「好きなことをさせてあげてください」


「行きたいところに行ってください。

うちの病院から遠いところなら

近くの病院に連絡しておきます。

まさかのとき、駆け込めるように。

日本全国、どこにだって病院はあるし

僕は、日本全国の血液腫瘍専門医を知っていますから」




旅行先でまさかの事態・・・

そんな想定さえ上の空だった。



だって、治るんだから・・・





でも、旅行には行こう!


家族みんなで旅行に行こう!




行き先は、行き慣れた感のある伊豆にした。


子どもたちも何度も行っていて

道中のようすもなんとなくわかっている。




夫はスペシャルな宿を探しだした。

いま、考えても

本当にスペシャル!

この上ないリッチ感だった。



ま、外観は古めの温泉宿なのだが

その部屋はとても広くて

しかも温泉付きだった


露天風呂は寒いだろう。。。と

ガラスで仕切られた展望風呂


胸にCVがついている娘が気兼ねすることなく

家族水入らずで入ることができる


ま、娘16歳、次女14歳、長男12歳

よく、一緒に入ったな~




食べきれないほどの料理を前にして


「あれもこれも美味しそう

でも、食べられないのが悔しい」って娘がポツリ



「食べられるようになったら、また来ようよ」と私


「だね。あ、そのカサゴのから揚げ、食べたい」




そう言っても、ほんの少ししか食べられなかった





娘はずっと、頭が痛かったのだろう



伊豆は近い

といっても、うちから車で4時間くらい



途中しんどかったに違いない




それをガマンして

ガンバって




今思うと


遺していく私たち家族のために頑張ってくれたのだろうか





だって


娘はツライしんどい思いをしただけ、だっただろうから






いつもの家族旅行のように


ダラダラとしゃべり

トランプしようよ~と大富豪大会がはじまった





娘よ


あなたがいなくなってから

去年も今年も、海に行ったけど


大富豪大会はやってないよ



やるつもりで毎年、トランプは用意しても

やってないなあ。。。






本当に楽しそうだった、娘



翌日は次女が癇癪起こしたりして

一触即発の危機もあったが


なんとかお互い耐えて事なきを得た(お互いって次女と私)




そんな次女も今はオトナになったよ





ドクターが準備してくれた駆け込み病院に

連絡することもなく

緊急でいつもの病院に行くこともなく


何もハプニングのないまま、普通に戻ってこれた






「だから言ったでしょ

 娘は治るんだから

 行きたい所へは絶対に行くし

 やりたいことは何でもする!

 だから、絶対に治るのよ」







「リッチな旅行も終わったし、次はライブだね」



娘はすごくうれしそうだった


「もう少し頭痛がマシだといいなあ

 ライブ、なに着て行こう???」





普通の16歳の女の子だった