前話より遡ること数年前・・・
就職が決まり北海道第二の都市「A市」へ赴任しました。
ハムソーセージ・食肉業の営業として着任しました。
会社の建物は3階建てのビル。
1階は事務所と冷凍庫・冷蔵庫、そして食肉解体場。
2階より上は寮と倉庫になっているのです。

古い建物なので仄暗いです。
冷凍庫・冷蔵庫のモーターの振動で建物自体が低周波で唸っています。
着任当時は食肉解体作業は行っておりませんでした。
食肉解体作業員が居ないので使用されない部屋が沢山有ったのですが、傷んでいるために入室可能な部屋は僅かでした。
しかも食堂も浴場も使用禁止となってます。

私は3階の階段を上がってすぐ右の部屋に入りました。

部屋の窓は西向きで午後から日が差します。
寮費がタダだったので喜んで寝起きしてました。
6畳一間はテーブルと万年床、小さな冷蔵庫とテレビとラジカセ。
男の一人暮らしだからそんなもんですね。
A市での仕事や生活にも慣れた頃・・・・
ふと夜中に目を覚ますとテーブルと布団の間に誰か座ってます。

誰???と思ったのですが、体が動かず声も出せません。
隣の部屋に先輩が居たのですが、助けを呼ぶことも出来ません。
そんな状況の中で眼球だけは動かせるのです。
目線は「黒い影」に釘付けになるのです。

その「黒い影」はじ~~っと私を見ています。

窓からは街灯の明かりが入っていますが部屋は暗いのです。
暗い部屋なのに「黒い影」がクッキリと見えるのです。
正座して両手を握って両膝の上に置いてるのが見えるんです。
そのうち私の顔を覗き込むように「黒い影」が腰を浮かせます。
覗き込む「黒い影」が私の上に覆いかぶさる様になります。
『居なくなってくれ~』
『何処かへ行ってくれ~』
『早く消えてくれ~』
心の中で叫び続けました。
どのくらいの時間が経過したのでしょうか、「黒い影」はスッと消えました。
途端に体が自由になりましたが、しばらく起き上がることも出来ません。
その建物では過去に荷物用エレベーターに挟まれて大怪我をした職員が居たとも聞きましたが、「黒い影」との因果は分かりません。
追記
A市から数回の転勤を経て道東のB市にいた頃、営業所新年会を温泉で、しかも他の営業所と合同で行おうとなりました。
A市と道北のC市の社員が温泉に集合しました。
楽しく飲んでハナシが弾みました。
で、A市から来た若手営業員が寮にいると言うので、どの部屋か聞いてみました。
俺 「どの部屋に居るの?」
若 「3階の階段上がってすぐ右です」
俺 「!!!!!!!!!」
若 「なんか湿っぽい部屋なんすよ~」
俺 「ちょっと聞くけど気を悪くしないでね」
若 「ハイ・・・・」
俺 「あの部屋でなんか無かった???」
若 「金縛りに遭ったんすよ~」
俺 「見えた???」
若 「真っ黒い人が出ました~」

ずっといたんですね、その部屋に。
※画像はイメージです。尚、現在はその建物はありません。