を支持していることになる。
強制してはいけない保護者に対しても、式進行の台本には、「不起立者がいた場合『起立を促すように』」と強制を強いるようになっている。

戒告処分を受けた処分の取り消しを求めます。
君が代斉唱の時に、最後方の席で黙って静かに座っただけで、ほとんど誰も気づかなかず、何の問題もなかった。
不起立によって結果的に思想信条を表明することになった。
それは望んでいない結果だった。
内心の自由を守るために最後の消極的な選択だった。
保護者も、日の丸に向かって君が代を斉唱するために卒業式に出席するのではない。
違和感を持つ人がいるのは教育委員会も認めるところ。
あえて表明することを避けている人もいる。
結果的に思想・信条・政治的なものを表明せざるを得ない。
以前から違和感をもっていた。
以前は、静かに座っていることを許容されていた。
10・23通達以後、教員の内心の自由は認められなくなった。
忠誠を誓わない教員を排除することは、教育活動とは相容れない。
憲法が保障する内心の自由を侵し、教育の本質を否定するもの。
内心の自由を守る最小限の行為は憲法によって認められ、2006年9月の判決によっても支持されるものだと思います。
異論を処分という形で封じ込めてはならない。


職業倫理を確立した先生方の心打つ証言でした。

8人の請求人と傍聴者40人は狭いカギ型の部屋にギュウギュウづめになり、都庁職員が会場の暑さと熱気で気分が悪くなる人が出るのではと心配するほどでした。

開催前に写真撮影が行われ、審査員から「映りたくない方は一時退場してください」と説明されると、
都教委側の3人の代理人は一時退場しました。


□■ これまでの訴訟とは大きく異なる今回の前提事実 ■□

★2006年9月21日東京地裁の難波孝一裁判長の勝利判決がある!

この難波判決は、
「10・23通達」は憲法違反であり教育基本法に違反している。
「10・23通達」に基づく職務命令には、明白かつ重大な瑕疵があり無効であること。
また、このような職務命令に従う義務はない。

非処分者の主張をほぼ全面的に認めました。


しかし、本来法令順守義務のある被告側の都教委は、この判決に従ってすみやかに通達の撤回・職務命令発出の中止などの措置を取らなければならないにもかかわらず、判決に逆らったのです。

翌9月22日に、この判決に従って弾圧をやめるよう各校長に指導通達を出すのではなく、逆に、全都立の校長を対象とした臨時校長連絡会を都庁大会議室で開催し、『被告である東京都と都教委がすみやかに控訴を行う方針であること』を伝え、『「10・23通達」にもとづいて職務命令を発出させる指導は従来どおり継続すること』と説明し、さらに過ちを重ねているのです。

都教委は校長たちに対して、この難波判決を無視して職務命令を発令するようにという『指導』を行い、その結果2007年の春には、延べ35人もの大量の懲戒処分を強行しました。

今回、この被害を受けた教師が訴えを起こし、4グループ(16~19)・4回に分かれて、7月中に口頭審理が行われます。


本日行われた⑯グループの次回の証拠調べでは、都立三鷹高校元校長の土肥信雄氏と佐野幹男農業高校校長に対する証人尋問が行われる予定です。(日時は未定)

   <今後の予定>

   7月6日(月)⑰グループ 9名
   7月22日(水)⑲グループ 8名
   7月24日(金)⑱グループ 9名

 傍聴をよろしくおねがいします。



【 参考資料 】

東京地裁難波裁判長が憲法違反とした、東京都教育委員会が2003年10月23日に出した「10・23通達」

15教指企第569号
平成15年10月23日

 都立高等学校長殿
 都立盲・ろう・養護学校長殿
                    東京都教育委員会教育長
                      横山 洋吉

 入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)
 
 東京都教育委員会は、児童・生徒に国旗及び国歌に対して一層正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てるために、学習指導要領に基づき入学式及び卒業式を適正に実施するよう各学校を指導してきた。

 これにより、平成12年度卒業式から、すべての都立高等学校及び都立盲・ろう・養護学校で国旗掲揚及び国歌斉唱が実施されているが、その実施態様には様々な課題がある。このため、各学校は、国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について、より一層の改善・充実を図る必要がある。

 ついては、下記により、各学校が入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱を適正に実施するよう通達する。

 なお、「入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について」(平成11年10月19日付11教指高第203号、平成11年10月19日付11教指心第63号)並びに「入学式及び卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の指導の徹底について」(平成10年11月20日付10教指高第161号)は、平成15年10月22日限り廃止する。

            記
1 学習指導要領に基づき、入学式、卒業式等を適正に実施すること。
2 入学式、卒業式等の実施に当たっては、別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関  する実施指針」のとおり行うものとすること。
3 国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、  服務上の責任を問われることを、教職員に周知すること。

           別紙
  入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針
1 国旗の掲揚について
  入学式、卒業式等における国旗の取扱いは、次のとおりとする。

  (1) 国旗は、式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。
  (2) 国旗とともに都旗を併せて掲揚する。この場合、国旗にあっては舞台壇上正面に向かって左、都    旗にあっては右に掲揚する。
  (3) 屋外における国旗の掲揚については、掲揚塔、校門、玄関等、国旗の掲揚状況が児童・生徒、保    護者その他来校者が十分認知できる場所に掲揚する。
  (4) 国旗を掲揚する時間は、式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。

2 国歌の斉唱について
  入学式、卒業式等における国歌の取扱いは、次のとおりとする。

  (1) 式次第には、「国歌斉唱」と記載する。
  (2) 国歌斉唱に当たっては、式典の司会者が、「国歌斉唱」と発声し、起立を促す。
  (3) 式典会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱す      る。
  (4) 国歌斉唱は、ピアノ伴奏等により行う。

3 会場設営等について
  入学式、卒業式等における会場設営等は、次のとおりとする。
  (1) 卒業式を体育館で実施する場合には、舞台壇上に演台を置き、卒業証書を授与する。
  (2) 卒業式をその他の会場で行う場合には、会場の正面に演台を置き、卒業証書を授与する。   
  (3) 入学式、卒業式等における式典会場は、児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。
  (4) 入学式、卒業式等における教職員の服装は、厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわ    しいものとする。