孔雀石の結晶構造と... | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

1.はじめに

 ポクロフスキー石孔雀石は類似した結晶構造を持っています。それは化学組成からも推定できます。

 

孔雀石 Cu2CO3(OH)2

ポクロフスキー石 Mg2(CO3)(OH)2

 

 孔雀石はあちこちで産出が報告されているのに対して、ポクロフスキー石は国内の産地は福岡県の古屋敷が知られているだけです。また、これはアルチニ石など組成的に類似した鉱物がありますが。ちなみにポクロフスキー石に似た組成のものに以下のものなどがあります。

  アルチニ石 Mg2(CO3)(OH)2・3H2O

  水苦土石、Mg5(CO3)4OH)2・4H2O

  ダイピング石  Mg5(CO3)4 (OH)2・5H2O

 

2.孔雀石の結晶は

 で、孔雀石は誰もが知っている鉱物です。緑色の結晶が樹枝状に、また葡萄状に集合した結晶は美しくよく知られています。特に層状になった塊はその縞模様が魅力で装飾品として、また、綺麗な緑色は岩絵の具などの顔料として用いられています。結晶は、柱状、針状、繊維状、放射状、皮膜状、球状、腎臓状などが知られているが、単結晶がはっきりわかる物は非常に珍しく、ほとんどみかけません。

 

 孔雀石は、銅鉱床の酸化帯で見られ、珪孔雀石、ブロシャン銅鉱、藍銅鉱、赤銅鉱、方解石などと共存して一緒に観察される事が多い。特にブロシャン銅鉱や擬孔雀石などとは色が同色でなかなか区別が難しい。しかし、孔雀石は10%の塩酸で発泡して溶解する点で、これらの鉱物と区別できる。ブロシャン銅鉱と擬孔雀石では、色が消失して溶けてなくなるだけで泡は発生しない点で孔雀石と異なる。

 

 孔雀石は、よく銅が錆びた成分と同じなどと言いますが、正確には違うでしょう。一部には含まれているというのが正確で、錆は銅の腐食したいくつかの化合物の混合物と見るのが正しいでしょう。

 

 錆びのことは置いておいて、孔雀石は、炭酸銅CuCO3と水酸化銅Cu(OH)2が結合してできた物質と見ることができます。孔雀石としばしば共析し、銅の鉱物で有名な物に藍銅鉱があります。こちらは炭酸銅CuCO3の2分子と水酸化銅Cu(OH)2の1分子が結合してできた物質とみることができます。

 孔雀石は藍銅鉱から生成すると書かれています。地球環境には水がたくさんあるので、水酸化銅ができやすく、それが藍銅鉱と反応して、孔雀石になるのかな。どなたか孔雀石は藍銅鉱から生成する理由が書かれた文献やそれがうまく説明できるデータがあったら教えてください。

 

 ところでよく知られた孔雀石ですが、いったいどんな結晶構造で原子の結合はどうなっているのかなと思い調べてみると、以下の本に掲載されていました(参考1)。

 これを見ても図が平面で書かれ、また構造がかなり複雑で私には構造がどうなっているのかよくわかりません。もうちょっとわかりやすいものはないかと、孔雀石の結晶構造をネットで調べてみるとありました。産総研のHPの結晶構造ギャラリーで。

 

 よく知られた孔雀石ですが、かなり複雑な結晶構造になっています。化学組成を考えると、繰り返しになっているのが見えて来るはず。図は、上下で点対称になっているのはわかります。それから、う~ん、私にはすぐにはなかなか見えてきません。Cu(1)では、異なったCO3のOが4つとOHが2つが八面体の配位し、Cu(2)では異なったCO3のOが2つとOHが4つがこちらも八面体の配位して、2つの八面体がCO3のOとOHを共有しているようで。けど、うーん、化学組成式での原子の数がなかなか合いません。三次元で考えないといけないのかな、当たり前ですが。

 頭がこんがらがってしまったので諦めて。で、やっぱりこんな複雑な構造だから、はっきりした結晶の物がなかなか見かけないのもわかるような気がする。それに結晶構造と石として見える外見もちょっと違うからなあ。(結晶構造がわかっても、結晶の形が見えにくいってことです。)

 

 孔雀石の三次元の結晶のパソコンでの表示は、産総研のホームページを見ると分かりますが、CIFデータを利用し、泉富士夫氏や門馬綱一氏によって開発されたソフトウェアVESTA(参考6)を利用すると表示が可能で回転などもできます。結構面倒で専門知識が必要です。やった方はご教示ください(^^;;;。ちなみに門馬綱一氏は千葉石などを発見された方です。

