
宅配業をしていたとき、出くわした玄関。
人の思考を考えるのが好きな僕でも、これをプリントして貼った人の意図は、読み取るのは難しい。
人通りが多いところだったが、周りを見渡しながら僕がとった行動は、指示通りやってみる。だった。
使う手、押す指、声のトーンまで指定されたが、返ってきたのは無音だった。僕は不在票を切って投函し、再訪問することはなかった。
結果はわかりきっていたのに僕が忠実に指示通りにした理由は、後で人に話したときに、少しだけ現実味が増すからだ。
8年前の事を鮮明に覚えているということは、それだけ自分の中のインパクトが大きかった出来事だからだろう。
理由は、おかしな事をするひとがいるもんだ、では終わらずに、先の事を考え、現在の恥を我慢し、行動に移す。
日常レベルでこれをしたのは、この時が初めてだった。だから覚えている。
本当に些細な、ゴミのような出来事だが、この事はきっと死ぬまで覚えている。
そしてきっと死ぬまで役立ってくれるだろう。