「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?
あらすじ
新聞社に勤めていた、いわゆる「バリキャリ」の女性著者が、仕事と子育てに対するモヤモヤをきっかけに大学院で研究し、修士論文としてまとめた研究成果を加筆修正した本です。
この本が考えるのは、
1. 男性と同様に仕事をバリバリしようとやる気に燃えていた女性が、ずっと働き続けるつもりで就職したのに、結婚や出産をして結局会社を辞めていくのはなぜなのか。
(2. 会社をやめていないケースについて、「ぶら下がり」と揶揄されるようになるのはなぜか。)
(39ページ)
と言う問いです。
1つ目の問いに対する答えは、
男女平等に見える教育過程で男性中心主義的な競争への意欲をかき立てられることで、継続するための環境や資源を積極的に選択できず、退職を迫られるから(278ページ)
との事でした。
つまり、
社会に出るまでは学校で"男女平等"だと学び、仕事でも男性と同様にバリバリ働くことができると考えてきた女性ほど、
女性らしい仕事、子育てしやすい仕事、と言った発想を避け、男性だらけの世界で生き延びようとします。
しかし実際に妊娠や出産をすると、前例が少ないため継続して働き続ける事が難しくなり、結果として退職せざるをえなくなってしまう、と言うことでした。
また2つ目の問いへの答えは、
女性であることを意識した上で育児をしやすい環境や資源を獲得していたり、高付加価値の仕事に対する自らの意欲を引き下げることで心理的葛藤を減らすことに成功したりした結果として、継続しているケースが多い(279ページ)
そのため、「ぶら下がり」と揶揄される=企業内に残る女性の意欲が低いとみなされる、との事でした。
ただしこうした女性の行動は、
制度が整っても運用は上手くいっていない社会構造に影響されていると、著者は指摘しています。
この答えを導くために、著者は総合職の正社員としてバリバリと働いてきた女性15人に対してインタビュー調査を行っています。
それぞれの方に対し、
- どんな職場であったか?
- どうしてその職場を選んだか?
- 育児に対する夫のスタンスは?
- 育児に対してどのような意識を持っているか?
といった内容を深く質問し、実際の回答を載せた上で、働き続けることの難しさをカテゴリー分けして考察しています。
グッときたポイント
修士論文をまとめた新書と言うことで、いつもよりも読み進めるのが難しかったです。
(わたしも大学院にいた頃は、学術論文を読んだりまとめたりすることは日常茶飯事でした。にもかかわらず。継続しないと読書の筋力も衰えてしまいます。)
しかしながら、先行研究や調査方法の紹介など学術論文の質と体裁を保ちつつも、幅広い読者の方に向けて読みやすく書かれてあり、内容の濃い本だと感じました。
この本を読んで率直に思ったのは、
学生時代にこの本を読みたかった!
と言うことです。
著者さんの指摘通り、わたしも学生時代は、社会は男女平等であると学んで過ごしてきました。
就職活動をするとき確かに
「子育てしながらでも働きやすい職場」
と言うことや
「福利厚生が整っている職場」
と言うことなどは
会社選びの判断材料にしていました。
しかしながら
結婚して妊娠して育休取得中のいま
今後のキャリアプランが描けない状況を
当時は全く想像できていませんでした。
それよりかは、
自分の能力が発揮できるような仕事か?とか
どのようなキャリアアップが描けるか?とか
考えていたように思います。
もしこの本を読んで
「現実」を知っていれば
結婚や出産、子育て期、子ども自立後など
ライフイベントが起きたとき
仕事はどう変化させていくか
長期的なキャリアプランを考えたうえで
新卒一社目を選べたかもしれません
この本の冒頭は、
女性活用の法制度は整ってきたにもかかわらず、なぜ女性はキャリアを断念するのか?
という書き出しだったのですが、
法制度がかわっても急にガラッと職場環境が変わることはないけど、
少しずつ女性活用の成功例も出てきているんじゃないかと思っています。
管理職に女性を登用したり、子育てが大変な時期だけ柔軟に職種を変更したり、子育てママ&若手のペアで仕事を進めて補完しあったり。
女性も男性も迷いなく働き、子育てできる社会に向けて、まだまだ過渡期ではあります。
過渡期にワーママ・ワーパパを経験するわたしたち世代は大きな負担を負うでしょう。
それは大変なことだけど、どうせ過渡期で逃れようがないなら、
自分の子どもたちが親になったとき、もっと働きやすい・子育てしやすい社会になるように、声をあげ行動していくことが
とり得る最善策なのかもしれません。
こんな人におすすめ
- 就職活動を控えた学生の方
- 総合職で勤めている女性、パートナーの方
- 仕事と家事の両立で悩まれている方