 

 結晶の形を見るのはmindatがいいかな、回転も自在ですから。孔雀石の例を下に挙げておきます。結晶構造と結晶の形がわかりやすいです。

 (→ こちら、下の方にあります。)

 結晶構造の表示と結晶の形の表示の違いに驚きますね。

 

 話変わって、化学組成成分が似ている藍銅鉱では、“共立全書”(参考1)の同じページに結晶構造図も。こちらは比較的簡単でわかりやすい。が、容易に結晶の形態までが見えてこない。困ったと思いながら、あちこち本を眺めていたら、次の本(参考4)で見つかった。

 

 孔雀石とよく似ていて、初心者には区別が難しいブロシャン銅鉱の結晶の図は、こちらは意外と簡単な構造のようで、“共立全書”(参考1)のp130には説明があり、“結晶形態”(参考4)のp108には図が掲載されている。実際、ブロシャン銅鉱の結晶は顕微鏡で綺麗な結晶を見ることができる。

 

 これを書いてきて、三川鉱山で採集した綺麗な孔雀石をまた観察しようと思ったら、すぐに見つからない。整理が悪いのでどこか箱の隅に行ってしまったようで。片割れは誰かと交換してしまったしなあ。よく似た写真が写真集(参考3)にあります。採集したときには、足元にあった石ころをハンマーで強くたたいたら、二つに割れて、水晶の晶洞の中に褐鉄鉱の茶と孔雀石の緑が対照的で非常に綺麗です。是非本を探して見てください。(^^;

 

 結局、孔雀石、藍銅鉱、ブロシャン銅鉱、いずれも単斜系の結晶構造を持つが、一番複雑なのは孔雀石で、藍銅鉱、ブロシャン銅鉱は孔雀石より簡単。なので、結晶した物も見られやすいのだろうということかな。

 

 孔雀石の結晶がなかなか頭の中で描けないことは既に書きました。が、softwareの「デジタル鉱物図鑑」(参考5)を使うと簡単に表示できました。今は入手ができませんが。結晶の表示は「結晶プログラム」でもできます(→ こちら)

 ただ、原子の位置がいったいどうなっているのかが、いまだよくわからずですが。なにかまとまらん文章になってしまったな。

 

3.孔雀石の写真

 で、仕方がないので、最後に荒川鉱山などでで採集した孔雀石の写真を。

 

写真1a 孔雀石(Cu2CO3(OH)2、秋田県亀山盛鉱山産)

 

 

写真1b 写真1aの一部拡大

 

写真1c 写真1aの一部拡大

 

 

写真2a 孔雀石(Cu2CO3(OH)2、秋田県荒川鉱山産)

 

写真2b 写真2aの一部拡大

 

写真2c 写真2aの一部拡大

 

 

写真3a 孔雀石(Cu2CO3(OH)2、新潟県三川鉱山産)

 

写真3b 写真3aの一部拡大

 

写真3c 写真3aの一部拡大

 

 

写真4a 孔雀石(Cu2CO3(OH)2、秋田県亀山盛鉱山産)

 

写真4b 写真4aの一部拡大

 

4.参考

1)桐山良一,構造無機化学 Ⅲ,p111,共立出版(1978)

2)産総研のHP、結晶構造ギャラリーで孔雀石の結晶表示ができます。以下のところです。→ こちら

3)関東と周辺の鉱物 -創立30周年記念写真集-,鉱物同志会, p239,(2017)

4)高田雅介,国産産鉱物の結晶形態-高田鉱物標本・結晶図集-,p86,(2010)

5)softwareの「デジタル鉱物図鑑」は以下のサイトへ。

    → こちら

 最新バージョンは5.12です。今は公開を停止し、入手できません。デジタル鉱物検索が検索のためにあります。「デジタル鉱物検索」は以下の所から。最新はver4.38です。

 → こちら

6)VESTAのダウンロードなどは以下のサイトに

 → こちら

 ちなみに泉富士夫先生は、日本でのX線回折などのリートベルト解析の第一人者です。以下にサイトがありますので、興味ある人はご覧ください。

 → こちら

7)孔雀石の結晶の形を確認しましょう。それにはmindatのサイトへ → こちら (双晶の表示しかありませんけど。)

 結晶の表示は「結晶プログラム」でもできます。

   → こちら

 

 

 この本は、いつの間にか高価な本になってしまいました。