ドミスタインベルグ石を採集に | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

1.いざ採集地へ
 先日(3/22)は、群馬県の方に採集に出かける。前日より群馬県の北の方では、雪模様で積雪が心配されていた。けれど行ってきた。沼田ではそれほどの雪もなかったが、その北側のみなかみ町ではかなりの積雪で往生した。この時期としては珍しい大雪であったらしい。

 友人の知り合い関係の別荘(?、ロッジか)に1泊したが、みなかみ町では結構な雪で私の車では登れないような坂の上にそれはあった。夜は酒を飲みながらの鉱物談義で、朝は早々に出発して片品村に。そちらには大して雪はなかった。でも産地は山の中なのでそこそこあったな。
 採集の地は、案内人もはっきりわかっているとは言えない場所だったようで、途中で道を間違え、道路パトロールの人たちに聞いて教えてもらってようやく現地に到着した。採石場への道を20分以上歩いて何とか採集できる場所を見つけて採集開始。雪の中に埋もれていたのによくわかったねえという場所。さすがあちこちを探査している達人だわと驚いた。
 採集してみると、いやここも白丸鉱山同様に硬い岩盤で硬い固い。大ハンマー、鏨(たがね)が欲しいところ。落ちている石を割って採集した方がいいくらい。

2.採集できた石とその関連鉱物
 採集できた石は、「ドミスタインベルグ石」。前日にネットで写真を見たのが最初で実物はその時が初めて。何がなんだかよくわからないけれど、放射状に結晶した、割るとチカチカと比較的光沢のあるのがそれだった。この石は、岩の隙間にできていた。

 で、この石、2013年に報告されています。化学式CaAl2Si2O8灰長石と同じ組成。結晶系がこちらは六方晶灰長石は三斜晶で異なる。同質異像の関係にある。名前こそカタカナだけれど、長石の仲間なんだろうなあ。

 参考3をみると、この石の産地が世界的にも少なく、日本ではここが唯一。また参考1をみると産状が怪しいようなことが書いてある。ま、それは気にせずに横においておこっと。


 で、この組成で、以下のような置換をすると別の長石になる。以下に示す。
  Ca  → Ba (重土長石)
  Ca  → Sr (スローソン石)
  CaAl → (Na,K)Si (アノーソクレース)
  CaAl → NaSi (曹長石)
  CaAl → KSi (正長石, 氷長石, 微斜長石, サニディン)

 ウーム、長石ってよく知られていて簡単なようだけれど、色々種類があって意外と奥が深くて難しいわ。

 で、採集した石の写真です。

3.石の写真


写真1a ドミスタインベルグ石(CaAl2Si2O8、群馬県片品村車沢)
 

 岩の隙間を埋めるように存在していた。プロペラのような針状で、細長い。白い結晶で雲母が長細いのかと思うくらい。割った出てきた瞬間に雲母のような真珠光沢が見えることが多いので比較的わかりやすいかな。



写真1b 上の写真の拡大



写真2a ドミスタインベルグ石(CaAl2Si2O8、群馬県片品村車沢)
 写真1とは別の石です。

写真2b 上の写真の拡大

 

 針状の結晶サイズは、大きいもので5㎜ほどあり、採集の際には、割るとチカチカしてすぐ分かった。けれど、結構白い鉱物も一緒についていて、判りにくい箇所もある。白いのはワイラケ沸石らしい。(参考4)

 

4.おまけ

 昔、低温焼成基板の材料開発をやったけど、アノーサイト(灰長石)とかセルシアン(重土長石)ができて、結晶化してセラミックガラス基板を作るのに苦労した覚えが。

 今回論文検索すると、ドミスタインベルグ石を基板強化成分として使うという論文を見つけて、またビックリでした。


5.参考
1)松原聰,日本産鉱物種 7版,鉱物情報(2023)
2)M.E.Beck,Fleischer'sGlossary of Mineral Species 2018,The Mineralogical Record Inc.
3)trekgeoのサイト

 → こちら
4) 加藤コレクションから

 → こちら